硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

 弘前城址の櫻に息を呑む

2007年04月28日 | 

 

 

 

弘前城址の櫻に息を呑む

 

 

 

今回の旅で 様々なことを学ばせて戴いた

秘めた櫻への思いと壮大稀有な櫻山計画は 

私の亡き主人の業以外の何物でもないのではないかと

根深い疑問が続き 正直痛く煩悶することが多かったように思う

 

お遍路旅での櫻 吉野の櫻 京都の櫻 岐阜・高山の櫻 千鳥が淵の櫻

福島・三春の瀧櫻 会津五櫻 山形・置賜や村山の櫻 秋田・角館の櫻 

更に道沿いに見えた数百箇所に及ぶ名もなき山櫻や江戸彼岸の花達

そして津軽平野に ドカンと突っ立っているお岩木山を背景に

弘前城址公園の 色っぽく鮮やかに咲く櫻の海

 

私の心の裡に 鱗が一枚一枚剥がされて行くように 

次第に変化がおきているのかも知れない

業ではない 業であってもいい なれば業をトコトン肯定してやろうじゃないか

櫻とは天然自然の理法そのものなのだと 

主人が抱いた確信が強くなって来ている

櫻と稲作は切っても切れない関係にあり 更に腐葉土を生み 

再生の道へ それが櫻の正体であり 櫻は決して儚いものではない 

鳥の糞で運ばれた種子は 何千年もの間多くの樹々を育て繰り返されて咲く

櫻もあの戦争の犠牲であったが 櫻こそ我が民族の真の誇りであり続けるだろう

 

海外に飛び立つ時 成田上空から見た千葉県内のゴルフ場の多さ

殆どの山が禿山になり 多くの除草剤が 周辺にまで悲劇を生んでいる

世界における古代文明の跡は すべてが砂漠化し ただの望楼に過ぎない 

そっちの業の方が余程酷いじゃないかと 声を叫びたい心境だ

イラクやソマリアでの内乱を思う時 人間は懲りない代物かも知れず

地球環境などと暢気なことを言うなと お叱りを受ける恐怖があるが

 

W・フォークナーのように人類は決して滅びないと 

でもその確信がまるで持てないことばかりで 或る意味で虚無的になり

刹那的で暴虐で 若い子たちの無気力や無軌道ぶりに歯止めが掛からない

多くの夢や希望を 我々大人たちが平気で奪って来たのではないだろうか

子供叱るな来た道だと 化野念仏寺に書かれてあった

我々が通って来た過程で 自信を持って子供たちを叱れるだろうか

 

我々は断固たる確信を持つ必要あると同時に大いなる義務がある 

将来を背負う子供たちの為に そして僅かに残された我々自身の人生の為に

日本文化の実像として 櫻を永遠に伝え残していかねばならない

それが子供達へ残せる自信と誇りに繋がると信じて疑わない

 

ただ歩き廻って櫻を見物するだけなので この辺で下手な屁理屈は止める

弘前の櫻は 未だ完全な満開ではないが 咽返るような充分な櫻の海であり 

濠面に鮮やかに映る櫻の花翳は 「お前 頑張れよ」と ただそれだけ

午後から津軽じょんがらの三味も出るだろう 大勢の人々がこの日を待っていた

爛漫と咲く櫻は ちょいと来た旅人の私には勿体無いぐらいであり 

地元の方々と 太棹の三味に合わせて 歌っこの一つも歌いたいものである

 

 

雪月花さまから教えて戴いた『できるブログ goo改訂版』は

京都の河原町・四条で購入して ずっと持っているが

この本をパラパラ捲っただけで読んでいない 写真は一枚しか出せないでいる

このブログを使いこなせていない 実のところ何枚も写真を出したいが

このまま旅を続けるのに精一杯だ 今回の口絵の写真は 朝の弘前城と櫻

 


  ネブタ小屋とさくらばな

2007年04月28日 | 

 

 

 

 

ネブタ小屋とさくらばな

 

 

 

夕刻になってしまったが アスパムに漸く着いた

巨大な小屋が長屋のように並んでいて 海からの残照で光って見えた

ひと部屋ごとに作家が違う 出来上がるまで 出し物は皆秘密主義だから

小屋の正面は不透明なビニール・シートで覆われている 覗くものもいない

やっと作龍の小屋を発見し 中を覗いたら 

弟子達と捻り鉢巻で 必死になって木組みの準備をやっていた

 

 

九月~十二月まで 来期の下絵つくり(スポンサー探し)

一月~三月まで 組ネブタの詳細な部分の骨組み

四月~五月 組ネブタの木組み 及び番線張り

六月 和紙貼り 蝋線(下絵)描き

七月 彩色 完成したら 発電機が載っている台車に台あげ

八月三日~七日 本番 及び連日修理などの張替

七日夜 入賞したネブタ師の組ネブタだけ(約八組)

青森湾内にて海上運航され 花火も上がって 

海面が色とりどりの色彩に揺らめき 弥が上にも幻想的な光景になる

 

 

ネブタ師は 兎に角年がら年中ネブタのことばかり考えているし 忙しい

今晩いっぱい飲るかと そんな声が掛かけて戴いて 二人で繁華街へ

青森特産の帆立や山菜の各種 美味しい田酒 

珍しい藤壺の焼き物(貝の蓋に穴を開けてストローで汁を飲む)

デロデロに酔っ払い始めたネブタ師が 突如シャンとして吹くネブタ囃子の音

お店の若い方が鳴らす鉦の賑やかな音 マスターが叩く俄か太鼓の音

思わず「ラッセ~ラッセ~ラッセイラァ~~」と掛け声る私

ふと戸外の見える窓辺に 染井吉野が鮮やかな夜櫻にて どアップ

かくして華やかな花見になってしまったが 

正調ネブタ囃子の所為で 賑やかな花見も悪くはないなぁと思えた

 

 

ホテルに帰ってから 今年の接待客の予約をし直して

久し振りにベッドにつくが なかなか寝付けない

あのネブタのお囃子の音が 遠く近くで聞こえて少しも消え去らないでいる

横になった身体が何かの拍子に あのリズムに勝手に反応してしまうからだった

 

 

 

 

小社では毎年青森ネブタに 家族連れの顧客を三百組以上の招待をする 前年に予約をするが

この時季に 改めて今年の分を若干の修正をしなければならない 夜の接待やゴルフの接待より

遥かに好評を得ているし 安上がりで 当社としても大変有難いことなのである ホテルにあぶれると

ラッセランドにテントを建てて そこでくそ熱い夜を過ごさなければならない お客様にはご法度だ

 

口絵の写真はラッセランド(アスパム=青森物産館脇)にあるネブタ小屋

これは正面のシートを取った状態の写真で まだ本格的に稼動していない

殆ど材料の搬入とか 大枠の木組みの準備をしている状況で 

作業が本格化すると シートは常時張られて 他の作家には秘密となる 

 

 http://www.nebuta.or.jp/ 青森ネブタの公式サイト(お囃子が聴ける)