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【ニュース紹介】「沖縄戦被害で国提訴 「住民守らぬ軍」問う」(沖縄タイムス、2012年8月16日付)

2012年09月13日 | 沖縄・高江
 凄惨な地上戦が行われた沖縄戦から67年が経ちました。しかし、不発弾や米軍基地の存在など、その傷跡は未だに根深く残っています。そうした中で、去る8月15日、沖縄戦の一般住民被害者とその遺族が国を相手に沖縄戦被害の損害賠償訴訟を提起しました。
 以下、報道記事を引用します。

■「沖縄戦被害で国提訴 「住民守らぬ軍」問う」(沖縄タイムス、2012年8月16日付)

 沖縄戦の一般住民被害者とその遺族40人が15日、国を相手に謝罪と1人当たり1100万円の損害賠償を求める「沖縄戦被害・国家賠償訴訟」を那覇地裁に提起した。沖縄戦で旧日本軍が住民を守らなかったのは国民保護義務違反で不法行為に当たるなどとしている。弁護団によると、沖縄戦の被害者に対する賠償を求めて提訴するのは初めて。戦時の国や軍の行為に対する責任を問う初の訴訟ともなる。

 原告は、旧軍による「集団自決(強制集団死)」強制や壕追い出し、十・十空襲などの被害者やその遺族で、60~91歳の男女。原告の平均年齢は76・7歳。

 訴状では、都市部への陣地構築や非武装地帯を設置しなかったことなどは「国の国民保護義務違反に当たる」と主張。そのほか、一般住民の生命や身体に危険をもたらした責任と、住民の被害救済に対する法整備をしてこなかった「立法不作為」の責任も問う。

 野里千恵子原告団長は「住民被害を戦後67年も放置した国の責任を認めてほしい」、瑞慶山茂弁護団長は「沖縄にまだ戦後は来ていない。住民を守らなかった軍の不法行為を正面から問いたい」と語った。
(引用終わり)

 この訴訟の背景には、全国的に広がっている民間の空襲被害者訴訟があります。戦後、日本政府は「戦傷病者戦没者遺族等援護法」をもとに、軍人・軍属などに対して年金等の補償を支払ってきましたが、一般の戦争被害者に対しては「戦争犠牲や損害は、国の存亡にかかわる非常事態のもとでは、国民の等しく受忍(我慢)しなければならなかったところ」という「受忍論」を展開し、補償を認めてきませんでした。

 沖縄では、援護法が適用されないため補償を受けずに亡くなった方は、推計で6万7千人にのぼるとされています。今回の裁判は、沖縄戦の実態が改めて浮き彫りにされると共に、国の戦争責任に対して司法がどのような判決を下すか注視していく必要があります。

 また、現在沖縄では、沖縄戦の体験に伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を訴える高齢者が増えているといいます(沖縄タイムス、2011年10月9日)。先日放送されたNHK ETV特集『沖縄戦 心の傷~戦後67年 初の大規模調査~』(2012年8月12日放送) において、地上戦に端を発する在沖米軍基地の存在や、戦闘機の騒音や墜落事故、米兵犯罪などの事件が起きた際に、PTSDの症状が出てくるといった報告もあります(この映像については、後日改めて紹介したいと思います)。被害の補償も十分にされていないばかりか、沖縄では現在でも戦争被害が続いている状態なのです。

 沖縄戦被害に対する国の責任を明らかにすると共に、沖縄戦の「遺物」である在沖米軍基地が存在し続ける限り、沖縄に「戦後」は来ていないといえるでしょう。


※沖縄戦に関しては、以下の文献をご参照ください。
 ・大城将保『沖縄戦―民衆の眼でとらえる「戦争」』(高文研、1988年)
 ・林博史『沖縄戦 強制された「集団自決」』(吉川弘文館、2009年)

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