あ・しねま・たいむ

今日も映画でまったり

万引き家族

2018-09-03 11:15:56 | 映画 2018
柴田治と治の妻信代、息子祥太、JKリフレ店で働く信代の妹亜紀、
そして祖母の初枝は、東京下町、隅田川近くに住んでいる貧しい一家です。
柴田家の主な収入源は、初江が受給する老齢年金と、
信代のクリーニング工場でのパート代、
そして治の日雇い建設業の賃金だけ。
収入が足りない分は治と祥太が万引きをしています。 
初枝は表向き独居老人ということになっていて、同居人の存在は秘密。
社会の底辺で暮らす5人ですが、いつも笑顔が絶えません。
そんなある冬の日、万引き帰りの治と祥太は、
近所の団地の外廊下で、幼い女の子が寒さで震えているのを見つけました。
言葉も出ず怯えている女の子の様子に、治は放っておけず、
家へ連れ帰ります。
女の子の身体には火傷や痣の痕が。
虐待を受けていたようだと柴田家の面々は気づきます。
とはいえ両親の元へ返すべきだと女の子のいた団地に行ったのですが、
女の子の家からは凄まじい夫婦喧嘩の大声が漏れていて、
結局また自分たちの家へ連れ帰ったのでした。
そのまま女の子は柴田家の一員となります。
ゆりと名乗った女の子は柴田家に馴染んでいきました。
無口だった女の子がふつうにお喋りする女の子に。
「5歳の女の子が行方不明」というニュースが流れたのは女の子が来て2か月後。
しかしゆりは両親の元へ帰ろうとせず、柴田家の一員であることを選びます。
柴田家は女の子の髪を切り「ゆり」を「りん」と名前を変えたのでした。
夏になって、治は工事現場で怪我をして働けなくなり、
信代もクリーニング工場を解雇され、経済的にますます困窮しますが、
縁側で花火大会を楽しみ、日帰り小旅行で海水浴を楽しみと、
貧しいなかでも笑顔が絶えない家族でした。
その柴田家のささやかな幸せが崩れはじめたのは、
日帰り小旅行の翌日朝、初江が部屋で急逝していたことでした。

一方翔太は、万引きを繰り返す自分の行為に疑問を持ち始めます。
きっかけは、ゆりと組んで万引きした駄菓子屋のおじさんの言葉でした。
駄菓子屋のおじさんは怒るかわりに翔太にお菓子を手渡し、
「 妹にはやらせるなよ」と言ったのです。
今までわかっていて見逃してくれていた?と愕然とする翔太。
そんな翔太の気持ちをわかるはずもなくゆりは、
慕っているお兄ちゃんの真似をして、ひとりでも万引きをしようとします。
それを庇おうと、店員の前で派手に盗みをおこない、
店員に追いかけられる翔太ですが、逃げる途中で下の道路へ飛び降りをし、
大怪我をしてしまいます。
そして警察が介入、柴田家のすべてがあきらかになります。
全員が血縁関係ではない、疑似家族だということが。 

警察で、なんでこんなことをしたんだ!と問われて信代は、
「 捨ててあったから、拾ったんだよ」
と答えています。
初枝は旦那に浮気されて離婚した独居老人で、 
祥太は車に放置されていたところを、
ゆりは冬の寒い日に外に追い出されていたところを、
柴田家に連れてこられたのだから、信代さんの言葉はある意味真実です。
生活に困っていたとはいえ道徳観念の欠如は庇いようがないし、
とくに治はほんとうにダメダメ人間で、
それでも柴田家の人々は人間の痛みを感じられる人たち。
亡くなる前日、海水浴場での満足そうな初枝の笑顔は、
嘘の上に築かれたものとはいえ、よかったね、と思っちゃった。
そして祥太。
自分で考え、自分で結論を出して、
この結末でこちらもよかったね、とほっとしたの。 
けどゆりはどうなるんだろ?
囚われてしまって、また無口な女の子に逆戻りして。
あの大きな目で、ベランダ越しに遠くを見詰めていたのが切ないです。


監督 是枝裕和 
柴田治 リリー・フランキー 下町に暮らす日雇い労働者。 
柴田信代 安藤サクラ 治の妻、工場のパート従業員 
柴田初枝 樹木希林 祖母、平屋の持ち主 
柴田亜紀 松岡茉優 信代の妹、JKリフレ店に勤務 
柴田祥太 城桧吏 治の息子 
ゆり:りん 佐々木みゆ 治が柴田家に連れて帰ってきた少女 
4番さん 池松壮亮 JKリフレ店の常連客。
柴田譲 緒形直人 亜紀の父親 
柴田葉子 森口瑤子 亜紀の母親 
柴田さやか 蒔田彩珠 亜紀の妹。 
北条希 片山萌美 ゆりの母
山戸頼次 柄本明 駄菓子屋の店主
公開2018年6月


「 スイミーはなぜ、仲間と集まったか、知ってる?」
と祥太は治に問いかけます。
学校に行ってない祥太が大好きな絵本でした。


第71回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞