しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「サーカス象に水を」 サラ・グルーエン 

2009年09月30日 | 読書
「サーカス象に水を」 サラ・グルーエン    ランダムハウス講談社
 Water for Elephants     川副智子・訳

1931年。
23歳のジェイコブ・ヤンコフスキは、獣医になるためコーネル大で獣医学を学んでいた。
しかし卒業間近に両親が事故死し、借金があった為に父親の医院も家も銀行に取られてしまう。
そのショックでジェイコブは、卒業試験の途中で大学を飛び出す。
そのまま彷徨い、走って来た列車に飛び乗る。
それは、〈ベンジーニ・ブラザーズ〉サーカスの列車で、ジェイコブはそのサーカスに獣医として働くことになる。
そして、そのサーカスで大事件が起きた日、殺人を目撃する。
それから70年、93歳になったジェイコブは近くにサーカスが来たことで、サーカスにいた日々が蘇る。



23歳と93歳のジェイコブ。
ちょっと雰囲気が変わった感じがするが、70年も経ったら変わるか。
それぞれのジェイコブがよく書かれている。
サーカスという、何となく神秘的で独特な雰囲気とを持つ世界。
そんな雑多な熱気も伝わって来るのだが。
しかし、内側から見たサーカスの世界は、上下関係も厳しく生き残りを掛けた世界。
そんな現実を突き付けられる。
これもひとつの歴史なのだろう。
知らない世界を見ながら、物語の展開にも引きつけられる。

サーカス象のロージーが、主人公かも知れない。
ロージーの目が心情を伝えるように書かれ、印象に残る。

23歳のジェイコブの終りから物語は始まる。
そして遡り、その終りまで来る。
それまでの過程があるから、始めの時と印象や状況ががらりと変わる。
真相が分かって驚かされるが、納得。
ラストに来て、ホッとさせられるので、読後感はいい。
そして、93歳のジェィコブのラストも気持ちが温かくなるもの。

この物語の中に、「遥か南へ」のフリント・マートーと同じような人物が登場する。
「遥か南へ」を読んだばかりだったので、ちょっと不思議な気がした。
実際に同じような人物がいて、話題になったのだろうか。

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