Say Anything!

セイピースプロジェクトのブログ

【書評】池尾靖志『自治体の平和力』岩波ブックレット、2012年

2012年09月23日 | 書評
「平和」ということばは、さまざまなかたちで定義されてきたために、非常に多義的なものとなっています。しかしこれを狭い意味での「平和」、つまり軍隊や安全保障の問題として捉えたときには、日本に住む私たちの実生活からは、時間的、地理的な距離のある問題だと感じてしまう人が多いのではないでしょうか。また、「自治体」との関係で「平和」を考えようとしても、「平和月間」の設定などが精一杯で、とうてい国の政策や国際関 . . . 本文を読む

【書評】高橋哲哉『犠牲のシステム 福島・沖縄』(集英社、2012年)

2012年08月31日 | 書評
 東日本大震災に伴う福島第一原発の事故から1年と5カ月が過ぎました。事故がもたらした放射能汚染の影響で、いまも十数万人が避難生活を送っています。福島第一原発は廃炉に向けては30~40年かかるとされ、事故の収束の目処は未だに立っていません。原発事故の処理や放射能汚染への対応、避難者の生活支援が求められる一方、沖縄県宜野湾市に位置する米軍普天間基地では、9月中旬にもMV22オスプレイが配備されようと . . . 本文を読む

【書評】朴三石『知っていますか、朝鮮学校』岩波ブックレット、2012年

2012年08月27日 | 書評
 著者は、『外国人学校――インターナショナル・スクールから民族学校まで』(中公新書、2008年)や、本ブログでも紹介した『教育を受ける権利と朝鮮学校――高校無償化問題から見えてきたこと』(日本評論社、2011年)を著すなど、日本のなかの外国人学校の現状を明らかにしてきました。  本書は、朝鮮学校に対する社会的関心が高まっているなかで、朝鮮学校について、少しでも興味を持った人たちのために書かれたもの . . . 本文を読む

【書評】新崎盛輝『新崎盛輝が説く 構造的沖縄差別』(高文研、2012年)

2012年08月24日 | 書評
 現在、日米両政府は、「世界一危険な基地」と呼ばれる沖縄県普天間基地に、事故が多発しているMV22オスプレイを強行的に配備しようとしています。その姿勢に対して、しばしば<構造的沖縄差別>という言葉が使われています。  今回紹介する『新崎盛輝が説く 構造的沖縄差別』の中において、<構造的沖縄差別>とは、「沖縄への基地押しつけを中心とする差別的仕組み」から生まれた「数十年にわたる思考停止状態の中での . . . 本文を読む

【書評】半田滋『3.11後の自衛隊 迷走する安全保障政策のゆくえ』岩波ブックレット、2012年

2012年08月16日 | 書評
 東日本大震災に際しての救援活動では、原発事故への対応や、避難所における被災者支援など、自衛隊の活動が大きく評価されました。また、近年行われている海外派遣先での活動も、多数の支持を集めており、自衛隊に対する好感度は過去最高の水準となっています。しかし、世論の抱いている自衛隊像は、現実の自衛隊とどう重なり、どう異なっているのでしょうか。さらには、日米安保体制のもう一方をなしている米軍との関係は、どう . . . 本文を読む

【書評】河崎健一郎ほか『避難する権利、それぞれの選択 被曝の時代を生きる』岩波ブックレット、2012年

2012年08月11日 | 書評
 東日本大震災に伴った福島第一原発事故の発生によって、福島県内だけでも、15万人を超える人々が避難を余儀なくされました。このうち、政府の定めた避難区域以外の地域から避難した、いわゆる「自主避難者」は、3分の1程度に上るといわれています。福島県以外でも、原発事故を受けて避難や移住を強いられた人々は多く、その全体像は掴めていません。避難生活には、有形無形のさまざまな困難が立ちはだかります。しかし、とく . . . 本文を読む

【書評】ウリハッキョをつづる会『朝鮮学校ってどんなとこ?』(社会評論社、2001年)

2012年08月07日 | 書評
 今回紹介する『朝鮮学校ってどんなとこ?』は、朝鮮学校のありのままの姿を日本人に知ってもらいたいと、朝鮮学校に子どもを通わせる保護者たちによって書かれた本です。朝鮮学校の高校授業無償化除外の問題や、地方自治体からの補助金凍結の問題を捉えるためにも、朝鮮学校の過去と現在を追った本書は必読の書といえるでしょう。  本書は全3章から構成されています。第1章では、朝鮮学校に関してよく言われる疑問や質問に . . . 本文を読む

【書評】朴三石『教育を受ける権利と朝鮮学校 高校無償化問題から見えてきたこと』日本評論社、2011年

2012年08月03日 | 書評
 「高校授業料無償化」問題で注目を集めた朝鮮学校については、日本社会におけるその独自性から、これまでさまざまな形で論じられてきました。そのなかでも本書は、「高校無償化」問題を切り口にしながら、朝鮮学校における「教育を受ける権利」について、体系的に整理されたものです。タイトルにもある通り、高校「無償化」問題を受けて書かれたものではあるものの、この問題を「政治論ではなく、権利論として」捉えたことで、「 . . . 本文を読む

【書評】布施祐仁『災害派遣と「軍隊」の狭間で 戦う自衛隊の人づくり』(かもがわ出版、2012年)

2012年07月31日 | 書評
 昨年の東日本大震災当時、自衛隊は最大10万8000人もの規模の災害派遣部隊を被災地に派遣しました。多くの人々を救助し、炊き出しやインフラ整備などに献身的に働くその姿には、被災者のみならず多くの人々が好感を抱いたのではないでしょうか。内閣府が2012年1月に行った「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」では、9割を超える人々が自衛隊の災害派遣を評価し、自衛隊そのものについても良い印象をもっているという . . . 本文を読む

【書評】千葉悦子、松野光伸『飯館村は負けない―土地と人の未来のために』岩波新書、2012年

2012年07月02日 | 書評
 6月22日、福島第一原発事故によって全村が放射能汚染にさらされ、計画的避難区域に指定された飯館村の村役場が福島市飯野出張所に移転してから丸一年が経ちました。これを目前に控えた6月中旬には、7月17日に飯館村の避難区域再編が行われるという報道がなされました(朝日新聞、6月14日)。事故の「風化」が懸念される一方、村の「除染」に対して有効な方法は見つからず、避難生活の先行きも見えてきません。また、健 . . . 本文を読む