白神と新緑と山櫻と
弘前の あのじょんがら節の三味の音と櫻から 逃れるように早朝
岩木川沿いをひた走る 西目屋村を通り ダムを右に見て 更に進む
漸く深い山の中にわけ入って 気がついて見ると 暗門の瀧の入り口
とうとう憧れの白神山地入り口に辿り着く 車から降りると むっとする木々の香り
これが森林浴かと 改めて驚きと 自然への畏敬の念がバァッと広がる
素直にいいなぁ このブナの木たちはと 大好きなブナと 所々に見える山櫻の美
イワナが住んでいそうな清流の音 まさかクマゲラの樹を叩く音か鳥たちの声
大きく息を吸い込むと 骨の髄まで 新しくイノチが注入されるようで
生きていることへの深い感謝と 生かされていることへの有難さ 何と言う美しさ
ブナの新葉は皆上を向いている 雨を受け そのまま樹木の表皮に流す
すると何メートルにも積もっているフカフカの腐葉土に
たった一滴の雨も残さず吸い込まれ
いつしか清澄な伏流水となって 数十年後に
我々の目の前に湧き出る あああ何と幽妙なイノチの輝きか
真冬 寒風に強か打たれ じっと我慢をし こうして春の瞬間を迎えたブナたち
この美しさに全く言葉が出て来ない これが世界遺産とは驚愕し賛嘆したい
樹齢数百年も経っているようなブナの樹だらけで 凄い
一日中山歩きしたい イワウチワ・片栗・蕨・薇などが誘惑をするが
午後遅くなって 日本海側に出ようと 営林署管轄の道路のゲートを
バンガロー経営の方から開けて戴いて クネクネと曲がりが続く悪路を走る
彼が言う日本海に落ちる夕日は 深浦が一番と ジュッと落ちるのだと
何とか夕日を見られる時間に深浦に到着し 海辺の旅館に投宿
海水が入って来そうな海辺の露天風呂で足を投げ出し 夕日を眺める
するとなるほど一日の役目を終えた大きな日輪が 凄い速さで落ち
ジュッと音を立てながら沈んで行くようで 可笑しかった
地元の方が話すその表現の妙
旅の疲れが ユルユルと取れてきそう
夢の中に ブナと山櫻が出て来るだろう