しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「麦の海に沈む果実」 恩田陸  

2006年11月30日 | 読書
14歳の少女、水野理瀬は北の地の湿原にある全寮制の学園にやって来た。
学園の生徒達は3種類が存在する。
親が過保護で環境の整った上品なところに入れたいと送り込んでくる『ゆりかご』これは少数。
何か特別な才能を伸ばしたい『養成所』。
存在を望まれなくて、送り込まれる『墓場』、大多数がこれ。
理瀬は自分が何故ここに来たのか分からない。愛情を持って育てられた気持ちもあるが、ここに入るのは始めから決められていたと聞いて、入ってきたのだ。
そしてそこは3月から新学期が始まる『三月の国』。
そこに理瀬は2月の最後の日に転入してきた。2月に入る子はその学園を破滅に導くと噂されていた。
そして、この学園から知らない内に生徒が消えるという噂もあった。
理瀬はファミリーと言う名の班のメンバーから、最近になりこのファミリーから、半年の間に麗子と功の2人が消えていることを聞く。メンバーのひとり、黎二は麗子は殺されたのだと言う。



不思議な幻想的な雰囲気の作品。
男にも女にもなれる校長、起こっても揉み消される殺人、とてつもなく大きな空間に建てられた廃墟のような学園。
なんだかわくわくする設定。雄大な湿原の真中にある学園から見える景色を想像するだけでも気持ちがいい。
消えた生徒には何が起こったのか、謎解きの要素もあり面白かった。
しかし、こういう物語に登場するのは、誰もが美しいというは、ちょっとありきたり。
わいわいした学園物の要素を多少あるので、漫画的な感じもしてしまう。
しかも『三月の国』と言われると、『三月ウサギのお茶会』を連想してしまう。あ、アリスの話も出て来たので、そうなのかも知れない。
余談だが、理瀬と同じで「不思議」より「鏡」が好きな人は多い気がする。

話の展開も幻想的でよかったのだが、ラストはなんとなく期待外れ。
はっきりしたことが分からなくてもいいから、幻想的なまま終わって欲しかった気がする。
生々しい現実に戻ってしまい、理瀬の魅力も色褪せてしまう感じがする。
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