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硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

     或る冬の日の献立

2013年12月14日 | お料理・お酒

 

タペストリーに飾ったクリスマス用グッズ

 

 

          或る冬の日の献立

 

 

 昨日から寒さが一層厳しくなりましたね、皆さまには、お変わりございませんか。次女の写真をアップしてから、どうも風邪気味で、病院に行ったら即入院。インフルエンザでした。子供たちに移すわけにも行かず、大人しく一週間ほど、静養を兼ねて点滴を打ち、情けない姿でした。漸く帰ってから、健康は食事からということで、早速キッチンへ立ち、久し振りに張り切りました。

 妻は京都の出身ですが、どうもパン食が好きです。結婚当初は朝粥の色々を作っていたのですが、京都人の朝ご飯はパン食が殆どだと言われ、ガックリ。そこで石窯などを作り、セッセとパンやピザなどを作っておりましたが、「和食文化」が世界無形文化遺産になったそうで、旧知の村田吉弘日本料理アカデミー理事長)さんに申し訳が立たず、再び一汁三菜のご飯中心と致しました。それでもイタ飯が好きな妻のために、和食だけとは行かず、ドイツでクリスマス時に食べられるドライフルーツケーキのシュトーレンを作ったり、フランスの世界遺産であるモン・サン=ミシェル参道にあるラ・メール・プラールが何と我がオフィスの直ぐ傍に開店したとかで、かの巨大で有名なオムレツをを真似て作ってみたり、白トリフを乗せたニョッキを作ったりして、日々の変化をつけ工夫しようと考えています。

 

 我が家風(和風出汁で炊いた)パエリア

 

ドイツのクリスマスケーキ(ドライフルーツケーキ)

 

長女と長男が大好きな 我が手製のカスタードプディング

 

 子供たちや家内に評判のいいお料理はいいのですが、私が中学時代に亡くなった母から懇切丁寧に教えてもらったのは殆ど和食で、母の亡き後に、父に持たせたお弁当も、ほぼ和食中心でした。学生時代、京都で板前修業を少々させて戴いたお店も和食の名店でした。ですから、我が家では和食は普通のことで不思議ではないのですが、どうやら現在のお母さんやお母さん候補の方々は面倒臭いということで、敬遠しがちだと伺っています。特に生魚の扱いはしたがらないのでしょう。その上、出汁の殆どは既成の出汁だとかで、お忙しい現代の生活人には当たり前だと逆に叱られそうですが、銅製おろし金と、山椒すりこぎ棒の区別もつかないようで、それって本当でしょうか。包丁に至っては菜切り包丁と出刃包丁の差も分からないようで、俄かに信じられません。和包丁には菜切り包丁・出刃包丁・薄刃包丁・刺身包丁・三徳包丁などが一般的で、洋包丁では牛刀とかペティナイフが殆どでしょうか。中華包丁もあるでしょう。我が家にはこの他、鱧切り包丁や蕎麦包丁やパン切り包丁など、全部で30丁ほどあります。切断面の良し悪しで味に微妙な差が生じるものです。

 和食の最大の違いは「うまみ」にあるようです。和食の「うまみ」は一切油がないことです。フランス料理はバター、イタリア料理はオリーブ油、中華料理は胡麻油とオイスターソース。メキシコ料理はチレと、オリーブ油などで炒めた材料を煮るか炒めます。和食のうまみは、昆布・干し椎茸・鰹節や煮干しなどが中心で、一切の油はうまみ成分には入りません。無論、醤油や酢や味噌や酒・味醂や塩や魚醤や日本蜂蜜や和三盆なども大切な味の決め手です。更に米麹菌は日本独特のもので他国には全くありません。また村田吉弘さんが本店菊乃井と別にやっている木屋町店の露庵に行った時、カウンター越しに村田さんに聞いたことがあります。「今夜の先付に、キャビアがついてたけど、それって和食なの」と。そしたら村田さんから大笑いされてしまいました。「材料なんて何でもいいんだよ。和食の味付けで出せばいいのさ」と。日本人の和の文化と伝統があればいいというわけでした。世界中には55,000件もの和食屋さんがありますが、その殆どが妖しいもので、でもこうした機会に、それぞれの店舗が和食とは何ぞやと、一歩前に踏み出してもらえばいいなぁと仰っておられました。一方には日本人の殆どの家庭ではワンプレート料理が定番になっているとか、お米離れとか、本物の出汁を使用しないとかで、大いなる危機感を抱いているようです。今回の世界遺産指定は、何だか痛烈な皮肉に聞こえます。

 これから正月を迎えます。お宅ではすべてお節は自身の手でお造りにならないのでしょうか。確かに元日から、各店舗は営業しているし、少しでもお料理を作る御夫人方の手間暇を休める必要もなく、お金さえ出せば簡単に購入出来るわけですから、正論を唱えるのは愚考でしょうか。でも古い当家では殆どが手造りです。手造りしながら、これはこんな意味があるんだよと、子供たちに言い伝えています。

 戦後、「和」なるものが徹底に排除され、その結果本当に日本は安全な国家になったと言えるのでしょうか。幼い子を平気で殺し、養育施設では日常的に暴力がふるわれ、あってはならない立場の方がする卑劣な盗撮や淫行や痴漢など、後を絶たないのが現状です。性道徳の感覚は殆どゼロに等しく、様々なSNSによって、いとも簡単に性が売買されているとも聞いています(特にLineの掲示板)。純愛なんて死語になっているのではないかと不安です。「別れてから知るオトコの値打ち」とか言われ、リベンジ・ポルノなどと言う言葉は、最も卑劣です。世田谷の高校生殺人事件など、動画や画像が氾濫しているのも気掛かりで、ストーカーではなく、立派な重犯罪行為だと思いたいのですが、何か法制化や最低でも、加害者にストップ掛けられる適正な方法はないものでしょうか。要するに、「善きこと」が急速に失われて行くようでなりません。そもそもネットの発達が実感を伴わない以上、危険と言わざるを得ないのでしょう。こんな便利なものはないというのに、です。「善きこと」に使われるべきです。

 

我が家では不思議に大好物なロールキャベツ

 

これも売れ筋のホウレンソウの胡麻和え

 

人参と赤たまねぎの お酢の物

 

叔母の農園で出来た聖護院蕪で作った手製の千枚漬け 柚子も当家の樹から

 

 NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」は大好評のようです。朝ドラの王道でしょう。杏さんの魅力もさることながら、脇役陣もなかなかのものです。め以子にイケズを徹する和江役のキムラ緑子さんはドラマに重みを与えているようです。キムラさんはベテラン女優さんで、Eテレでは、毎週楽しみに観ている「グレーテルのかまど」で、かまど役になり画面には出て来ないのですが、演技力の確かな女優さんのようです。ばぁば役のトラに扮する吉行和子から、母親役のイクに扮する財前直美へ、そしてめ以子の杏さんへ、「あまちゃん」の時の親子三代物語となっていて、安心して観ていられます。更に嫁ぎ先のフーテン父親・西角正造役になる近藤正臣は素晴らしい味を出しています。目立たない存在ですが、義妹・希子役になる高畑充希さんもとっても可愛く素敵です。このドラマでは糠漬けが重要なキーワードになっているのでしょうか。当家にも長い季節を経た糠床があり、偶にいない私のために、毎日叔母が管理し取り扱ってくれています。美しい画面の「ごちそうさん」に負けないように、私がキッチンに立つ時は、極力和食で、精々美味しいものを作りたいものです。

  昨日、京都・北野天満宮で、お正月の元日にお茶に入れて飲むと、健康に過ごせるという縁起物の「大塩梅」が配られました。一袋六個入りの梅干しが入っています。梅干しと言っても、天満宮にある梅の木1500本から採れる梅の実を塩漬けにし乾した素朴なものですが、家内の実家から三袋送られてきました。毎年のことだけれど、義父母にはいつも感謝しています。来年こそ、私自身こそ健康で通そうと、改めて決意しています。更に同送されたものに、京都料理組合が毎年やっている和食展示会が何と100回記念だとか、京都・岡崎・京都市勧業館「みやこめっせ」で、第100回記念「京料理展示大会」が開催されたようで、老舗料理店参加の展示会ですが、何とも意義深いものでして、パンフレットなども送って戴きました。妻が実家のお雑煮を懐かしんでくれるように、お正月には白味噌仕立てで、丸餅のお雑煮もお作り致しましょう。無論関東煮のアッサリ味のも。そしてそろそろお節料理用に、各地へ産地直送の材料調達の準備に取り掛かります。今度の正月は何人来るのでしょうか。楽しみでもあり、恐ろしくもあり・・・・・・・・。

 


   秋の夜の、夫婦の会話

2011年11月05日 | お料理・お酒

我が家の蹲

 

 

秋の夜の、夫婦の会話

 

 

 今年の秋は、いつになくいとおしい秋です。我が人生観も変わってしまったような、大きな天災があり、私たち夫婦にとっても無縁ではありません。被災地へ送り続けている私の手作り絵本も40冊を超えました。各地での読み聞かせ絵本の会などでは、「スーホの白い馬」や「子うさぎましろのお話」など数冊を読んで聞かせて参りましたが、まだまだ足りません。被災地への応援は寧ろこれからが肝要なことでしょう。被災地の子供たちは皆、心に深い傷を負いながらも、明るく前向きに歩き始めています。それは、日本人が過去幾多もの人災や天災に遭ってでも、より一層逞しく生きてきた証左でありましょうか。永い永い間、武士も庶民もなく、培われてきた民心(下層精神文化)の頑丈さがそうしているものと思われてなりません。ご維新の時、欧米列強の植民地政策にも対応し、「魔法の森の20年」を経て、あの敗戦の悲惨なる状況から逸早く脱却、世界の範となるべく立ち直ったのですから、そう考えてもよいでしょう

 人間には「自助(自立する力)」と「公助(公的機関からの援助)」と、その間に「共助(助け合いの心)」があるようです。その三助の中で、今最も危機的な状況は共助の部分かも知れません。戦後の高度経済成長などにより、社会生活の変節はそうならしめました。江戸時代の長屋など、共助の典型でしたが、生活の多様化とともに、隣の人も見知らぬ人同士というマンション暮らしが多くなったことも大きく関わっています。更に最も重要なことは、多くのお祭りが消滅しつつあり、地域意識・感覚が薄くなったせいでしょう。戦後の四大公害とは何かと問い掛けて直ぐに返事が返って来る方は今やいないはずで、奇跡的な実績を残した戦後史も希薄になり、日本人は自信とプライドを喪失しつつあって、政治空白の暗闇の中に落ち込んでいるようです。何処へ向かって走っているのだろうかと、お互いへの疑心暗鬼にあるのでしょう。ところが被災地ではこの共助が最もよく機能していて、それと同じぐらいに自助能力が優れているということが驚嘆されます。政治の手が届く前に、自らの手で雄々しく立ち上がろうとしているのです。私も使っている雄勝硯がいい例です。ボランティアに行って逆に教えられることばかりです。私たち都会では、一体何をしているのかと反省させられます。又多くの若者がボランティアに行っておりますが、彼らは何と立派な若者でしょう。未だにテント暮らしで、全くの無償の行為なのですから、頭が下がります。真っ暗闇の中にあるのは、力感のない政治家と、危機意識がない一部官僚の中だけかもと思ってしまいます。若い奴らは何を考えているのだろうと思っている御仁は、きっとこうした新しい若者たちの、無垢な在り様を知らない無責任な大人だけかと勘ぐりたくなります。

 日本人のアイデンティティーは世界に類例がない独特なものです。そこから唐突に申し上げますが、ギリシャ問題はただ一国の問題ではありません。観光と海運の産業しかないギリシャでは、何と四人に一人が公務員で、増税やリストラは完全な禁じ手になっており、今回ユーロから提示された改革案をそう簡単に飲める社会構造ではありません。産業・興業に熱意がないなら、今後のギリシャは危ういもので、ユーロ圏内にいる資格はありません。でも最早盲目的にあの一国を追い遣ることが出来ません。ギリシャ国債の危機はアイルランドやポルトガルの経済を直撃し、加えてイタリアやスペインも、ギリシャ国債のデフォルトに酷く怯えています。ギリシャ国債の最高保有国はフランスで、続いてドイツなのですが、連携している国債のデフォルトほど恐ろしいものはありません。先ず最初に他国の銀行経営を直撃するからです。ギリシャの国会では僅か八票差で、パパンドレウ首相が信任され、取り合えずの危機は今朝なくなりました。でも火種が消えたわけではありません。今後、デモる前に、ギリシャ国民はきっといい決断をされると信じますが、切迫した財政再建が必須な条件なのです。ギリシャ一国の民族主義的な判断と選択をされるなら、世界恐慌にもなりえるのですから恐ろしいことです。ギリシャが対GDP比で152%の借金比率なら、日本は対GDP比230%の借金大国です。他山の石ではありません。無論日本の超円高はこの危機と全く無縁ではなく、ただ一つだけいい点があるとすれば、日本国が発行している国債は自国所有が90%を超えているからだけです。借金には変わりありません。又アメリカの先行き不安も半端ではありません。つまり行過ぎた一国だけの資本主義に限界が来ているということです。ネット社会は資本主義とか民主主義とか共産主義とかの、そんな古色蒼然たる括りではどうにも理解出来ない部分まで進化しているからでもあります。そしてその危機はかのリーマンショック以上のもので、財政再建問題と、ユーロ圏のギリシャ国債を多額に持たされたメガバンクの危機でもあります。ところでアメリカの国債を最も多く所有している国家は中国です。全共産党員の中で、たった八人の幹部だけで決断し支配している中国は、北朝鮮の独裁主義国家体制と何ら変わりはないのです。組んず解れずにされた世界の経済は最早一国だけの判断ではどうにもなりません。従って一刻も早くグローバル化されるべきですが、ただ拙速に走ってはなりません。一国の独特な文化やシステムが、ハゲタカのような投機筋狙いや訴訟大国に負けてはいられないのです。グローバル化とTPP問題は明らかに違います。アメリカが他国と結んだFTAを検証すれば、その点は明らかになるでしょう。思い付き内閣の総理大臣だった菅時代に標榜された「平成の開国」なんていう言葉に、酔い痴れている場合ではないのです。無制限に時間を掛けて論議を尽くすべきです。アメリカの得意な不平等条約に惑わされてはなりません。まさに、ここは東北の被災者が現在歩んでいる「自立自助」の中に、本当に大きいヒントが隠されています。円高対策に、日銀のマクロ経済対策が必須なのであって、更なる金融緩和策を取らなければ、一時の市場介入などクソの役にも立ちません。ところが現在民主党が歩もうとする道は真逆の金融規制であり、財務省主導の増税路線一辺倒です。他に智慧がないとでも言いたげです。今朝西岡武夫参議院議長が現職のまま亡くなられました。歯に衣着せぬ堂々たるお方で、延命を図る菅直人に、「菅さんは何ら政治哲学も持っていない」と、堂々と痛烈な批判を浴びせた御仁でした。選挙改革の、大きな主軸を失いました。心からお悔やみを申し上げるとともに、与党政権が拙速な迷走をせぬよう、故人への餞(はなむけ)としたいところです。

 世界の政治も経済もすべてが、ポピュリズムの只中にあり、日本の民主党は有権者にとって耳障りのいい「分配」だけを声高にして叫んでいます。収入があってこその分配でありましょう。どこかの総理大臣は一時「雇用、雇用」と連呼していましたが、それは順番が間違いです。原資があってこその雇用です。日本の経済を牽引してきた大手輸出業関連会社は軒並み赤字予告で、そこにどうしたら雇用が生み出されるのでしょう。呆れてモノが言えません。更に産業の空洞化が進んでいます。タイに多くの企業が進出しておりますが、直接日本から、巨大市場である中国へ直接輸出すれば10%の関税が掛けられますが、タイから中国へ行く場合は関税が0%になる理由からです。苦し紛れの苦肉の策ですが、拠点アユタヤの洪水予想は大変高かったことを今更ながらに感じます。洪水になる前に、CNN放送では一週間連続して、巨大タイフーンの動向を放送していました。相当な被害額になりますが、安易な方策はアダとなることを知るべきです。来年各国の首脳が代わります。それによってどうなるか、益々心配ですが、要は私たち自身がちゃんとすることです。強力な、いい指導者が出て来ることを期待しますが、私たち自身の問題として、いい政党いい政治家を創っていかなければなりません。そして痛みを共に分かち合う精神こそ、現在の日本が進むべき大道です。脱ポピュリズム、これこそが日本的な誇るべき風土であり、この際東北の皆さんに、初歩から学ぶべきです。我侭気侭を許すのではなく、あらゆる方面に、そこそこの辛抱こそが最も肝要なことでしょう。

 日本には他国にない素晴らしい民力があります。私は予てから基層にある精神文化がそうして来たのだと確信しています。石油や天然ガスなど、エネルギー資源に乏しい我が国家は、一方では「課題大国」なのです。今後の世界を牽引するのは、課題大国として日本の責任の在り様です。ユーロの問題は欧州の政治力学が根本です。決して経済連携ではなかったことを、今回の危機は露呈し、教えてくれています。フランス・カンヌで開かれた今回のG20でEFSF(欧州金融危機対応基金)が採択されましたが、どこの国家にEFSF債を多額に購入する資金があるのでしょう。明らかに、ユーロの弱点を曝け出した結果に他なりません。一時私はユーロならぬアーロ(アジア通貨統一貨幣発行)の夢を見ましたが、それは浅き夢まぼろしでした。民俗性、及び民族性、そして政治風土が違っていたら、同じ土壌には立てません。個々の自立と自助の確立こそ、今最も求められていることではないでしょうか。日本人は日本人をもっと信頼し誇るべきですし、再生する日本人特有の体質と気質に、改めて感じ入って戴きたいと念願しています。

 我が家の庭先ではシュウメイギクやホトトギスや小菊やムラサキシキブなどが満開です。広縁で、妻と冷酒を交わしながら対話したのは、先月の宵。付き合い始めの頃、二人とも饒舌でしたが、結婚してしばらくすると、そんなに饒舌にならなくても済み、それが逆に楽で楽しいものになっています。彼女は自分の課題に懸命で、時々斎宮跡発掘現場や学会などで、家を留守にしますが、まだ幼い子供たちは、最初っからこうなんだとばかり、ばぁばやじぃじと遊んでくれているので、助かっています。先日一晩だけ美味しい「肉じゃが」をご馳走したくて、二人で博多へ行って参りました。先月26日は去年と同じ木枯らし一番が吹いた日でしたから、その後だったでしょうか。博多・春吉町にある「たらふくまんま」に、妻を招待しました。午後遅くの便で羽田から福岡空港へ。そこから地下鉄で中州へは直ぐです。偶々グランド ハイアット 福岡の、私が最も愛する888号室が空室であったので、思い切って誘いました。先ずホテルでチェックインをしてから、春吉橋を渡り、渡辺通りに向かうと一つ手前の信号が春吉の交差点です。そこを左折。寺町の雰囲気。中ほど全く目立たない場所に「たらふくまんま」の本店があります。看板も何もなく、黒いにじり口のような部分が入り口で、中に久し振りに入ってほっとしました。相変わらず狭いのですが、出て来る料理は材料に酷く拘ったモノだけです。面白いのは肉じゃが、じゃが芋が男爵なのに、全くカタチが崩れておりません。秘密を教えて戴きました。表皮を半分ぐらいまで厚く切り取れば全く煮崩れしないそうです。ステーキは岩手の前沢牛で、とてもジュ~シーでした。親指サイズのお寿司の盛り合わせも美味しかったです。妻と饒舌ではなく、時々顔を見合わせ、一言二言だけの少ない会話。それだけでとても幸せな時間でした。

 何故か那珂川沿いの屋台の数はめっきり減っていました。中洲四丁目の「割烹 川田」にも顔を出しました。そこでは冷酒と、関サバを戴きました。博多祇園山笠の際、ここのご主人は「山のぼせ」になってしまう熱心な方ですが、女将さんもご主人も留守でした。同じ四丁目にある「小料理 いろは島」に行き、ご兄弟が切りもりしているここの、無着色明太子は絶品なんです。濃厚な昆布出汁が利いているからです。悪いので、ビール一本だけ戴き、その明太子を三箱購入し、ハシゴ酒三件で終了しました。ホロ酔いの中、周囲を見渡すと一時の賑わいだ中洲ではありませんでした。背筋が寒くなるような、溢れるようなタクシーの行列と、いい飲み方ではないような酔客ばかりで、華やかな中洲は何処へ消えてしまったのでしょう。中洲の巨大交番のみが繁盛しておりました。私たちはどこへ行くのでも、手を繋いで歩いたのは久し振りなことです。内憂外患で厳しく淋しく、痛烈な今年の秋の夜の、夫婦の会話は少ないけれど、久し振りに静謐な時間を二人きりで送りました。後一週間もすれば、パリへ出発です。帰りに、元いた会社の支店があるリヨンに寄ってから帰ろうと思います。サン=テグジュベリの銅像も見せたいし、世界遺産になっている旧市街区を二人でそぞろ歩きたいし、古代ローマの遺跡へも案内したいし、銀座支店ではなく、ポール・ポキューズさんの本店で、これがフランス料理の粋だと味わって貰いたいとも思っています。ご高齢になられたポールさんご本人に逢えればいいのになぁ。

 中洲のさるところで仕入れた「森伊蔵」を抱えホテルに着いた私たちは、持参したハイフェッツのCDを壁掛け型になっているプレーヤーに掛け、音量いっぱいにして楽しみながら、豊潤で淡麗な焼酎を味わいました。何と心地いい調べがあちこちから沸いて来るではありませんか。偶にはいいものです。そしてこの人は結構よく食べ、お酒も嗜みますが、全く太りません。羨ましい体質で、どこで消化されるのか不思議でならないのですが、久し振りに発散された何かがあったようで、嬉しかったです。そして翌朝、早く目覚めた妻と簡単な身支度を整え、タクシーで福岡空港へ。朝8時代の飛行機で帰京。どうやら妻の勤務時間には間に合ったようです。

 

「たらふくまんま」のカウンターー

 

大評判の肉じゃが とろけるような牛角煮 男っぽい豪快さがいい

 


 自己流おばんざい

2007年06月29日 | お料理・お酒

 

 

 

自己流おばんざい

 

 

梅雨のない北海道と梅雨が明けた沖縄以外では 雨が降ったり止んだりで

鬱陶しい日々が続いている まぁ作物には必要不可欠な雨だから 我慢もしよう

そんな湿りがちな日々の中で 不思議とキッチンだけは綺麗にしようとするようだ

キッチンの中を隅々まで掃除してみると 不思議や不思議 乾物の宝庫であった

こりゃいいやとばかり母の味を思い出し思い出ししながら おばんざいに挑戦してみた

 

母の味と言えば 先ず高野豆腐・凍り豆腐・凍み豆腐

などの種類で柔らかいいい味だったなぁ

やって見ると意外に簡単 戻し方だけ注意すれば さほど難しくはない

微温湯に浸けて約一時間 流水の中で水が濁らなくなったところで

両手で挟むようにして水切りし絞る 更に四つ切にして それを予め用意しておいた

薄味の煮汁に浸け 紙蓋をして 弱火で時間を掛けて煮含めるだけ 割と簡単

季節によっては 木の芽や柚子皮を天盛りにして出す

 

干鱈(ほしたら)もあった 通常塩気が強いから 充分塩気を水で抜いてから

軽く炙って マヨネーズなどで食す お酒のアテには丁度いい

 

カチンカチンになった堅い棒鱈もあった 今晩から幾晩か柔らかくなるまで 

お水を取替えながら様子を見て たっぷりとしたお水に浸けておこう

それから海老芋と京人参などと一緒に煮含めよう 自己流『京のいも棒』

 

ヒジキも欠かせない母の味である

お水で充分戻してから 油揚げや千切り人参や絹さやと煮豆を

胡麻油で炒めてから 汁気ををやややあ大目にして 炊き合わせればよい

食べ残したヒジキは 小松菜やキャベツの千切りと一緒にさっと炒めると超美味

季節のゼンマイやワラビと炊き合わせ 豆腐で白和えとして食べるのも美味しい

 

お豆もあったが 次回の記事に惜譲したく

 

更に乾物ではないが 夏バージョンの納豆の食べ方も一つ

生の胡瓜(一本)と浅漬けの人参(半分)と沢庵漬(←これがポイント 半分)を

1㌢以下の小口に切り それに刺身 出来れば二品 

蛸や烏賊 ハマチやマグロなど 角切りにして合わせる

そこに一人用ならワンパック当たり 練りに練った納豆を入れ 全部を掻き混ぜる

そこに最後 卵の黄身だけ落として 軽く合わせ 若干の醤油を垂らしてから食す 

ゴージャス納豆の完成である!お酒のアテには堪らない

 

更にもう一品を御紹介しておきましょう

胡瓜がパパと茄子がママとオクラが僕らを 全部生で 際限なく微塵切り

パパ一本 ママ一個 オクラ3本~5本 これで二人前か

すると不思議や不思議 粘り気が出て来る そこに出汁醤油をさっと入れ 

朝の白い御飯の上に たっぷり掛けて食す 食欲が増すこと請け合いだ

青紫蘇(2枚)の千切りか 酢橘(半分)などを掛けると一層美味しくなる

納豆の入らない納豆の完成である

 

そんな遊び半分で造りながら 食欲を落とさないと 夏場ににもいい仕事が出来よう

但し旬のものや初物や頂き物など ちょっとした手料理なども 

神棚にご神饌としてさしあげること(半月ごとの榊と毎日の塩とお水は欠かせない)や

お仏壇に供物としてさしあげる習慣を 身につけたいものですね

 

 

 

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『櫻灯路』(朝のご飯で) 大の納豆好きだった主人の可笑しい納豆アラカルト よかったらどうぞ

 


 瓜売りが瓜売りに来て

2007年06月25日 | お料理・お酒

 

 

 

瓜売りが瓜売りに来て

 

 

お母さん あの甜瓜(まくわうり)はどこに行っちゃったんでしょうねぇ

 

梅雨の時期から 残暑まで 嫌んなるぐらいの蒸し暑さ

それをちょっとでも過ごし易くと考え抜かれたのが 夏座敷で 夏メニューだ

夏の料理の中で 一番こざっぱりしているのが瓜じゃないかなぁ

お風呂に入って 汗を流してさっぱりと 糊の効いた浴衣に着替え

胡瓜揉みで 冷酒をいっぱいきゅっと飲む こうすりゃ日本の夏も悪くない

 

胡瓜の原産地は東インドとか ヒマラヤ山麓辺りだと言う

それが中国を経て 日本にやって来た

中国へは西域を経過してもたらされたものだから 何でも『胡』がついた

胡椒(こしょう) 胡桃(くるみ) 胡麻(ごま)などだが 日本に渡来したのは

随分古かったようだ だって平安朝の文献に既に出ているから

 

ビニールハウスの御蔭で 今や胡瓜は年中あるが

でもやっぱり直射日光をまともに吸い込んだ路地モノの胡瓜は

香りが全く違うし 断然美味しい

 

以前祇園祭の時 京都・高台寺脇にある『菊乃井』さんに宿泊した

偶々お座敷に来た大将の村田吉弘さんに聞いたことがあった 

八坂さんは織田信長の庇護を受け 織田家の家紋に似ている胡瓜を

コンチキチンの祇園さんの時には一切食べないって聞いてたけど

ところがところが仰山胡瓜料理が出て来はったなぁと 

そしたら村田さんは 涼しい顔をして この時期こんな美味いモノを

食わんかったら いつ食べはるんのどすと豪快に笑っていたっけ

 

日本は瓜天国 どんな瓜でもありそうである

胡瓜を初め 越瓜(しろうり) 南瓜(かぼちゃ) 西瓜(すいか) 

甜瓜(まくわうり) 苦瓜(にがうり) 糸瓜(へちま) 冬瓜(とうがん)などなど

「瓜売りが瓜売りに来て瓜売らず売り売り帰る瓜売りの声」

 

越瓜(しろうり)っていいものだ 

『越』は現在の中国広東省・江西省地方の古名で

広く東アジアから出て来た産物らしい だから『越』をつける

漢名越瓜に対して 和名では「しろうり」「あさうり」「わさうり」「つのうり」等様々である

関西ではもっぱら奈良漬専用の観があるようだ

 

でも関東にだって独特の食べ方がある 

「雷干し(かみなりぼし)」と言われる食べ方で

中身の種を割り箸を使ってグリグリと取り出し 綺麗に取り去る

次に斜めに包丁を入れ 瓜を廻しながら螺旋状に切り進め

薄緑色の長い紐を作る それを天日に乾し 中が半生で外がカリカリ

一日ぐらいが丁度いい 水洗いした後 2cm程に切りそろえ

三杯酢に漬け 花かつおをぱぱっと掛けて食べる

これは音の美味で なかなか美味しいし 一瞬に暑さを忘れさせてくれる

 

甜瓜(まくわうり)は 殆ど店頭には出て来ていない

ほんのり甘くて 子供時分にはよく食べたものであるが 

やはりメロンに その座を奪われてしまったからなのだろうか 

ネットで調べると生産しているようだが とても残念に思う

 

ところでズッキーニは胡瓜の仲間なのかなぁ 同じような食感で好きだ

生のまま薄くスライスして 軽く塩揉みし ちょっと時間を置き 塩を洗い落とし

そこにシークワァサァー(酢橘でもよい)なんか掛けて食べると最高だがなぁ

 

苦瓜(ゴーヤ)の種を取って薄くスライス 軽く塩揉みして置く それから

味噌・マヨネーズ・酢を それぞれ同じ分量をよくかき混ぜてソースを作り

 上からソースを掛ける 苦瓜のサラダだが これもなかなか行けるから 

是非一度お試しを 但し大人の味である

 

このマンションに越して来る時 父に断って 母の糠床を少々貰って来た

毎日必ず引っ掻き回してやらなければならず 手間が大変だ 長く留守をする時は

実家に持って行って管理して貰う 厄介だけど 糠漬はやっぱり美味しい

尤も花嫁には 糠床は触らせたくないが・・・・・ ぷ

 

 

 http://sakura-nokishita.spaces.live.com/ あづさ弓 2006/11/28

料亭『菊乃井』のご主人・村田吉弘さんのこと

 

http://outouro-hananoen.spaces.live.com/blog/cns!BA05963D8EB5CC5!985.entry  櫻灯路『青梅煮』

 


 櫻桃(サクランボ)

2007年06月11日 | お料理・お酒

 

 

 

櫻桃(サクランボ)

 

 

 

もうそろそろ 山形では路地モノのサクランボが出始める

主な生産地の西村山郡寒河江を中心としたサクランボ農園には 

ちょっと可笑しげな風景がよく見掛けられる

 

殆どの樹が ビニール製の傘を被っているからだ

何故このようなことをするかと言うと

サクランボの実は 雨に弱く 雨が降って直ぐ太陽に照らされると 

表面が割れて 傷物になってしまい 傷物は商品価値がなくなるから

だから最低でも 雨に濡らさない方法が取られる

その防御防護のためで 温室栽培などではない 

鉄製のパイプをドーム状にし そこにビニールを張る

両脇は風が すぅ~すぅ~と風が通り抜けるように出来ている

 

以前の品種はナポレオンなどの小粒のものが多かったが 

今では佐藤さんが開発した『佐藤錦』全盛の時代になり

更に現在では『南陽(なんよう)』と言う新しい品種が出始めている

粒は佐藤錦より 更に大きく 酸味もほどほど 至極甘い

食べ応えもあり 人気急上昇中であるが 

何と言っても樹がまだまだ少ないので 一部にしか出回らない

 

俳優・藤村俊二さんのお店で青山にあるワイン・バーの『オヒョイズ・バー』に

一度南陽を持って行ってことがあり オヒョイさんや厨房の方々に食べて貰ったが

「絶品!」と言う評を戴いて 何故か嬉しかった

 

アメリカ産のサクランボには酸味がない 色は悪いし 口汚し程度だ

適度な酸味は 甘みを引き立たせてくれ 美味しさの源泉であろう

それと必ず冷蔵庫で冷やしてから食べること これ鉄則

 

映画『プリティ・ウーマン』では シャンパンに苺を入れていたが

日本男児は シャンパンにサクランボは行けてないだろうか ぷ

 

サクランボの花は真っ白で サクラ属であり 櫻より花期は後で 

樹の枝ぶりは 真っ直ぐ上に向かい巨樹になる傾向がある 

二月の最も寒い時季に 適度に剪定をし 適当に調える

あああ こんなことを書いていたら 何としても食べたくなった

今年も大粒の『南陽』が手に入るだろうか

 

 

http://www.city.sagae.yamagata.jp/ 寒河江市のホームページ 観光欄をクリック!

今月19日 三鷹の禅林寺では 太宰治の『櫻桃忌』が行われる

 


 初夏のお寿司を手作りで

2007年06月10日 | お料理・お酒

 

 

 

初夏のお寿司を手作りで

 

 

南北に長い日本列島に すみずみまで新緑に包まれ 花もいっぱい

風薫るいい季節です この伸びやかな自然は最高に輝ける季節でしょう

こんな時 何だか朝からワクワクし 手料理を作りたくなって来る

 

主人の庭の柿の木から 昨日柿の葉を数十枚戴いて来た

秋の紅葉も美しいが 初夏の青々とした柿の葉も 何とまぁ美しいことか

見ているだけでは体によくない だから柿の葉寿司を作ろうと言う魂胆になった

先ず柿の葉を綺麗に洗って準備する 寿司飯を作り 塩を強めに〆鯖か

鮭のマリネやスモークサーモンなどを用意する

寿司飯を親指大に握り 千切り生姜少々と〆鯖を薄切りにし 

それを乗せ軽く押さえ 洗っておいた柿の葉一枚で

葉の表を寿司飯側に 綺麗に包み込む 或いは簡単に巻くだけでもよい

それからポリ容器(あったら木箱)に綺麗に並べて 重石をして半日待つ

味がなれてから 柿の葉に包んだまま 大きな平器に盛って食卓に出す

寿司の下に敷くのは ハランか熊笹なら見栄えがいい ガリも添える

 

又鮭のマリネを利用する時は 汁気を切るが 

一緒に漬け込んだレモンの薄切りや

スパイスは彩りとして 一緒に握り込む

スモークサーモンの場合は ケッパーなどもそのまま使うべきだ

 

同じような要領で 高菜を使ってもよい

高菜を使った目張り寿司もあるくらいだから 寿司飯は大きい方がいい

これなら普段着のお寿司になろう

 

独活(ウド)の薄切りに 三杯酢を掛けただけの小付を添えると

食卓が華やぐし 一層美味しく戴けることでしょう

 

 

 【〆鯖の作り方】

なるべく丸く太った鯖を購入し 包丁で三枚におろす

腹骨も包丁でおろすが なるべく骨だけを取るように薄く包丁を入れる 

美味しさの詰まったハラスを 傷めず厚めに残すためである

真ん中の骨は お魚専用の刺抜きで 丁寧に取る

それから振り塩をして 冷蔵庫の中で 二時間が標準(夏場は短めで冬場は長目に)

冷蔵庫から取り出したら 一味つけた酢に浸すか漬ける 酢〆は15分~20分ぐらい

その後皮を剥ぐが 必ず切り落とした頭の部分から そろっと皮を剥ぐ 

すると 新鮮で美しい青々とした魚肌が見えて来る

これだけでも 酒の肴には充分に美味しいが

寿司に使う場合は そぎ切りのように 斜めに薄く切っておく

 

【香川の押し抜き寿司と鱧寿司の作り方】

押し枠を使用して作るご馳走寿司の作り方のことで

材料さえ整えば いつでも誰にでも出来る

先ずこの時季 最も旬になって美味しいのは 鱧である

鱧切りは 私は専用の包丁を持っているが 通常の場合 鱧の骨切りが難しい

従って 京都の錦小路や大阪の黒門市場だったら タレ付きで蒲焼風の

鱧が仰山売られている 無論骨切りしてあるから 楽である

押し枠に寿司飯を入れ 小口に切った鱧を並べ乗せ 押したら取り出し

食べ易い大きさに切って出す 言わばハーフメイドの寿司とでも言えようか

なるべくなら箱寿司で仕上げるといいかも タレが寿司飯まで通って美味しい

 

香川でやられている押し抜き寿司は 寿司飯に 色々な具材を乗せて

押し枠から 抜き取り それを小口に切り分けて 大皿に盛り それを出す

材料は蛸 小鰭(コハダ) 鯯(ツナシ=鰶⇔コノシロの幼魚) 蛤やアサリを煮た具

蛸は酢蛸にし(或いは購入し) 他の魚は〆鯖の小型の要領で 酢で〆る 

更に卵焼き(甘口で薄く)や山椒の木の芽やグリーンピースを 寿司飯の上に乗せ

押し枠でしばらく待つ 味が馴染んで来たら 押し枠の下から抜く

上に乗せるデザインは 勝手気儘でいい ガリも添える

口絵写真は 香川の押し抜き寿司の画像である

 

美味しいものを作るのに 手を抜かないことだ

一つ一つ手を抜かなければ 必ず美味しいものが出来る

辰巳芳子さんばりに 「手から 心へ」

柿の葉寿司が多く出来たら 彼女にクール宅急便で送ってあげよう

さぁ これからが朝のひと仕事 頑張るべぇ

 


 梅酒

2007年06月08日 | お料理・お酒

 

 

 

梅酒

 

 

朝早く飛び起きて 今朝梅酒を作った

前日仕入れた南高梅 熟していないのが透き通った梅酒作りの最低条件

手早く水洗いして 竹串でヘタを取り除く 簡単に取れるので楽な作業だ

そこから肝心なことは その後徹底的に水気を取ること 少々乾かしてから

瓶の中に入れる これに国内産のピートで作った氷砂糖と

出来るだけアルコール度の高い甲類25度~35度の焼酎を入れる

梅 氷砂糖 焼酎の割合は 梅1,8kgに対し 氷砂糖500g 焼酎1,8㍑の割合だ

 

果実酒は梅の他 果実なら何でも出来る

レモン 酢橘 カボスなど酸味の強いもの 枇杷のように香りのいいもの

花梨のように 少々苦味や渋みがあるものもいける

夏蜜柑 苺 プラム グミ ガマズミ スグリ サルナシ 山櫻桃 林檎

変わったところでは枇杷の実がなかなか香りがいいので 偶に作る

焼酎は度の強いものほど 腐敗の心配はない

更に薔薇の花片などの花片もなかなか見栄えして 香り高くて味がいい

 

色が変化して来る三ヶ月過ぎが 飲める目途だが 永く置けば置くほど

美しい琥珀色になって 作り手の愛情の深さに繋がろうか

 

梅酒は女性の酒と言われ 昔の御殿女中は飲むことを許されていた

水で割って 氷を浮かべて カランカランと音をさせて飲む

『本朝食鑑』によれば 梅酒は『痰を消し 渇を止め 食を推し 毒を消し

喉痛を止む』とあり 梅酒は薬酒の扱いであった

 

私はもう直ぐ結婚をする 彼女が冬の寒い時 ホットで飲めるよう

今から準備しておけば ちょうどいい頃合いになるだろう

 

 

                『梅酒』

                           高村光太郎 作詩

 

               死んだ智恵子が造っておいた瓶の梅酒は

           十年の重みにどんより澱んで光を葆み、

           いま琥珀の杯に凝って玉のやうだ。

           ひとりで早春の夜ふけの寒いとき、

           これをあがってくださいと、

           おのれの死後に遺していった人を思ふ。

           おのれのあたまの壊れる不安に脅かされ、

           もうぢき駄目になると思ふ悲に

           智恵子は身のまはりの始末をした。

           七年の狂気は死んで終わった。

           厨に見つけたこの梅酒の芳りある甘さを

           わたしはしづかにしづかに味はふ。

           狂瀾怒涛の世界の叫も

           この一瞬を犯しがたい。

           あはれな一個の生命を正視する時、

           世界はただこれを遠巻にする。

           夜風も絶えた。

                                (智恵子抄より)

 

 

日中戦争が始まった翌年 昭和13年10月5日 粟粒性結核により

高村智恵子は 千数百点の切り紙絵を残し 僅か52歳で亡くなった

哀しみに明け暮れる光太郎は 翌々年に この『梅酒』を発表

その翌年 昭和16年に『荒涼たる帰宅』を発表し 智恵子抄は完結した

 

間もなく太平洋戦争の勃発の中 光太郎は創作の意図を掴めないまま

終戦の年にアトリエ炎上 困り果て 宮沢賢治を頼って岩手に引越し

既に光太郎自身も肺炎に悩んでいたが 人里離れた山口に落ち着く

そこで実に七年間の独居生活をする 真冬は雪の影響で頬被りをして寝たと言う

 

帰京し 友人のアトリエを借り 最期の力を振り絞って

智恵子の面影の残す裸婦像を漸く完成させ 

十和田湖の休屋で 『乙女の祈り像』として除幕式を終えた翌年

昭和31年 光太郎肺結核により 4月2日早暁 帰らぬ人となる

 

梅酒を作る時 愛に溢れる智恵子抄の『梅酒』を含めた全編を 

万感を籠めて必ず思い起こし 口ずさみ涙を零す

 


 蚕豆(ソラマメ)

2007年05月30日 | お料理・お酒

 

 

 

蚕豆

 

 

 

 蚕豆を購入したままであったが 今朝早く目覚めたので 早速調理した

ウルチ米にもち米を30%ほど入れ 出汁昆布を敷き お塩少々で炊き上げ

予め茹でておいた蚕豆を 炊き立ての御飯の中に入れて 蒸して完成

夜ビールのおつまみ用に 茹でた蚕豆を冷蔵庫の中に ポン

おかずはホウレン草の胡麻和えのみ お味噌汁は豆腐と若布だけのシンプルさ

朝から 御飯が進んで 大変結構なお味でした 蚕豆さん 有難う!

蚕豆御飯がいっぱい出来たから 会社に大きなタッパーに詰めて持って行こう

美味しいんだもん 冷めたって 誰でも食べてくれるはず

 

ところでこの蚕豆は 色んな異称を持つ豆なんである

中国地方では夏豆 駿河から伊豆へかけては五月豆

畿内では大和豆 相模地方の一部では冬植えるから冬豆 

房総では雪割豆 一寸豆と言うのも珍しくない

 

多くはビールのお供で この季節に欠かせない出逢いモノで

枝豆に比べ 出廻るのが短期間だから 逆に印象が強い

莢(さや)を割ると ホワホワした赤ちゃんの産着のような

真っ白な綿毛で覆われているから 不思議で だぁ~い好き

茹で立ての蚕豆に パパッと塩を振る 冷めないうちに口にする

ああああ 今年も夏がやって来るなぁと感じる

 

蚕豆は遠くペルシャか北アフリカから 中国を経由して渡来したものらしい

聖武天皇の頃からあったとか 江戸時代の慶長年間であろうと喧しい

九州では 中国伝来の意味からだろうか 唐豆と呼んでいるようだ

 

ソラマメと言う名の由来も これまた諸説あって何がどうなのかよく分からない

この豆の色が5月の空を見るようだからとか 莢が天に向かって付くからだとか

或いは養蚕の時季にこの豆が熟するからだとか 諸説あって本当は何も分からない

 

『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)では 蚕豆のことを

「子孫繁盛草」と記されている 蚕豆は良質の蛋白があり ビタミン類も豊富にあって

これをせっせと食べれば スタミナがつくし活力旺盛となり 滋養強壮にいいのだろう

確かに子孫繁盛の源になる根拠があるからだろうか

 

もう~お腹がいっぱいだ 今夜のお楽しみは冷蔵庫の中だ うっひひ

もう6時に近い そろそろ朝の会議に間に合うように出掛けることにしよう

行って来まぁ~~~~すぅ!と言っても誰もいない部屋 

頑張ろう!エイエイオ~~~~!