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セイピースプロジェクトのブログ

【原発】原発労働者~隠された被曝労働~

2011年04月27日 | 原発・震災
今もなお予断を許さない状態が続いている福島第一原発。今回の事故を受け、何人もの労働者たちが現場に送り込まれ、決死の作業を続けています。「英雄」と褒めそやされる一方で明らかになった死亡事故や、劣悪な労働環境。それは今に始まったことなのでしょうか。原発被曝労働についてのまとめです。

▽原発で働く労働者
原発内部の機械化されていない分野で働く労働者の実に95%が電力会社の社員ではありません。原発産業には、元請け、下請け、孫請け、ひ孫請け、日雇労働者など、重層的な請負構造が存在しています。彼らの給料はこの下請け構造の中でピンハネされ、俗に「ピンハネ構造」と言われることもあります。近代的なコンピューター制御室で働く電力会社の社員の裏では、低賃金の下請け労働者たちが放射能の除染作業や清掃労働などを行い、日常的に被曝を強いられています。

▽被曝労働の実態
原発内部での作業内容は、放射性物質を雑巾でふきとる放射能除染作業や、パイプの補修、放射能ヘドロのかい出し、放射性廃棄物のドラム缶詰め、作業服の洗濯、パイプにつまったごみ掃除などです。
このうち「放射能汚染地域」とよばれる区域で働く労働者たちは、被曝を避けるために厳重な装備で炉内に入っていきます。全身防護服に身を包み、放射性物質を吸い込まないように全面マスクを付け、何重にも手袋や靴下を重ね、ゴム長靴をはきます。また、外部被曝線量を測る計器を4つ首からつりさげています。しかしながらこれらの装備では被曝を完全に避けることができません。
マスクや防護服についてですが、放射線の中にはコンクリートさえ貫く中性子線というものがあり、外部被曝は避けられません。また、炉内は高温多湿で非常に作業環境が悪く、どうしてもマスクが曇って、前が見えにくくなったり、息苦しくなってきたりします。そうすると作業を進めるためにはマスクを外さざるを得ず、口や鼻から放射性物質を吸い込み、内部被曝をすることになるのです。(内部被曝については「内部被曝」はどのようにして人体に影響するのか参照)
4つの計器については、首からつりさがっているので胸部付近の放射線量しか測れず、局所的に強い被曝をした場合に対応できないことや、内部被曝線量を測ることができないという性能の問題があります。
高レベルの汚染地域では、作業開始から数分もしないうちにメーターが振り切れ、アラームが鳴り、作業効率が悪いために限度を超えて被曝をしようとも警告を無視して働き続ける、または計器をどこかに置いたまま作業をする、という性能以前の問題もあります。これは立場の弱い下請け労働者に特有の問題だといえます。
このように不十分な放射線対策しか為されないままに下請け労働者達が日常的に被曝をし、それによって原発は稼働することができます。

▽ずさんな管理体制
過酷で危険な環境で働く労働者たちの管理体制はどうなっているのでしょうか。放管手帳という手帳があります。これは労働者たちの一カ月ごとの被曝量と、三か月ごとに行われる健康診断の結果を記録するものです。
被曝量の記入は事業者が行い、労働者は自分がどれくらい被曝したかを知ることができません。会社側がねつ造記録を出すことも当然あり、実際の被曝量と報告された被曝量が違うこともしばしばです。そのため労働者が被曝限度量である年間50mSvを超えて働き続けることにもつながります。測定の結果は五年間の保存が義務づけられているに過ぎず、五年経てば記録が廃棄されてしまうため、発病した場合に被曝量の検証すらできません。
健康診断を担当するのは電力会社の指定医です。原発は概して過疎地に建設されることが多く、その地域のすべての企業が何らかの意味で巨大資本である原発と深い関係を持つようになります。医療機関についても同様で、電力会社から産業医の指定を受けられるか否かは医療機関にとっての死活問題となります。指定医は電力会社の意のままになる傾向があり、健康診断である程度の異常が発見されても、「異常なし」として見過ごされることになります。
また、放管手帳はいかなる法律や規則の中にも定めがありません。法的にも根拠がなく、健康管理にも役立たず、労働者にいかなる利益も保証ももたらさない手帳だということができます。被曝労働者はまったくの無権利状態におかれています。

▽労働者のその後
作業によって被曝をし、ずさんな管理のもとで異常が見過ごされ、最終的に病気になってしまう労働者は数多くいます。日常的な倦怠感、発疹、白内障…。果ては白血病やがんなどで亡くなる方もいます。

▽みとめられない被曝
被曝労働が原因となって死亡したり、仕事ができなくなったりした場合に労働災害として認定されることは非常に難しくなっています。一定の基準以上の被曝をし、なおかつある限定された疾病に罹った労働者だけを救済するように認定基準が設定されているからです。放射線には「しきい値」はなく、被曝によってあらわれる症状もさまざまですから、この労災認定基準では抜け穴だらけです。
また、国から「被曝者」として認定を受けることもできないため、診察費免除などの医療保障がされることもありません。


これまで被曝労働の実態をごく簡単に述べてきました。いま原発内の作業実態が注目を集めていますが、福島原発の事故以前から原発は被曝した労働者を使い捨て、彼らを無権利状態に放置したままで現代社会に居座っています。いくら近代化しようとも裏方で作業をする被曝労働者の存在なしには原発は成り立たず、原発がある限りこの問題は続きます。そのことを理解し、原発のあり方を考え直していく必要があります。

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