硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

 櫻紋

2007年04月17日 | 

 

 

 

櫻紋

 

 

「雨は恋人」と言い放った人を思う

彼の精神的スタミナは 私には些かなさそうである

精神的に この旅に疲れが出ているようで 見っともない

 

ましてや 日本海沿いや太平洋沿いに 

南へ北へと移動するのは容易だが

ド真ん中の山中を 北へと移動するのは困難を極める

 

高山から 南アルプス越えをして 飯田線に乗り 

中央線に乗り ジグザクに旅をし 漸く小淵沢・神田櫻へ

江戸彼岸系の枝垂れた見事な糸櫻まで辿り着く

 

バスも 何度乗り継いだことだろうか

幸いにも 山間の新芽や櫻が 我が心身を癒してくれている

五月半ばになると 殆ど同じような緑になるのが

樹によって様々な光彩を放ち パステル調に音楽を奏でている

ひと雨ごとに 緑色は変化して来るのが鋭敏に分かる

 

昨日から誰とも話しをせず 殆ど車中の人であったが

2~3日前からの天候不順が 私の心をしたたか打った

「雨は恋人」と言い放ちながら 櫻の旅を続けた人をしみじみと思う

昨日 主人の友人であった河島英五の忌日であったようだ

 

夢の中に 櫻の紋を見た

どの櫻の紋にするかと言う夢であった 

主人と二人で話し合って なかなか決まらない

決まらない方がいいよと 私は最後に言い張る 

決まると 全国の櫻に逢いに行けなくなるから

すると笑い転げる主人 気がつくと駅構内でハッとして目覚めた

何故笑われたのか 私の精神的スタミナを笑われたのだろうか

 

櫻色が灰色になるような気がして とても怖い

染井吉野が散ってからは 誰もが櫻を話さなくなるらしい

 

雨の降り頻る山中の山櫻の傍で 

明日は一旦東京に帰る決意をした

今夜は この鄙びた居酒屋で 飲み明かすとするか

何かを振り捨てるかのようにして