あ・しねま・たいむ

今日も映画でまったり

帰ってきたヒトラー

2016-09-19 17:09:20 | 映画 2016
ティムール・ヴェルメシュのベストセラー小説の映画化です。

1945年ソ連軍に攻囲され、自殺をしたはずのヒトラー。
ところが、死なずに目覚めてしまう。
目覚めたのは70年近く経った現代のベルリンです。
彼はそっくりさん、ものまね芸人として人気者になります。
外を歩けば写真を求められ、YouTuberのネタになり、
テレビでは高視聴率を叩き出すのでした。
そして彼の演説(聴く人々はヒトラーの物真似だと思っている)は、
難民流入問題、貧困、政治不信などの問題を抱えているドイツで、
不満や不安を感じている人々の心を次第に捉えていきます。

と、ここらあたりまでは予想したとおりの、
カルチャーギャップコメディの作りでした。
ヒトラーの可笑しな行動に笑ったりしてね。
主張していることはちっとも過激じゃないし。
一理はあるかもとさえ思っちゃったし。
それが一転したのは、ザヴァツキの恋人クレマイヤーの祖母が、
ヒトラーに会ったときの画面いっぱいの驚きと怖れの表情です。
認知症のクレマイヤーの祖母が、初めて表情を出した瞬間。
「 出てけ!この悪魔!こいつが家族みんなを殺した!」
と彼女は叫ぶのです。

目の前にいるヒトラーは本物だ、と確信したザヴァツキに、
ヒトラーは言います。
「 私は煽動などしていない、指針を示しただけだ。
選んだのは君たちだ。
怪物?怪物を選んだ者を責めるんだな、彼らは普通の人間だ」


移民問題や貧困問題が騒がれると、
「 この状況は好都合だ」と呟くヒトラー。

いまの日本の状況と妙にシンクロしているような気がします。
選んだのは君たちだ、という言葉が痛い。
理想を体現しているはずの民主主義が、揺らいでいるような・・・。

この映画のキャッチコピーは、
「安心してください、大人には危険ですがお子様には楽しいコメディです」
だって。

最期のどんでん返しにはひっくりかえりそうになります。


監督 デヴィット・ヴェント
アドルフ・ヒトラー  オリヴァー・マスッチ
ファビアン・ザヴァツキ ファビアン・ブッシュ
カッチャ・ベリーニ   カッチャ・リーマン 女性放送局長
クリストフ・ゼンゼンブリンク  クリストフ・マリア・ヘルプスト
フランツィスカ・クレマイヤー フランツィスカ・ウルフ ザヴァツキの恋人
ミヒャエル・ヴィツィヒマン ミヒャエル・ケスラー
リコ・マンチェロ ミヒャエル・オストロウスキ
ザヴァツキの母 ロマナ・クンツェ=リブノウ
キオスクの主人 ラース・ルドルフ
クレマイヤーの祖母 グドルーン・リッター
ゲッヒリヒター ステファン・グロスマン
テレビ会社社長 クリスティアン・ハルティング

ホルガー・アプフェル ナチスの後継者を自称するドイツ国家民主党の党首
レナーテ・キュナスト 緑の党の元党首
ジグマール・ガブリエル ドイツ社会民主党の党首
2016年6月公開


オリヴァー・マスッチにヒトラーの格好をさせたまま、
ドイツ各地でゲリラ撮影を行ったという話ですが、
顔にモザイクしていたり、目の部分を■で隠しているのって、
顔出しNGの人たち?
かえって目立っているなあ。