Say Anything!

セイピースプロジェクトのブログ

【ニュース紹介】国会事故調査委員会が原発事故の最終報告書を提出

2012年07月24日 | 原発・震災
 福島第一原発事故の原因や事故対応について調査し、検証するために国会に設置された独立機関である「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(以下、事故調)」が最終報告書をまとめ、国会の両院議長に提出しました(報告書は国会事故調HPからダウンロード可能)。


「原発事故は人災」と断定 国会事故調が最終報告(朝日新聞、2012年7月6日)
■東電・国の責任を強調
 東京電力福島第一原発事故を検証する国会事故調査委員会(黒川清委員長)は5日、最終報告書を決定し、衆参両院議長に提出した。東電や規制当局が地震、津波対策を先送りしたことを「事故の根源的原因」と指摘し、「自然災害でなく人災」と断定。東電側の責任を厳しく糾弾する一方、当時の菅直人首相の初動対応も批判した。東電が否定する地震による重要機器損傷の可能性も認め、今後も第三者による検証作業を求める提言をした。


 事故調は、研究者や弁護士、ジャーナリスト、福島県内の商工会会長など10名の委員から構成されています。641ページにわたる報告書は、半年間に渡る調査、延べ1167人への聞き取りや、約2000件の資料をもとに作成されました。報告書の内容は、それらをもとにした長大な分析と結論、そして提言から成っています。

 まず、「はじめに」では、冒頭で「福島原子力発電所事故は終わっていない」という認識が示されています。

 それから、今回の事故の原因として、政官財の構造的な問題が指摘されています。また、「この事故が「人災」であることは明らかで、歴代及び当時の政府、規制当局、そして事業者である東京電力による、人々の命と社会を守るという責任感の欠如があった」と喝破しています。

 「結論」の中では、規制当局と東電の意図的な不作為が事故の根源的原因となったこと、津波だけではなく、地震が直接的原因となった可能性も残っていること、政官財すべてにおいて組織的な危機管理体制の不備があったこと、規制体制が形骸化し、規制当局と東電が癒着していたことなどが指摘されています。

 また、放射線被ばくの健康影響については、低線量被ばくによる晩発障害はしきい値がなく、線量に比例して健康リスクが増加するという基本的な認識から、とくに子どもや妊婦の年間線量の基準(20ミリシーベルト)が、チェルノブイリと比べても「高すぎる」と批判しています。

 さらには、「避難の判断を住民個人に丸投げしたともいえ、国民の生命を預かる責任を放棄したと断じざるを得ない」として、放射性ヨウ素の初期被ばくを防ぐためのヨウ素剤の投与に失敗したこと、継続的な内部被ばく線量の計測が依然行われていないことに対しても、不満が述べられています。

 これらを踏まえて、事故調は7つの提言を示しています。つまり、「規制当局に対する国会の監視」、「政府の危機管理体制の見直し」、「被災住民に対する政府の対応」、「電気事業者の監視」、「新しい規制組織の要件」、「原子力法規制の見直し」、「独立調査委員会の活用」です。ここでは、規制当局が東電の「虜」と堕したという認識から、国会によるチェック機能の強化や監視体制の独立性の確保などが強調されています。また、政府の危機管理体制や規制組織、原子力法規制についての抜本的な見直しを求めています。
 放射線被ばくによる健康影響の懸念に対しては、「国の負担による外部・内部被ばくの継続的検査と健康診断、及び医療提供の制度を設ける」ことが提案されています。

 もっとも、事故調設置の根拠法規には、今回の報告書提出までしか書かれていません。自民、公明の両党首は国会で審議することで一致しましたが、今後、この報告書がどのように活用されるかは、不透明な状況です。
 また、責任の所在が不明確であるとして、海外からは批判も寄せられています(「原発事故、文化のせい? 国会報告書に海外から批判」朝日新聞、7月12日)。

 現在もなお「終わっていない」原発事故の収束や、避難者政策、被災地の復旧という課題は、いまだ大きなものとして残っています。しかし他方で、原発再稼働への動きは、現実のものとして進められています。事故の原因と責任の所在を社会的に明らかにする作業は、フクシマの経験を教訓とし、二度とこのような事故を引き起こさないために、徹底して行われなければなりません。

最新の画像もっと見る