しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「囁く谺」 ミネット・ウォルターズ 

2008年06月02日 | 読書
「囁く谺」 ミネット・ウォルター     創元推理文庫
  The Echo    成川裕子・訳
1995年6月、ロンドンの旧波止場地域の住宅街。
アマンダ・パウエルは自宅のガレージで一人の男が死んでいるのを発見する。
指紋からビリー・ブレイクの名で警察に記録されていた浮浪者で、死因が餓死だった。
ガレージには大型冷凍庫があり、食品が詰まっていたに、何故餓死したのか。
明らかに偽名と分かるビリー・ブレイク(英国の詩人の名)と名乗っていた男は何者なのか。
取材に訪れた雑誌記者のマイケル・ディーコンは、アマンダがビリーに強い関心を持っていることに興味を引かれる。



アマンダが死体を発見した話しの後、いきなり失踪した二人の成人男性について書かれている。
そしてまたその話しに戻るのだが、不意に別の場面に移り、それがどう関係してくるのか、探りながら読み進める物語。
最後に明確にパズルが収まる、というより、戻って読み直してという感じ。
新たな事件も起こるのだが、過去になにがあったのか、という探求の物語なので、静かに進んでいく感じがする。
登場人物も、掘り下げて描いているので、個人々々の性格がはっきり現れて、そんなところも面白い。
なにしろ、一癖も二癖もありそうな人物ばかりなのだから。
ミステリというより、人間を書いている物語。
ビリーが餓死を選んだ理由というのが、ミステリではないから。
宗教的な考えが入るが、ビリー・ブレイクの贖罪の意識が考えさせられる。このように考えてしまうには、人生の中でもっと深い何かがあったようにも思う。
純粋というか、神の思考なのかも知れない。

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