あ・しねま・たいむ

今日も映画でまったり

この世界の片隅に

2016-12-08 11:56:11 | 映画 2016


故郷の広島から20キロ離れた呉に、すずは18歳で嫁いできました。
第2次世界大戦下の呉は日本一の軍港の街。
戦況の悪化に伴い、アメリカ軍の空爆の標的となります。


戦時下ではあるけれど、嫁ぎ先で一生懸命なすず。
物資が足りない、食料が足りないというなかでも工夫をこらして、
その工夫が楽しげですら見えるすずでした。
軍艦の浮かぶ港、青い山々、のどかな田畑、咲く野の花、
そして市井の人々の暮らし。
そういったものが、すずの目で丹念に描かれていきます。
全てが柔らかく優しい。

しかし戦争が進むにつれ空襲は激しさを増し、
すずたちの日常は次第に破壊されていきます。
何度も何度も続く空襲、そして8月6日の広島原爆投下。
爆心地から20キロ離れた呉にも閃光と轟音が響き、
呉の人々は巨大なキノコ雲を目撃したのでした。

すずが絵を描くと、その絵は物語のなかで生き生きと躍動します。
海に波の数だけ無数のうさぎが飛び出し、跳びはねてゆく様子は、
年甲斐もなくワクワクしてしまいました。
アニメでしかできない手法だよね~。
その後も、すずが線を一本一本描きたすごとに仕上がってゆく絵は、
みんな素敵で、全部お取り置きしておきたいくらい。
軍艦の絵が出来上がったときなんて、
美しいなあ男の子が憧れるのはわかる気がする、なんて思ってしまいました。
憲兵に家に踏み込まれていたけどね。
でも、魔法のように描きあげていく右手を失ってしまったすずでした。
なのに自分の右腕のために泣くこともできない、
その右手に繋いでいた小さな命を一緒に失ってしまったから。
それでも周りの人々の気持ちを受け止めつつ、
ゆっくりと、穏やかに前を向いてゆくすずは、
本当の意味で強いと思います。

周作のお姉さんの黒村径子さん、
広島弁で喋るその声とイントネーションが私の母にそっくりでした。
母は被爆体験をあまり語らなかったなあ・・・。
私は広島を離れてからの時間のほうがすでに長いのですが、
言葉も、ときおり出る街の名も風景も、ひたすら懐かしかったです。

原作はこうの史代さんのコミックです。
まだ未読、ぜひ手に入れて読んでみたいな。


監督 片渕須直
北條(浦野)すず のん
北條周作 細谷佳正
黒村径子 尾身美詞
黒村晴美 稲葉菜月
浦野すみ 潘めぐみ
北條円太郎 牛山茂
北條サン 新谷真弓
水原哲 小野大輔
2016年11月公開


能年玲奈から改名したのんちゃんが、主人公すず役です。
声優初挑戦とのこと。
おっとりとしていてときに明るく素直な声が、すずにぴったりです。