しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「死刑基準」 加茂隆康    

2009年09月21日 | 読書
「死刑基準」 加茂隆康      幻冬舎

2003年。
弁護士、大伴浩二郎の妻、美礼が自宅で殺される。
強姦され、切り裂かれての失血死だった。
目撃証言から、鯖江申三が逮捕される。
鯖江は2002年に小学2年の息子を殺されていた。
その犯人の弁護をしたのが大伴で、犯人は無期懲役になる。
死刑を望んでいた鯖江は逆上するが、今度の犯行はその恨みかと思われた。
しかし鯖江は強姦は認めたが、殺人はしていないと否認する。



始めは死刑の賛否が問題になっている。
この前にジョン・グリシャムの『無実』と言う冤罪を扱ったノンフィクションを読んだばかり。
『無実』は被告側から、こちらは被害者側から見ている。

この物語の中にも出てくるが、冤罪がある以上、死刑は厳しい気がする。
しかし、懲役刑ではいつかは世の中に出て来ると思うと納得行かないもの確か。
終身刑と言うのは必要だと思う。
罪を償う方法は、閉じ込めて置くだけではなく、何か他にないものだろうか。
そんな事を考えながら読んで行くのだが、物語は進んで行くとすこし違った方向に行く。
タイトルからも離れて行くようだった。

後半重要になるのは、強姦殺人か、強姦だけなのか。
真犯人を探す謎解き、推理の要素も大きくなる。
最終的には犯人が誰か分かるのだが。
強姦は軽く見られているのが気になる。
殺人は許されないけれど、強姦なら大した事ではないと言われているようだ。
だからラストも不満。
日本は罪に対する刑罰が軽い。
裁判員制度が始まって、改めてそう思っている人も多いかも知れないが、自分もそうだ。
そういう話もこの物語には出て来る。

伝えてくれる情報は色々あるが、それが物語の流れに邪魔になっているものもある。
例えば、ウィーンの辺りとか。
スムーズに流れない感じがあった。
そして、あまり気持ちのいい物語ではなかった。
犯罪を扱っているのだから、そうかも知れないが、登場人物にまともな性格の人が少ない。
この犯罪が起こった要因を作っている人達がたくさんいるのに、気が付いていないというか、自分は関係ないと思っている。
そんなところが、なんだか納得出来ない。

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