しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「偽りの書」 ブラッド・メルツァー

2009年06月09日 | 読書
「偽りの書」 ブラッド・メルツァー  上・下巻   角川書店
  The Book of Lies    青木創・訳

エリス・ベラスコは古い書物『偽りの書』を探していた。
そしてそれが、香港から船便でフロリダ州のマイアミに送られ、運搬を担当するトレーラー運転手の名前がロイド・ハーパーだと付きとめる。
アメリカ、フロリダ州フォート・ローダーデール。
ホームレス保護支援団体で働くカルヴァン(カル)・ハーパー。
同僚は親友の元牧師ローズヴェルト。
2人は古ぼけたバンに乗り、問題のあるホームレスを保護していた。
ある日撃たれて怪我をしたホームレスを保護しに行くが、それはカルが19年前に別れた父親のロイドだった。
カルが9歳の時、ロイドは妻を突き飛ばして死なせ刑務所に入り、出所してからも1度も会っていなかった。
ロイドを友人のセリーナ・アメンドが訪ね、船荷の心配をする。
ロイドがコンテナ輸送の仕事をし、現在保留通達されている船荷があることを知ったカルは、以前入国税関管理局の捜査官だったコネを使い、保留通達を解除する。
カルは何か不正なものを感じ、ロイドが運転するトレーラーを尾行する。
そのトレーラーが襲われる。
襲ったのはエリス・ベラスコで、警官の服装をしてカルの名前を知っていた。
エリスは預言者と呼ばれる人物の指示で、ある古い書物『偽りの書』を手に入れようとしていた。


【カインとアベルの物語。それは、聖書に描かれた人類最初の殺人の記録。
しかし、その記録には決定的な謎がある。凶器の不在。
カインは何を使って、どのようにアベルを殺したのか―?
1932年6月、スーパーマンの原作者の一人、ジェリー・シーゲルの父親ミッチェルは胸に銃弾を撃ち込まれ、血だまりの中で倒れているところを発見された。
カインの凶器と同じく銃は行方不明となった。そう、今この時までは―。】
           <カバー裏に記載された説明>



聖書のカインとアベルの物語と、スーパーマンの原作者のジェリー・シーゲルと父親のミッチェルが関係してのサスペン。それは、始めにも書かれているし、この本の宣伝文句にもなっている。
それが、カルとロイド親子の物語とどう結びつくのか中々分からず、落ち着かない気分で物語は進んで行く。
同時にエリスの方からも書かれているのだが、それがどうもしっくり来ない。
物語の中に入り込めないでいるが、その気持ちとは関係なく、話されることが興味深く面白い。
カインの印の話や、ジェリーの話など。
スーパーマンのことは映画で知っているが、原作者のことは知らなかった。
見付かった謎から答えを引き出す所も面白かった。
最後は一応すべての話が結びついていることは分かるのだが、何となく無理に合わせたような気もする。
ジェリーが隠した秘密は、それほど守らなければならないことだったのか。

宗教の倫理の話も出てくるが、聖書の考え方が今も考える基盤になり、色々と影響すると言うのが不思議な気がする。
そもそも、キリストが書いたものはなく、弟子たちが自分の解釈で書いたものしかないと言うことなのに。
それがまた何度も訳されて来たのだろう。
現代の生活にあった判断を、今を生きている人々がしていけばいいのではないのだろうか。
それを知る為に、ためらいもなく人を殺してしまうのは狂信としか言えない。

それとはちょっと違うのかも知れないが、ロイドも野放しにして置いてはいけない人物だと思う。
それが問題にされていないのが、ちょっと不思議。

面白かったのだが、盛りだくさん過ぎて、少々料理しそこなってしまった感じ。
あまりひとつの物語の感じがしない。


こんな言葉が出て来た。
「また札入れの話にもどるけど―札が上下も表と裏も全部向きをそろえて入れてあった。
これも・・・・・・悪魔みたいなやつしかやらないわ」

そうか、自分もそうだから、自分は悪魔なやつなのか。
まあ、天使か悪魔かと言われたら悪魔だけど・・・・・みんな、そうではないのだろうか。
お札、揃えるよね。

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