蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

「遠い夜明け」  (bon)

2023-06-13 | 日々雑感、散策、旅行

 重い内容の中に、正義と友情を貫く強い意志とスリルに満ちた展開で見ごたえ
のある映画でした。 先週BS3で放送された、1987年に制作・公開されたイギリス
映画です。原題は「Cry Freedom」。

        (映画.COMより)

 1970年代のアパルヘイト下の南アフリカ共和国における実話に基づいた作品で、
原作者ドナルド・ウッズは、本篇の主人公として実名で出ています。

 アパルトヘイト政策下における実態を描いた壮絶な作品で、人種差別とは、
政府から迫害を受けるとはどのような事なのかを教えてくれる作品です。人種
差別は現在でも深く糸を引いているようですが、この映画でも見られる、あまり
にも理不尽な黒人差別が現に行われていたことに今また驚きと怒りに似た心境
に陥れられたのでした。

 時は1975年11月24日の朝、南アフリカ共和国ケープ州クロスロード黒人居留地
に突然、静寂を打ち破って何台もの武装トラックが侵入して簡易な住居を破壊し、
次々と黒人たちを虫けらのように襲う武装警官の集団が迫り、大地は黒人たちの
叫び声とともに血で染まって行くシーンで映画は始まります。
 数時間後のラジオ放送では、この事実は放送されず、ただ平穏無事に公衆衛生
が行なわれたという内容が流されていました。

 白人至上主義のもとに作られた、法や制度に基づく治安当局、警察の横暴な
行為の下に虐げられた黒人の人間としての平等を目指した長い叫びの闘争の事実
が描かれているのです。しかも、それが過去ではなく。まだその状況下にある
時代に製作・公開されていることもすごいことではあります。
 この映画が南アフリカ共和国でも公開されましたが、攻撃的な白人右翼勢力
によって上映劇場が爆破される事件が多発したとあります。

 

 作品の舞台となる時代は、あの、ネルソン・マンデラ大統領は1964年に国家
反逆罪で死刑囚としてまだ獄中で服している時で、やはり黒人解放運動家の主
導者としてスティーヴ・ビコが活動を進めていますが、その人柄と信念に共感
した白人新聞社編集長のドナルド・ウッズの解放に向けた熱い友情を描く壮大な
叙事詩的映画として描かれ、ビコの獄死後、ウッズは現状の実態を世間に公表
するべく体制からの危険を顧みず亡命の道を選ぶのです。

       (映画.COMより)

 映画の後半は、このウッズの逃避行が危険と隣り合わせの中をスリル満点に
描かれ、最後に自由の国に向けて飛び立つプロペラ飛行機を追いながらエンディ
ングを迎えるのです。そしてエンディングの長いテロップには、数々の獄中で
死亡した名前とその年月日が流れるのでした。 その死亡原因はほとんどが、
首吊り自殺、転落、自然死など明らかに捏造されたものなんですね。

 製作・監督はリチャード・アッテンボローで、原作者ウッズもそうですが、
監督としてまだアパルトヘイト政策下の中でよくぞ制作された勇気と力量にも
感動させられました。

 ネルソン・マンデラが釈放され、アパルトヘイト政策が撤廃されて、大統領と
なるのは1994年のことなんですね。体制に反対していると命が無くなる時代と
いうのはそんなに大昔の事ではないのですね。

 のちに南アフリカ国歌になった「神よ、アフリカに祝福を」の合唱がいつまで
もこだますのです。

 

 

 

南アフリカ共和国 国歌「神よ、アフリカに祝福を/南アフリカの呼び声」 日本語訳/National anthem of South Africa

 

 

 

 


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6 コメント

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Unknown (M.S)
2023-06-13 14:15:41
 重いテーマですね。
この問題は永遠に無くならないと思っています。我が国でも、ヘイトでウンザリするときがあります。私自身黒人のレベルが低いとは思っていませんが、世界の国、地域によっては日本人なんて黒人以下と見ている連中がいるとか。
 地球の緯度経度だけの区别ぐらいにならないものでしょうかね。
NHK BSのクールJAPANをよく見るのですが、日本贔屓の番組のせいか見ていて心地よいですね。それと外国の人達の見方、考え方が分かるのも楽しいです。
ほとんど(全員?)の人が日本人と一緒に住んでいるせいでしょうか?こんなところにしか仲良くなる方法は無いのかな。
 オリンピックでメダル自慢をするけれど「ほとんど黒人のおかげじゃないか」と言いたいときがあります。
返信する
これでも良くなって来たのでしょうね (bon)
2023-06-13 15:44:33
M.Sさん、コメントありがとうございます。
古代から振り返ってみてみますと、書きものだけでも相当な歴史があるのですよね。
女性に対する差別もかなり長くあった。人種差別のみならず、体制がその様にさせてしまう・・
未開の地域ではそれはひどかったのでしょうね。時代が進んで、文明が新しく進展し、
それに呼応して文化も発展する・・世の中新しく生まれ変わりながら少しずつ
平等へと進んで行くのでしょうね。
しかし、これと並行してまた新しい差別が生まれてくるかもしれない‥。高度化された差別が・・
返信する
Unknown (星光輝)
2023-06-14 04:57:47
自分も昨夜録画した本映画を鑑賞しました。
最後の亡命シーンのところはハラハラしました。
いまも白人優位は残っており、昨今の女子テニスでも「失格」が大きな話題となりました。

昔もいまも虫けらのように黒人を殺してきた。
ウクライナ侵略戦争もしかり。
日本人も有色人種のために白人は広島、長崎に原爆を落としてきた。
しかし、日本人は差別されても反逆の精神が弱い?

日本でもアイヌや部落民、ハンセン病患者、被爆者など数えきれない差別があった。。

最近、NHKで放映された赤い靴を履いた有吉佐和子のことも感銘を受けた
女性差別のこと
差別を受けたものが立ち上がらなければだめだ、と主張されていた。
返信する
Unknown (tokinosekimori-kitaiwahara)
2023-06-14 09:19:07
いつも図書館で、とても気に
なる本がありました。
とても気になるのですが、手に取る勇気がありませんでした。
ある日、意を決して読みました。
ルワンダ大虐殺を生きた少女の記録でした。
「生かされて」という題名のこの本に、この世で生きることの恐怖を感じましたが、目がはなせませんでした。
映画はそこまで怖くはないでしょうが、あまり、見たくないかもしれません。
いつか見てみたいと思います。
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コメントありがとうございます。 (bon)
2023-06-14 14:17:20
星光輝さん、コメントありがとうございます。
いつも貴ブログを感動して拝見しています。
今回のこのテーマも、昔から現在に至るまで、地域を問わず起こっている問題で、
誰かが、大きな犠牲のもとに立ち上がり長い時間をかけて解決してきた。
それも完全ではなく、一応‥。それでも大きな前進ではあるのですね。
人間のあるところ、すべからく同じ問題を抱えているのでしょうか。
しかし、人間の中には、このような意識が全くないわけではないけれども
広い心に根差したやさしい、素晴らしい人たちの存在もあるのですね。
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改めてネットを見てみました。 (bon)
2023-06-14 17:25:52
tokinosekimori-kitaiwaharaさん、コメントありがとうございます。
「生かされて」は、読んだことはなかったのですが、ネットの解説に『想像を絶する恐怖と苦悩と悲しみを乗り越えたこの若き女性の物語は、
読む人を深い共感と感動の渦に巻き込み、気づきと勇気を与えずにはいない実話である。』
とあり、想像できます。1994年に起きたルワンダの内戦で、100日間で100万人以上の
ジェノサイドが行われた。民族間の争いなんですね。ホント、人間って、信じられないですね。
1994年というと、松本サリン事件があり、翌年地下鉄でもサリン事件が起き大騒ぎでしたが、
その頃のルワンダは大変な事態であったのですね。
この事件の映画『ホテル・ルワンダ』というのも上映されていたそうです。シンドラーのリストのような内容のようです。
まあ、このようにネットで見ているだけでも、心が重く、暗くなります。
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