江戸探訪シリーズ第三弾、千駄ヶ谷の富士塚の話は、
長々とアップしてきましたが、そろそろお終わりです。
昨日アップしたところまでが富士塚の全貌ですが、
この富士塚と鳩森八幡宮にはもう一つの楽しみがあります。
境内に沢山いる猫です。
多くは人懐っこく、また奇妙な行動をするのが、
この境内の猫の特徴です。
例えば絶妙なバランスで欄干に挟まってみたり、
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竹の柵に手をかけてほげ~としてみたり、
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富士塚に興味がなくても、猫はかわいいので、
近くへ来られたら、寄ることをお勧めします。
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それにしてもたった10~20メートル四方の小さな山の中に、
随分いろいろなものがあったと思います。
古くは三百年近く前から最近のものまで、
また都内の様々な場所から集まって来たものが密集するこの富士塚は、
まさに時空の坩堝でした。
十条や品川などいくつかの富士塚は、現在も存続する講によって、
年に一度の祭事が開かれるところもあるそうですが、
この千駄ヶ谷の富士塚は、烏帽子岩講が消滅してしまった今、
生きた役割は果たしていません。
かつて六月三日の祭日には、
都内各所の講が、代々木駅から白装束の隊列で、
唱名を唱えながら集った時代もあった。
と地元の古老に聞きましたが、それも今ではなく、
鳩森八幡宮が形式程度の祭事を行うだけです。
また、何度か記事にアップしてきたように、
大戦の戦火によって神社にあった資料が全て焼失してしまったため、
由来や経緯等もその多くはベールに包まれています。
更に、講の人たちの神聖な儀式とは別に、
一般の庶民にとっては遊山的な楽しみでもあった富士塚詣で。
この千駄ヶ谷富士も江戸末期などは、
境内に沢山の出店がでて賑わったそうですが、
その面影も今はありません。
思えば富士塚は日本で最初の
バーチャルテーマパークだったんじゃないでしょうか。
さすがに1メートル位の高さの富士塚だと、
登るという行為ができないのでバーチャルになりませんが、
千駄ヶ谷富士位の高さになると、
たとえ低くても、登る感じが体験出来ます。
四方に造られた登山道や下山道を歩きながら、
所々に配置されたモニュメントを拝み、
富士登拝と同じ霊験を体験した後は、
境内の周りのお店でお楽しみ。
といった江戸の人たちの感覚を、
ほんの少し感じられたような気がします。
最後に塚の周りを囲む柵の柱の上に、
偶然乗っかっていた椿です。
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■ 参考資料 ■
『参拝の栞 鳩森八幡神社』鳩森八幡宮
『千駄ヶ谷の歴史』矢島輝 鳩森八幡宮刊(1985)
『鳩森八幡神社 築造富士資料』渋谷区教育委員会(1977)
『千駄ヶ谷昔話』渋谷区教育委員会(1992)
『富士信仰』浅草寺(1999)
『富士と民族』民族宗教史叢書(1987)
『富士信仰と富士塚』三浦家吉 甲文堂刊(1981)
◆ 千駄ヶ谷乃富士塚 ◆
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