しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「さよならの儀式」  宮部みゆき

2020年03月30日 | 読書
「さよならの儀式」  宮部みゆき  河出書房新社    

8編からなるSF短編集。

「母の法律」
『マザー法』は虐待する親と子どもを同時に救う法律。
その時の記憶を消して、新たに生まれ変われる道が示される。
咲子ママと憲一パパは3人の子ども翔、一美、二葉を引き取って育てて来た。
二葉が16歳の時、咲子ママは病没し、家族関係は解体され、未成年の一美と二葉は〈グランドホーム〉も戻された。
そんな時、二葉に本当の母親が会いたがっていると伝えた人物がいた。

「戦闘員」
80代の藤川達三は3年前に妻を亡くし、靜かな日々を送っていた。
ある日、日課の散歩の途中、思いがけない事を目にする。
それは防犯カメラを壊そうとしている少年だった。
しかし、その少年の目は悪戯をしているのではなく、もっと切羽詰まったものがあった。
その時から、達三は防犯カメラを気にする様になる。
そして、異様な事が起こっている事に気が付く。

「わたしとワタシ」
45歳のわたしが、久し振りに空き家になった実家に行くと玄関先に中学生の女子がいた。
それはタイムスリップして来た過去の自分だった。
過去の自分は、今の自分を見て「こんなおばさん・・」と落ち込む。

「さよならの儀式」
ロボットの廃棄処理場に介護施設から1人の女性が訪ねて来る。
今日回収されたロボットに会いたいと言う。
「ハーマン」と製造会社の名で親し気に呼びかける女性に担当者は会わせてあげる事にする。

「星に願いを」
深山秋乃は10歳下の妹春美と母静子と3人暮らし。
高校生の秋乃は春美の具合が悪い時は、忙しい母親に代わり迎えに行く。
小学校の上空を隕石が通過した事件から、春美はよく体調を崩した。
学校での苛めを疑う静子だが、春美は何か隠し事をしていてはっきりとは言わない。
しかし、春美は憔悴していった。
そんな時、秋乃と春美が2人で家にいる時、自宅の近くで無差別殺人が起こる。

「聖痕」
12年前、母親と同居の男を殺した少年A。
幼い頃から、悪事に加担させられ、今度は保険金を狙って殺されると知ったからだった。
少年A、柴野和己は少年院を出て社会復帰していた。26歳。
しかし、事実とは全く無関係に、ネット上で少年Aは鑑別所で自殺し救世主となっていた。
虐待されている子どもや女性を救う『黒い救世主』。
その過程に導いたのは『鉄槌のユダ』。
そして発生した事故や事件を「黒い救世主の御業」だと鉄槌のユダは書き込む。

「海神の裔」
屍者が労働力として、再生されていた時代。
明治の日本にも、トムさんと言う外国人の屍者がたどり着いていた。

「保安官の明日」
ある小さな町〈ザ・タウン〉の保安官。
3つの給水塔があり、3点を結ぶ三角形に〈ザ・タウン〉はすっぽりと納まる。
保安官だけが、ここの住人の全てを知っていた。
ある時、誘拐事件が起こる。
その中で保安官は今までになかった事が起こっているのを知る。






死をテーマにしたものが多い。
人間だけでなく、ロボットの死や、死者の死。
「海神の裔」も、偶然に伊藤計劃さんを読んだばかりだったので、腑に落ちる。
自分の意志を持った屍者の死。
死は周りに居る人に影響を与えるけれど、やはり世界は生きている人のもの。
「保安官の明日」も、生きている者が満足したいだけなのだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「屍者の帝国」  伊藤計劃×... | トップ | 「わが母なるロージー」  ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事