運動には多くの利点があり、中でも種々の慢性疾患に対しては良好な治療的効果を示すことが知られています。変形性膝関節症では運動療法を凌駕する薬物はほとんどないほどです。筋収縮による代謝活動の増加は多くの組織やシグナル経路を変化させてエネルギーおよび酸素の需要に対応します。例えば持続的な運動によってエネルギーが必要になった場合には、必要なエネルギー供給は解糖系→クエン酸経路(TCAサイクル)すなわち糖→脂肪酸をエネルギー源にする経路へのスイッチの切り替えによって達成されます。しかしこのようなスイッチの切り替えがどのようなメカニズムで生じているのかは十分にわかっていません。この論文で著者らは持久運動がマウス筋肉中の主たるインターロイキン13(IL-13)供給細胞である2型自然リンパ球(ILC2)の増殖を介してIL-13の血中レベルを上昇させることを明らかにしました。IL-13欠損マウスは持久運動能が低下していますが、これはIL-13が持久運動に伴う筋におけるミトコンドリアネットワークや脂肪酸酸化に関与する遺伝子発現誘導に関与しているためであることがわかりました。IL-13は受容体IL-13Rα1を介して骨格筋に作用し、Stat3を活性化し、核内受容体およびミトコンドリア制御因子であるERRα, ERRγを介して運動による代謝プログラム制御に関与していました。また筋におけるIL-13レベルを増加させることで持久運動に類似した代謝経路が活性化され、糖代謝も改善することが明らかになりました。
これらの結果から、IL-13およびその産生を高めるILC2細胞は運動による代謝改善の重要なプレイヤーであると考えられます。今後ドーピング検査にIL-13測定も必要になるかもしれません。
これらの結果から、IL-13およびその産生を高めるILC2細胞は運動による代謝改善の重要なプレイヤーであると考えられます。今後ドーピング検査にIL-13測定も必要になるかもしれません。