時戻素

昔の跡,やがてなくなる予定のもの,変化していくもの,自身の旅の跡など・・・

(306) 水没集落からの脱出(1) ~入口編~

2010年04月12日 05時08分01秒 | 旅・散策の足跡
【水没集落からの脱出】の記事
静岡県浜松市天竜小和田~塩沢

1 入口編(306)
2 駅前メインストリート編(326)
3 最寄の民家とつり橋編(359)
4 集落への道(395)
5 徒歩1時間の集落(405)


6 駅を離れても(482)

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※ 写真撮影日:2010年3月20日

18きっぷを使って大阪から東京まで移動している途中にダム建設による増水で水没した集落を訪れた。そこにいたのは次の電車が来るまでの約3時間だったが,水没しなかった高台にあった集落の跡を見たり,最寄の集落まで行ったりしていた。訪問日は限られた時間内で出来るだけ多くのことをこなそうとしたため,この集落について考える余裕はなかったが,記事を書きながらでも考えてみたい。

 10時43分に豊橋駅を出た。目的地到着は13時20分頃と2時間以上かかった。しかし,この電車の終点上諏訪には車掌のアナウンスを聞いていると,まだ午前中にもかかわらず,17時40分到着のようだ。
 新幹線で80%以上の収入が占める東海はあまり在来線には力を入れていないと思い込んでいたが,車内広告では…

 普通か快速でしかいけないような駅をアピールしていた。
 その中の一つであり,広告内に引用されているランキングでは最上位の小和田駅で電車を降りる。

 他の乗り降りはいなくて,車掌に余計な手間をかけさせることになるのだろうと思っていたが,18きっぷ期間中だからか3連休だからかは分からないが,それなりの乗り降りがあった。
 この駅の前後は…




 両側がトンネルになっている。それだけ山深いところだということが分かる。
 ホームの端のほうへ行くと…



 所在地は静岡県だが,天竜川などを挟んで愛知県と長野県の境界付近にこの駅はある。
 ホームから見える風景。

 川の向こうの愛知県には電柱が見え,車道が走っているのが分かる。しかし,対岸へ渡る橋はない。どう行くのかわからないが,かなり迂回をしなければたどり着くことは出来ないだろう。迂回といってもこの駅から最寄の車道までは徒歩1時間程度かかるので,所要時間は車道に出て,タイミングよく車に乗せてもらってもかなりかかると思われる。近くて遠い場所だ。駅があるここは水没前にあった集落の高台なので,水没前の行き来は今よりも容易だったらしい。
 長野県側。

 駅のホームの本当に端っこには…

 電車で2時間ぐらいかかる豊川駅の駅長の名前で,改札口を通るように指示がしてある。この警告がなくても…

 ここから先へ行くのは冒険家ぐらいだと思う。
 ホームの中央に駅名の看板がある。

 所在地で驚くのはここが政令指定都市の行政区に位置するということだ。この場所のある旧天龍村と合併しなくても浜松市は政令指定都市になるだけの人口を持てたし,政令指定都市が山間部を市域にしてはいけないという制約もない。しかし,政令指定都市,特に最近移行した都市については政令指定都市って何だろうと考えさせられることもある。

 ホームの反対側の端にある駅舎の方へ向かう。

 点字ブロックはあるが,ホームと駅舎の間には階段がある。
 階段を下ると…

 水道がある。凍結やつまり防止のために水は止めないように書かれている。
 それでも,普段の習慣からなのか水が止まっている時もあった。節水とは逆のことを求めているので,それなりに意識しないとつい止めてしまいそうになる。それだからか…

 蛇口に上にも必死でアピールされている。
 その丁度上に…

 かなり古そうな駅名の看板がある。
 駅舎の入り口の前には…

 以前使われていた反対側のホームへの通路の跡がある。点字ブロックもこの通路へ誘導する部分ははがされていた。
 ホームから駅舎への入り口。

 もちろん無人駅ではあるが,駅舎内を通らないといけないように柵がしてある。1993年の皇太子殿下と小和田(おわだ)雅子様のご成婚で訪問者が増えたことの名残か分からないが,花嫁号のマークが付けられている。
 駅舎内。

 窓口などの跡も残っている。
 その窓口のガラスを見ると…

 窓口営業はかなり昔の話だろうが,何かまだ新しそうな印象のある書体で販売時間が書かれていた。いつ作られたものだろうか。
 時刻表。

 少ないことは少ないが,九州の人吉~吉松間(1日片側5本ぐらい)と延岡~佐伯間の途中駅(1日片側3~4本)を経験しているだけにまだ多いほうだと感じた。
 運賃表。

 隣の駅まで線路でも5km近くあるはずだが,それでも100円台,2駅以上でも200円程度と意外と安い。都市圏の私鉄よりも近~中距離(?)は安いかもしれない。
 駅として最低必要そうな掲示の他にも…

 訪問者が書くためのノートと書くための机があったり…

 結構式(おそらく,駅周辺で行われたもの)の写真があったり…

 駅周辺の案内があったりする。さっきも似たようなことは書いたがこの駅周辺に車道はない。門谷と塩沢を結ぶ幹線林道が最寄の道路だ。そこまで徒歩1時間,標高差は100m以上ある。
 こんな場所の駅だが,こんな掲示物もある。

 「線路に入ってはいけない」ことを促す掲示。これだけ本数少なくて,電車が近づくと踏切の警告音もなるので,入りたくなるのも分かる。「よい子」限定なのもまたすごい。
 お隣の不正乗車をしないように促す掲示。この駅ではないが,飯田線で高校生が定期の日付を指で隠して不正利用した事件を紹介する新聞記事があった。この駅から定期?とも思うが…

 数駅豊橋寄りの中部天竜駅の窓口案内がある。利用者はいるようだ。机のノートにも塩沢集落から最速14分でこの駅まで通ったという記録があった。この記録がどれだけすごいかはあとで塩沢集落まで行って分かった。利用者は少なくても,掲示物は近くの駅と差はなさそうだ。一方で,熊本の利用者は少なくても通学需要があり,車での送迎がされている矢岳はこのような掲示はなかった気がする。東海と九州のポリシーの違いだろうか。
 駅の外へ…

 駅舎内ではこの地区に郵便配達をしている女性が電車を待っているところだった。最寄の民家はここから徒歩20分程度だが,車でのアクセスは不能なのでこの駅と路線の存在意義が感じられた。入口の脇には…

 巣箱があった。
 もう少し離れて駅舎を見てみる。

 黄色の点字ブロックと電線は見えているものの,いつの時代だか忘れてしまう。
 駅前には…

 トイレがある。小便器が壊れていることなどから,個室はとても使えたものじゃないだろうと思い,恐れつつドアを開けると…

 便器もきれいで,消臭剤もあり,手入れがなされているようだった。利用はしなかったが,都市部の駅よりもきれいかもしれない。こういう感じの駅では地域の方が掃除をされている場合があるが,ここの場合近くに人は住んでいないので,誰が掃除をしているのだろうか。
 トイレの建物にも…

 水道がついていて,こちらも水を止めてはいけない。
 トイレの横には…

 建物があった跡が残っていた。
 駅前の風景。

 廃墟がいくつか残っている。坂道も結構急だ。駅内に点字ブロックはあったが,ここから先はない。というよりも,設置不可能かもしれない。

 目的の塩沢集落まで1時間。
(2)へ続く。

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