蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

アジサイの色  (bon)

2024-06-14 | 日々雑感、散策、旅行

 この季節、あちらこちらにアジサイ(紫陽花)がきれいに咲いています。
アジサイの花の色は、土壌の酸性度(pH)によって変わり、一般には土壌が「酸性
ならば青、アルカリ性ならば赤」になるといわれていることはよくご存じのところ
です。しかし、その仕組みや青色色素の化学構造は、アジサイの化学研究が始まって
から100年以上を経て最近ようやく明らかになったのだそうです。

        (ネット画面より)

 これらの研究成果の一部が、最近手元に届いた会報記事に『紫陽花が青色に咲く
しくみ』(吉田久美氏、愛知淑徳大学教授、名古屋大学名誉教授、農学博士)に紹介
されていました。

 色が変化する仕組みのポイントにアルミニュウムイオン(Al³)の存在があるよう
ですが、この仕組みに入る前に、アジサイについて改めておさらいをしてみたいと
思います。会報記事だけでなくネット記事なども広く参考にして概略をまとめてみま
した。

 アジサイは、学名をHydrangea macrophyllaといい、アジサイ科アジサイ属の落葉
低木で原種は日本に自生するガクアジサイだそうです。

       アジサイの種類(実は2000種もあるそうです。)
         (ウエザーニュースより)

 日本のあちこちでみられる多くのアジサイは、ホンアジサイ、ガクアジサイでしょ
うか。 ガクアジサイの周囲に大きく花弁のように見えるのはガク(萼)で、これの
中央部にある小さな花が実はオシベやメシベがある花として機能する「真花」で、
周囲のガクの部分は「装飾花」と呼ばれています。ホンアジサイは、てまり型全体
が装飾花として派手で鑑賞用として好まれています。

 アジサイはもともと日本が原産の花木で、原種は青色ですが、江戸時代に中国から
欧州にもたらされ、そこで育種され再び日本に里帰りした品種で、西洋原産ではない
けれども「西洋アジサイ」と呼び、青色の他 赤や白などがあり、純白の「アナベル」
などは有名ですね。

 ところでこのアジサイの花(萼)の色はどのような仕組みで、青や赤などに変化
するのでしょうか。

 花(萼)の色はアントシアニンという色素によるもので、アジサイにはその一種が
含まれていて、これに補助色素(助色素)とアルミニュウムのイオンが加わると、
青色の花となるのだそうです。

        (academist journalより)

 ここで、アジサイの花が青色でも赤色でも、分離されるこれらの化合物は同じなの
だそうです。「同じ分子がどうやって違う色を発色できるのか?」という謎を解明
するために、試験管内でこれらの化合物の組合せやアルミニウムの量を変えて、さら
にpHを変化させると、多様な色を作り出せることが突き止められたのです。つまり、
これら複数の化合物からなる錯体色素が、さまざまな環境因子の下でアジサイの色を
作り上げているというのですね。 (錯体:分子やイオンが結合したもの)

    助色素の組み合わせとpH変化によるアジサイ色素の変化例
       (academist journalより)

 アントシアニン色素、助色素、アルミニウムが1:1:1で複合化した構造を持つ時が
青色に発色していることがわかったのです。 アルミニュウムイオン(Al³)の量は
すなわち酸性度(pH)によって決まるのです。

 pHが5.5以下の酸性土壌では、土壌中の水酸化アルミニュウムが水に溶けだし、
Al³を根から吸収してガク片まで運んで、そこで花色素のアントシアニンと錯体して
青くなるのです。

       色の分子構造
       (academist journalより)
                  ↑アルミニュウムイオン

 しかし、このAl³は、植物にとっては毒で わずかな量でも根を損傷してしまうそう
ですがアジサイには耐性があるのですね。

 土壌の酸性度の揺らぎによっても、場所的な違いによっても、アジサイの花の色が
変化しやすいことが分かりました。

               

 てまり型アジサイ(ホンアジサイや西洋アジサイなど)は、真花がありませんから、
もっぱら挿し木で増やすことになります。

 
 ところで、日本語で「紫陽花」と書くのは、唐の詩人白居易が別の花、おそらく
ライラックに付けた名を、平安時代の学者源順がこの漢字をあてたことから誤って
広まったといわれているとあります。(あぁ、そうなんですか!)

               

 少し横道にそれますが、最近「青いバラ」もお目にかかることが出来るようになり
ました。もともとバラには青色色素が含まれていないため、青色の植物(例えばペ
チュニアとか)の遺伝子を組み替える必要がありバイオテクノロジー技術によって
「青いバラ」が作られたのですね。
 

 また、小椋佳作詞・曲で布施明が歌った「シクラメンのかほり」が大ヒットした
お陰で、もともと シクラメンには香りは無いようですが、シクラメン生産者や育種家
の間では、香りの出るシクラメンの育成が試みられてきました。 いずれも失敗に
終わりながら、それから20年後の1996年(平成8年)になって、ようやくバイオテク
ノロジーにより、栽培種と芳香を有する野生種との交雑により、念願のシクラメンが
世界で初めて成功した(埼玉県農林総合研究センター園芸支所)とありました。 
 その後、花や株が一般の園芸種のように大きな、いわゆる「芳香シクラメン」が
誕生することとなり、従来の園芸種とは全く違うバラとヒアシンスを合わせたような
香気を持つ栽培用シクラメンが一般に流通するようになったのだそうです。 


 花の世界も、色や香りなどいろんな創作が進められているのですね。

 

 

 

 

Fly Me To The Moon -- Beegie Adair Trio

 

 

 

 


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