このところガソリンの価格が下がって、自動車で活動する人たちにとっては、ありがたいことですね。
個人的なドライブ旅行でも助かりますね。 ガソリンや灯油の価格下落で浮いたお金を他に回すことができる。
“原油安は減税と同様の効果を持つ” といわれるゆえんですね。
しかしながら、消費増税後の需要の弱さと原油価格の大幅な下落によって、これまで着実に進んできた
デフレマインドの転換が、予定通り進まないリスクがあるとして、日銀は先に追加緩和に踏み切った。つまり、
原油安のお蔭で、物価上昇の計画が予定通り進まなくなった。 と問題視?する向きもあります。
ガソリン価格の推移
(e燃費より)
個人的な感覚からすれば、物価上昇が抑えられていることは、大変ありがたいことです。 消費増税に加えて
円安効果によって、輸入価格が上昇という円安デメリットを、この原油安が軽減してくれる方向に作用してくれる
からです。 “アベノミクスに原油安という「神風」が吹いた” などとの表現も見られるほどです。
少し前のネット記事ですが、おさらいをしてみますと、「アベノミクスの最大の副作用と言えば、輸入物価の
上昇だろう。 80円割れの水準から119円に進行した円安は、輸出企業にはプラスだったが、食料品など
輸入品に原料の大部分を頼っている製品の多くは値上げされ、8%への消費増税も加わって、家計を直撃した。
足元で進む原油安は、この円安デメリットを軽減してくれる効果がある。円安と原油安、トータルでプラス」と。
(e燃費ページより)
話が逸れますが、アベノミクス(3本の矢)は、確かに国の経済を活性化し、好循環をもたらすための思い切った
政策であると認識しています。 まだその途上にあるとされていますが、株価上昇は、実績として認められ、
円安効果で大企業などの輸出企業が好調であり、賃金がアップした企業も多く、雇用統計も改善されてきている
ようで、所得が増えて消費が増える・・ 好循環がまさしく経済活性化の理想ですが、反面定年退職者や
零細個人企業、株式投資もやっていない・・そのような弱者にとっては、これらの風は吹いてこず、マクロ循環の
輪に入っていないと思うのですね。 これらの弱者は、好循環が効果を上げるまでは、じっと耐え忍ぶことに
なるのでしょうか。
昨日の、国会での代表質問で、岡田代表の指摘する「格差」の一因がこのあたりにあるのかとも思ったりしました。
例によって、最近ネット配信いただいた中に、掲題の “原油安” についての原因などの記事がありましたので、いまさら・・という人もおられると思いますが、以下に再掲させていただきました。
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週刊エコノミスト(http://www.weekly-economist.com/) 2015年2月3日号 p24-45
「とことん分かる原油安」
小山 堅(日本エネルギー経済研究所首席研究員)/
小林 良和(日本エネルギー経済研究所研究主幹)/
須藤 繁(帝京平成大学教授)他
【要旨】原油価格の下落が続いている。先進国、新興国のビジネスや国民生活、文明を支えるといっても
過言ではない原油の価格の大幅な変動は、世界の金融・経済のみならず、国際政治における勢力図、
エネルギー政策などにも影響を与える。本ダイジェストでは、原油をめぐる基礎知識をおさらいしつつ、
原油安の要因・背景や、それによって世界はどう変わるのかを検証・展望する特集「とことん分かる原油安」から、
三つの記事を取り上げる。産油国の“盟主”であるサウジアラビアが原油安を容認する意図、枯渇が叫ばれてきた
原油の埋蔵量が実は“増えている”理由、原油輸入における日本の中東依存が相変わらず高いことのからくり、
といったテーマについてそれぞれ分かりやすく解説している。
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●サウジの力は弱まった?(小山 堅)
今回の原油価格急落の基本的な背景は、原油を巡る需給の緩和である。米国で非在来型のシェールオイル
開発が進んだ一方、中国をはじめとする新興国需要は伸び悩んでいる。そして、昨年11月の石油輸出国機構
(OPEC)総会で、サウジアラビア主導で減産見送りを決定したことで、価格下落に拍車がかかった。
急落発生前、原油価格の高値が3年半にわたって続いている間、多くの市場関係者は、仮に需給緩和して
価格下落圧力が発生する場合、OPECあるいはサウジアラビアが生産調整を実施し、価格を防衛するだろう、
と読んでいた。それが一転、OPEC総会で減産が見送られたため、まさに市場の「底」が抜けて急落した。
BP統計(14年版)によれば、サウジアラピアの生産量自体はトップとはいえ、2位のロシアや3位の米国と
大差はない。最も異なるのは、その余剰生産能力にある。米国やロシアなどの非OPEC諸国は基本的に
余剰生産能力を持たない(フル生産)。一方、余剰生産能力を持つOPECの中でも、圧倒的に大きな能力を
保有しているのがサウジアラビアなのである。サウジアラビアは余剰能力を活用すれば、いつでも原油を
増産できる体制にある。需給が逼迫する緊急事態においては増産によって需給を安定化させ、また時には
意図的に需給を引き締めたり、あるいは緩和したりすることで、消費国・産油国の双方に圧力を加えることもできる。
あえてその余剰能力を戦略的に保持し、管理することで、サウジアラビアは国際石油市場において稀有の
パワーを保持し続けている。
それではなぜ今回、サウジアラビアは価格下落を容認したのか。過去3年半の間、原油の高価格が高コストの
石油生産を増加させ、需給を軟化させる要因となっていた。高コストの石油生産とは、米シェールオイルばかりでなく、
カナダのオイルサンドなども含まれる。
減産見送りについてサウジアラビアのスタンスは、需給緩和で価格が下落すれば、一部の米シェールオイル
など高コストの石油生産が減産に転じ、その結果として需給がバランスする、という考え方である。
それには一定の時間がかかる。米シェールオイルも、近年の技術進歩で生産コストは著しく低減している。
市場関係者の多くは、15年前半くらいは現状の1バレル=40~50ドル台の低価格が続いても、シェールオイル
生産が顕著に低迷・減産するとは考えにくく、低油価の影響が出てくるのは早くて1年程度と見ている。
それでもサウジアラビアが低価格を容認するのは、時間がかかっても低価格で高コスト生産の伸びを抑えることが、
長期的には同国の利益にかなうという周到な計算がある。
●埋蔵量とは?(小林 良和)
世界の石油の埋蔵量は近年、目に見えて増加している。英BP社の発表する統計によると、2013年末時点での
世界の石油埋蔵量はあと53年分もあるという。しかし、最近それほどまでの巨大油田が発見されたというニュースを
耳にした記憶はない。どうしてここまで世界の埋蔵量が増えているのであろうか。
実は、「埋蔵量」という言葉そのものの定義に深くかかわっている。まず、地下の油田にある石油はすべて
生産することはできない。比重が重く粘り気のある石油(重質油)の油田の場合には、生産する井戸まで地中を
うまく通ることができないので、1割以下しか生産できないような油田もある。こうした性質を持つ油田に対し、
経済的に見合う方法でどれだけの石油が生産できるかという量を推定したのが埋蔵量である。
したがって、埋蔵量とは地下に眠る資源量のうち、ほんの一部分を指しているに過ぎない。原油価格が上昇して
高コストでも生産できるようになれば、この確認埋蔵量の数字は膨らんでいく。また、より効率的な生産技術が
開発されれば、さらにその埋蔵量の数字も大きくなる。最近の急速な埋蔵量の増加は、すでに見つかっている
油田において、新しい開発技術の採用などさまざまな条件が変化したために、今まで見込んでいたよりも多くの
石油を回収できるようになった側面の方が大きい。
また、近年は米国でシェールオイルの開発が進んでいる。通常の油田が頁岩(けつがん)層より浅い砂岩や
炭酸塩岩の貯留層に集積した原油を採掘する「在来型」なのに対し、シェールオイルはさらに深い頁岩層から
採掘するため「非在来型」と呼ばれる。シェールオイルの存在は古くから知られていたが、1998年に水圧破砕法と
呼ばれる技術の確立によって生産が可能になった。
地球上には、こうしたシェールオイルをはじめ、さまざまな石油資源が存在している。開発コストは高いものの、
物理的な石油資源自体はこれだけあるのだから、今後の技術開発の進展に伴って開発コストが下がれば、
当面石油資源が枯渇する心配もいらなくなる。
●日本の中東依存が高い理由(須藤 繁)
日本は原油の大半を中東から輸入している。資源エネルギー庁によれば、2013年度の原油輸入のうち
83.6%を中東から輸入しており、中でもサウジアラビアが31.5%と最も高い。裏を返せば、中東にとっても
日本をはじめアジアは主要な輸出先でもあり、中東から見れば輸出石油の72%がアジア市場に向かっている。
日本の石油輸入の中東依存がなぜ大きいのかといえば、まず地理的な理由が挙げられる。輸送距離という
経済合理性からも最も適しているのが中東なのである。日本を含むアジア側にとっても、中東は最も近くて
安定した調達先である。ロシアは国としては近いように見えるが、主要油田は西シベリアであり太平洋岸までは
長距離パイプライン輸送が必要など、輸出能力に制約がある。
二つ目の理由が、中東産原油の質にある。原油は精製の過程で、沸点の違いによって最も沸点の低いもの
から石油ガス、ガソリン、灯油、軽油、重油という「留分」に分けられる。アブダビのマーバン原油やリビア、
アルジェリアなど北アフリカの原油は軽質原油で、ガソリンなどの軽質留分を多く含んでいる。それに対し、
クウェート原油やメキシコのマヤ原油は重質で重油分も多く、硫黄分も高い。
日本で石油製品需要が増加した高度成長期の昭和30年代(55~65年)。その需要の中心となっていたのが、
発電用、鉄鋼用の重油である。そのため、日本の石油会社は重油得率(重油分の割合)の高い中東原油を歓迎した。
中でも割安だったのがクウェート原油である。
しかし、その後、日本では乗用車の普及などに伴い、白油(ガソリン・灯油・軽油)の需要が増加。重厚長大な
産業構造が軽薄短小な産業構造に変われば、重油需要は減って白油化が進行する。
石油の精製プラントの建設には多額の費用がかかり、精製する原油の質によっても異なる設備が必要になる。
日本の石油会社がこうした需要構造の変化に対応できたのは、分解反応によって重質留分から軽質油を取り出す
「分解装置」が導入されたからである。
製油所が新設、拡張された高度成長期の日本では、イランとクウェートの重質油を想定した製油所が多かった。
日本の石油会社は精製ノウハウの蓄積を背景に、現在でも依然として中東原油を選好する傾向がある。
つまり、日本の中東依存度か高い三つ目の理由は、製油所の精製設備が伝統的に中東原油に対応していたことである。
コメント: 原油輸入の過度の中東依存が危険であることに異論のある日本人は少ないのではないだろうか。
本ダイジェストで三つめに取り上げた論考で依存の理由が示されているのであれば、シーレーンの確保には
気を配りつつも、一つひとつを解決し依存度を下げる努力はなされるべきだろう。エネルギーや環境など、
人類や文明の存立にかかわる問題に関しては、できるかぎり選択肢を増やし、リスクを分散することを基本にして
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