しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「天使のナイフ」 薬丸岳  

2006年01月18日 | 読書
桧山貴志の妻・祥子を盗みに入った13歳の少年3人に殺される。
少年法に守られ、事件の詳しい事も加害者の事も知ることが出来ず、その苦しみから
桧山は1度マスコミに「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」と言ってしまう。
その後、桧山はその時生後4ヶ月だった娘の愛美を、愛情を持って育てる事で立ち直って来た。
そして4年後、桧山の勤める店の近くの公園で、加害者の少年のひとり沢村和也が殺され、桧山も疑われる。
3人は本当に更正したのかを知りたくて、桧山は3人の事を調べ始める。
そして、桧山は和也の恋人から、和也が「本当の贖罪をしたい」と言って、後の2人、八木将彦と丸山純を捜していた事を知る。
八木も「俺を恨むのはお門違いだ」と言う言葉を投げてくる。
祥子の事件に、なにかあるのか調べていくうちに、自分の知らなかった祥子の過去がわかって来る。
そして、新たな事件が起こって行く。

少年法で、被害者の存在が無視されている苛立ちや、更正とは何かを桧山と一緒に考えながら読んでいた。
被害者の家族が望む物は何か。贖罪、更正、人権、命の重さ。そして、許し とはなにか。
そこに、段々推理物の要素が加わり物語は加速していく。
意外な過去が明らかになって行くが、「それがこんな風に繋がっていたなんて」と言う驚きもあり、徹夜本だった。
それぞれの登場人物がそれぞれの悩みを抱えている。それぞれの人をもっと詳しく書いても充分、内容ある話になりそうな濃い話だと思う。

最近、犯罪被害者や加害者の家族を書いた小説も多いが、自分だったらと考えてしまう。
加害者の家族になったら、それが過失としても被害者の家族に謝りにいけるだろうか。
反対に家族を過失でも失ってしまったら、その人を許せるだろうか。
そんな事件に関わる事なく、一生過ごせたらいいと切に思う。それほど命は尊く、重い。

タイトルの「天使のナイフ」はどこから来ているのだろうか。
罪に対する物に痛みを伴わないものはない。痛みは必要な事。と言う事だろうか。
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