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中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

誹謗中傷

2009-05-23 09:21:48 | 身辺雑記
 新型インフルエンザの感染者の多くは高校生だが、彼らの学校には謂われ無い中傷の電話が多くかかっているという。

 カナダに滞在して成田空港で感染と判断されて隔離された大阪府寝屋川市の高校生4人は、その後快方に向かって措置が解かれ、彼らと行動をともにした同級生達に対する停留措置も解かれて全員帰宅することができた。ところが大阪府にある彼らの学校には誤解にもとづく誹謗や中傷が殺到したようだ。寝屋川市には電話が全国から寄せられ、府や学校にも計100件超の電話が寄せられ、多くが行政や生徒らを批判する内容だったという。その内容は「なぜマスクをしなかったのか」とか「早く帰国させるべきだった」というものから「成田から帰ってくるな」とか「どうしてあんな学校がカナダ留学にいくのか」といった理不尽きわまりないもので、「謝れ」、「賠償しろ」、「バカヤロー」といった罵声を一方的に浴びせたり、生徒や教員を個人的に中傷したりする内容の電話もかかったそうだ。寝屋川市の危機管理担当者は「人権を傷つけるような電話もある」と言っている。インタネットの掲示板にも書き込みが殺到、その多くが「税金使ってウイルス輸入。何やってんの?」とか「他人に迷惑かけてるんだ。たかが風邪ひいた問題じゃない」という心ない表現になっているようだ。

 また、ニューヨークで開かれた模擬国連会議に参加して帰国した後に2名の生徒が発症した川崎市の私立高校にも、早朝から50件以上抗議や中傷の電話が殺到したようだ。大声で主張をまくしたて一方的に電話を切ってしまうパターンが多く、「何で生徒をニューヨークに行かせたのか」、「社会的な不安を与えた責任を取れ」などの内容だったという。ある民放テレビでは「ディズニーランドに行こうと思ったのに(途中にその学校がある)どうしてくれるんだ」とか「インフルエンザウイールスは熱に弱いから学校に火をつけてやる」などとめちゃくちゃなものもあったらしい。

 同様の電話は、最初に新型インフルエンザが確認された神戸の高校にもあり、「市民祭りが中止になった責任を取れ」という筋違いの抗議もあったようだ。インフルエンザに感染した生徒の個人情報の開示を求める電話も複数あったという。

 実に嫌な風潮ではないか。単なる過剰反応というよりも、犯罪的でもあると思う。当事者が不幸な目に遭い、関係者が対応に追われている時にサディスト的な行為としか言いようがない。いったいどんな人間がこのような行為に走るのだろうか。誹謗中傷や暴言は論外だが、正義漢ぶった物言いにも心底嫌悪を感じる。あるコラムニストは「中には電話をして、相手の反応を見て楽しんでいる人がいる可能性もある」と指摘しているようだ。嫌な輩が多い嫌な国、非寛容な社会になっているのかと思う。

 私も市の教育委員会の事務局に勤務していた時に、そのような抗議の電話を受けたことがある。ある新聞が、市内の小学校で起こったという「いじめ」事件についてかなり一方的で偏った記事を出したことで抗議が殺到した。私も1本受けたが東京の男性だった。非常に横柄な物言いで、教育委員会は何をしているんだというようなことを傲慢な口調で言う。たぶん企業の中堅役職者かとも思われたが、その人を見下すような物の言い方が非常に不愉快だった。あまり偉そうに言うので少々腹が立って、あなたは「加害者」の子どもよりも「被害者」の子どものほうがずっと体格が大きいことなど詳しいことをご存知なのかと尋ねると、急にしどろもどろになって、しばらくして、まあ今後注意してくださいと取ってつけたように言うと電話を切った。この「いじめ事件」とその反響は今思い出しても不愉快なもので、親の学校に対する態度やマスコミの報道のあり方について考えさせられたものだった。

 少なくとも感染した生徒達には何の罪もないし、責任もない。海外交流や会議参加を認めた学校を責めるのもおかしい。インフルエンザ騒動には少々過剰反応のようなものもあるようだが、こんな時だからこそ理性ある言動が求められる。人の不幸につけ込んで騒ぎ立てるような輩は、百害あって一利なしの反社会的存在だ。