中原聖乃の研究ブログ

研究成果や日々の生活の中で考えたことを発信していきます。

扇風機の羽ガードを外してしまうとは、、、なんて危険!

2015-07-25 07:38:33 | マーシャル諸島の紹介

 マーシャル諸島に行って驚いたことは、扇風機の羽ガードを取っ払ってしまい、羽がむき出しで回転していることです。風がパワフルになるんだそうです。子どもの頃、羽の中心の突起部分を手で止めたことがある人は多いでしょう。子どもは危険なことが大好き。マーシャルの子どももそれをして遊んでいます。危ないから羽ガードをつけたほうがいいとお母さんに言っても、お母さんは「何言ってるの?扇風機は危険なものなのよ。羽ガードがあると、扇風機が危険だってことがわからないじゃないの!子どもはこうして遊ぶことで危険だってことを知るのよ!」「そうなの?」とは言ったものの腑に落ちなかったのを覚えてます。

 子どもたちは数日もたつと、中心部の突起部分では物足りなくなったようで、羽の部分にそーっと指を近づけて、指先のところが少し触れると、少しずつ回転速度が遅くなっていき、止まると、ニカ~っと笑います。もう、本当に危ない!!!

 今は、やっぱりマーシャルの人たちの言っていることは正しいと思うようになりました。彼らが言っているのは、モラルハザードということだったのです。たとえば、道路のあちこちに信号が設置されると、運転手は信号に頼って運転することに慣れきってしまい、注意を怠るようになる。そうすると、不意に飛び出てくる子どもなどに対応できず事故につながってしまう。これが注意欠如、モラルハザードです。機械に頼りすぎると、本来人間に備わっている注意力が欠如してしまい、不注意になってしまうということなのです。

 日本はどうでしょうか。日本のため池などはほとんどが入ることができません。子どもが転落したときに、安全管理ができていないとして行政が非難を受けるからです。でも、そんなことばかりしていると、ため池がどのように危険なのかわからないまま大人になります。レンコンの田んぼの真ん中で小学校時代を過ごした私は、用水路や田んぼに、(時には自転車ごと)落ちまくりました。飼っていた犬までも子犬のころは、散歩途中に田んぼの横の斜面に突進し、そのまま田んぼまで滑って落ちてしまいました(犬が、です)。この犬は誰に似たのか好奇心が旺盛すぎて、あるときは1メートルもある塀を突然飛び越え、首つり状態になりました。そのままだと死んでしまうので綱を離すと、5メートルも下の畑に転落しました。心配して駆けつけると初めて訪れた畑で楽しそうに駆け回っていました。でも成犬になるとちゃんとした犬になりました。子どもの頃の遊びがよかったのでしょうか。

 セキュリティーレベルの高まった日本では、危険なものは危険だとわかった方がいいなどという意見は受け入れられそうにもありませんが、マーシャル諸島はまだまだ野生の思考が生きているのだと思います。数万年の長きに渡って狩猟採集生活からIT時代に突入した日本、狩猟採集生活からスマホ生活までわずか100年で移行したマーシャル諸島。この違いは大きいです。マーシャル諸島の人々は、機械に頼りすぎると人間の能力が低下してしまうことをリアルタイムにひしひしと感じているのでしょう。

 シェークスピアのマクベスの中に、「安心は人間の大敵」というセリフがあります。「油断大敵」という意味だとされていますが、、、どういう意味なのでしょうか?これは、どんなに機械に頼っても、絶対安全ということはないのだから、安心しきってしまうことはいけない、つまりモラルハザードを戒めているように感じます。工学に頼ることは必要だとしても、工学への過信は、人間にそもそも備わっていた大切な技術を忘れさせてしまうということでしょう。これは国の守り方にも言えるのではないでしょうか。兵器で安全を追求するあまり、人間にそもそも備わっていた交渉力という貴重な能力を失ってしまう。交渉力は、歴史学、政治学、文学、経済学、心理学、社会学、哲学、、、様々な知識の総体ではないでしょうか。だから!こうした人文・社会系学問の存続を強く訴えたいと思います。扇風機は危険なものであると知らなくてはいけないのです!


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