とはずがたり

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SARS-CoV-2のD614G変異型について

2020-09-09 07:45:29 | 新型コロナウイルス(疫学他)
コロナウイルスは遺伝子変異を自分で修復する"proofreading"の仕組みを持っているため、HIVやインフルエンザウイルスなど他のRNAウイルスと比較して変異が起こりにくいことが知られており、SARS-CoV-2も例外ではありません。それでも変異自体はこれまで多数報告されているのですが、アミノ酸の置換を伴わないなど、あまり意味のない変異がほとんどです。しかしKorberとMontefioriらが報告した614番目のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に変異したD614G変異型ウイルスは2月以降拡大し、6月には世界のほとんどのウイルスをこの変異型ウイルスが占めるようになりました。Korberらはこの理由がD614Gウイルスの感染力が高いためではないかと考察しました。以来D614G変異については様々な研究報告がなされていますが、それを肯定するもの、否定するものなど様々で、いまだに結論はでていません(最近ではTexas Medical Branch in Galvestonからの報告で、実際に変異型ウイルスを作成し、そのヒト肺細胞やハムスターへの感染力が高いことを報告していますhttps://doi.org/10.1101/2020.09.01.278689)。またCOVID-19 Genomics UK Consortiumにおける約25,000のウイルスサンプルの検討では、D614G変異によってCOVID-19の臨床像は変わらないが、わずかに感染力が強い(早く拡散する)可能性はあるとしています(https://doi.org/10.1101/2020.07.31.20166082)。またこの変異自体は抗ウイルス抗体に影響を与えるものではなく、むしろこの変異はワクチンの標的になりやすい可能性もあるようです。しかし今後抗体の認識部位に変異が入ったウイルスが出現する確率は、極めて少ないもののゼロではないと考えられます。  
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02544-6


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1 コメント

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Unknown (hakusou_onlinechecker)
2020-09-11 13:04:03
ワクチン自体が上市に至るか、もはや不透明なので……

アストラゼネカの失敗は、STATの暴露報道によってバレたから、仕方なく公表されたもの。https://blog.goo.ne.jp/hakusou_onlinechecker/e/020ae7db77a11457ce29607985488447

競合他社も厳しい、との見立ても
https://blog.goo.ne.jp/itagaki-eiken/e/c4736ab22f154b1af08c78cce42b2047

上市に至らなければ、ワクチンは存在しないまま。
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