しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「貘の檻」  道尾秀介 

2015年01月08日 | 読書
「貘の檻」  道尾秀介   新潮社     

大槇辰男は、駅の向かいのホームにいた女性に気を留める。
その直後、女性は電車に轢かれて死亡する。
それは32年前に辰男が住んでいた長野県のO村から姿を消した曾木美禰子だった。
O村は江戸時代、三ツ森六郎実充が穴堰を築いて水を引き栄えさせた村だった。
32年前、農業組合長の檜場が殺されその殺人容疑が辰男の父親の石塚充蔵に掛けられる。
同時に行方不明になったのが曾木美禰子で、美禰子を殺したのも充蔵だと思われていた。
その後、充蔵は死体で発見され、17年前に被疑者死亡のまま時効となる。
辰男はO村で子どもの頃から懇意にしてくれていて、今は小諸市で開業医をしている三ツ森塔士から連絡を受ける。
この事故でまた話題になりO村は騒ぎになっていると言う。
32年前に実際には何があったのか。
その頃から悪夢に悩まされた辰男は、息子の俊也と一緒にO村を訪ねることにする。







悪夢を食べると言うバク。
この物語にも悪夢が登場するが、その部分が意外と長い。
読んでいて飛ばしたくなるが、何か重要なことが含まれているかもと。
まあ、飛ばして読むことはないのだが。
結局、それ程重要な要素が含まれていないと思うのだが。
この物語にインパクトを与えているのかも知れないが、無くても大丈夫なような。
暗い重苦しい雰囲気は、主人公の精神状態から十分に伝わっている。
始めは読み進めるのに時間が掛かるが、後半は一気に進む。
もう少し構成が違ったら、もっと面白い謎解きミステリーになっていたかも知れない。

みんなが少しずつ違う思い込みをして、ずれて行く。
そういう事は、大きな事件でなくても起こる。
だから人間は難しい。
それぞれが精一杯、やっていることでも。
相手に良かれと思ったことが、そうではない事も。
辛い思いを抱えたまま生きて来た人たち。
誰が1番気の毒なのかと思うと、それは自分の中では大槇とき子だろう。
そして反対に、美禰子の曖昧さや後悔のなさは理解出来ない。
手紙を送るにしても、謝罪なのか追及なのか、そんな分からない内容では困るだろう。
それがすれ違いであるのだが。

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