とはずがたり

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New York Cityからの報告

2020-05-25 18:45:51 | 新型コロナウイルス(疫学他)
COVID-19が猖獗を極めたNew Yorkからの詳細な臨床報告。Columbia University Irving Medical Centerと提携する2つの病院。700床の救急病院Milstein Hospitalと230床の市中病院Allen Hospitalに入院した重症呼吸不全患者の経過と院内死亡のリスク因子を検討しています。元々Milstein Hospitalには117床、Allen Hospitalには12床のICU病床があったのですが、研究期間中に258床、24床に増床されました。
3月2日から4月1日までに入院した1150名のCOVID-19確定患者のうち重症な呼吸不全を示したのが257人(22%)でした。Hispanic or Latinoが159人 (62%)、Black or African Americanが49人 (19%)、Whiteが32人(12%)、Asianが8人 (3%)、その他が5人 (2%)ということでHispanic or Latinoが多いのが特徴です。13人 (5%)はhealth care workerでした。
このうち101人 (39%)が死亡。203人 (79%)に補助換気が必要で、そのうち84人 (41%)が死亡しました。人種の内訳としてはBlack or African American 20/49 (41%) 、Hispanic or Latino 61/159 (38%) 、White 15/32 (47%)などで人種による死亡率に大きな差はありませんでした。94人 (37%)は入院継続中ですので、死亡率はもう少し上昇するかもしれません。
治療としては229人 (89%)はempiricalに抗菌薬投与、185人 (72%)はヒドロキシクロロキン、23人 (9%)はcompassionate useでremdesivir使用、68人 (26%)はコルチコステロイド使用、44人 (17%)は重症な炎症状態にある場合、2次感染が否定されればIL-6受容体抗体投与などです。
Multivariable Cox modelで独立した死亡リスクとして挙がってきたのは高齢(adjusted HR [aHR] 1·31 [95% CI 1·09–1·57] per 10-year increase)、慢性心疾患 (aHR 1·76 [1·08–2·86])、慢性肺疾患 (aHR 2·94 1·48–5·84])、IL-6高値(aHR 1·11 [1·02–1·20] per decile increase)、D-dimer高値(aHR 1·10 [1·01–1·19] per decile increase) でした。
他のコホート調査と比較して、重症な患者の詳細なデータを前向きに取っていったという点で貴重な臨床報告です。特に死亡のリスク因子としてIL-6, D-dimerなどを明らかにした点は重要かと思います。
それにしてもICU病床がこれだけあり、補助換気や伏臥位でのventilationなど、かなり徹底した管理をしていたにもかかわらずこの死亡率はやはり驚きです。日本で同様のことが起こっていたらどうだったかと思わずにはおれません。