黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

足利鉱山

2012-12-22 03:10:00 | 産業遺産
前回アップした廃道の取材リポートの冒頭で取り上げた、
栃木県足利市にある越床峠の取材に行った際に、
次のロケ地へ移動しようとすると、四駆に乗ったヒップなおじさんが近づいて来た。
テンガロンハットにデニムの上下、ベルトはD&Gと、
栃木県足利市の山奥には不釣り合いな出で立ち。
おじさんとしばらく話しているうちに、
越床峠の横に広がる鉱山を見学させてくれる、という話になった。
ちょうど『産業遺産の記録』という本をお手伝いさせ頂いた時期でもあったので、
現役の鉱山を見てみようと思った。

足利鉱山

足利鉱山は珪石を露天掘りで採掘している鉱山。
広大に削り取られた珪石の山が印象に残る。





足利鉱山

その光景はさながら映画『未知との遭遇』の、
デビルズ・タワーとその奥に作られたコンタクトステーションのよう。
すりばち状に削り取られた低地には、
きっとマザーシップが着船できるにちがいない。
それはさておおき、
この鉱山はNHK大河ドラマ『太平記』の戦闘シーンにも使われたという。
画像中央の珪石が積まれた丘に陣地が作られ、
合戦シーンが撮影されたそうだ。





足利鉱山

敷地内には合戦シーンだけではなく、
他の美術的設備も作られたようで、こちらは現在でも残っている。
1991年のオンエアーなので、その後の年月で廃墟状態になったのかと思いきや、
当時、ほぼこの状態でセットが組まれていたという。
この木の感触等、美術スタッフの力量に感服。





足利鉱山

太平記の話はさておき、鉱山の施設を端から案内頂いた。
まず、最初の原石ポケット。
対象物がないので規模が分かりずらいが、
幅が5m位、中央に写る鎖の一つが30cmはあるだろうか。
鎖はかなり重量があるので、
その重さで大きな鉱石を選り分けるということだった。





足利鉱山

鎖の奥の穴の内側からの眺め。
多少傾斜がついているので、そのまま手前へ転がってくるのだが、
傾斜の床面にスリットが施されている所をみると、
今度は必要以上に小さな鉱石も、
このスロープで分別しているようだ。





足利鉱山

選別された鉱石はスロープから手前のポケットへ落ちる。
ポケットの奥には波板状のコンクリートがあるだけにみえるが、
これが前後に移動し、鉱石を細かく砕くクラッシャーということだった。
珪石を砕くのも結構たいへんなのか、
敷地内には、歯がだめになって使わなくなったクラッシャーが放置されていた。





足利鉱山

砕かれた鉱石はベルトコンベアーで運搬され、
次のクラッシャーにかけられてさらに細かくなる。





足利鉱山

粉砕の行程を3回ほど行なったら、
右端に写るサイロの様な構造のものに蓄えられるそうだが、
これでもう製品が完成。





足利鉱山

このサイロには製品になった珪石が蓄えられていて、
下からトラックに積んで出荷する。

そこには通洞や斜坑もなければ、選鉱も砕くだけで、
シックナーとか浮選機とかも全くない。
もちろん製錬等もない。
なんとシンプルな構造の鉱山だろうか。





足利鉱山

一通り鉱山施設を見学した後、
鉱山が一望出来る山へ案内して頂いた。
その全貌は地上で見ているより遥かに大きく感じる。
ちなみに、画像の右端に写るカーブする道路が、
越床峠の廃道。

頂いた名刺にはお名前しか無く、
鉱山関係の方だとは分かったが、とりあえず検索してみると、
なんと鉱山のオーナーの方だったようだ(汗)
貴重な体験をありがとうございました。

でもおかげでその日予定していたロケは、
半分しかできなかった。orz


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