もう15年も前から日本は格差社会に入っているという。
格差には、結果の格差と機会の格差があり、前者は、所得・資産の格差とみなせるし、後者は、
機会たとえば教育、採用、昇進などが平等に与えられているかどうかに注目した格差であるとみなされます。
先のブログ「Thomas Piketty 21世紀の資本 (2015.3.9 mak)」 にもありますように、
フランスの経済学者ピケティは、資本主義国 約20か国の資産と所得の分配を調査して、高資産保有者
などの富裕層がますます富裕度を増しているという現状を示しました。
基本的に、資本(資産)集中が進んだ結果であるとし、資本主義に内在する自然のメカニズムとして、
富裕層はますます富裕度を高める傾向があることを理論と実証で示したのです。
ところで、日本の格差は、高い貧困率で象徴されています。
図に示すように、日本の相対的貧困率の推移、他の先進国における貧困率比較から、日本は非常に
高い貧困率の国であるという。
相対的貧困率推移
貧困率世界比較
また、貧困には、絶対的貧困と相対的貧困の二つの定義があり、前者は、人間が食べて行けない所得
(貧困線)以下の所得にいる人であり、後者は、所得分配上で所得の最も高い人から最も低い人を順に
並べて、その中位にいる人の所得のある一定%(OECDでは50%)以下の所得しかない人のことだ
そうです。日本では、貧困線がまだ提案されていないので、絶対的貧困の計測は困難であるという。
なぜ貧困者が多いのかについては、①失業率が高くなった、②非正規雇用労働者が多くなった、
③最低賃金が低い、④生活保護制度がうまく機能していない、⑤年金・医療などの社会保障制度が
ヨーロッパに比して劣っている、などが挙げられています。
一方機会の格差はどうかといえば、公共部門の教育費支出が、対GDPに占める比率が先進国中で
最低水準なので、高所得家庭の子弟は高い教育を受けることが可能ですが、低所得家庭の子弟は高い
教育を受けることが出来ない。つまり、教育の機会が不平等であるのです。 また、他にも、女性への
機会均等の不平等や地域間での期会不平等などが挙げられます。
Nippon.com の記事によれば、「貧困率は、低所得者の割合を示す指標であり、厚生労働省が
2014年7月にまとめた「国民生活基礎調査」によると、等価可処分所得の中央値の半分の額に満たない
世帯の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%だった。これらの世帯で暮らす18歳未満の子どもを
対象にした「子どもの貧困率」も16.3%となり、ともに過去最悪を更新した。
これは、日本人の約6人に1人が相対的な貧困層に分類されることを意味する。この調査で生活意識が
「苦しい」とした世帯は59.9%だった。貧困率が過去最悪を更新したのは、長引くデフレ経済下で
子育て世帯の所得が減少したことや、母子世帯が増加する中で働く母親の多くが給与水準の低い
非正規雇用であることも影響した、と分析されている。」
子どもの貧困率が過去最悪になったのを受けて、政府は昨年8月、「子どもの貧困対策大綱」を
策定し、親から子への貧困の連鎖を防ぐため、教育費の負担軽減や親の就労支援など進めているとの
ことですが、先日のNHKテレビ“ニュース深読み”では、支援を受ける条件が区々で、なかなか
うまく手が届いていないようでした。
話を戻して、格差社会を論じる視点に、高所得・高資産保有者の多いことに着目する場合と、
貧困者の多いことに着目した場合があるが、どちらの視点が“格差社会の問題”であるかについて、
橘木俊詔(たちばなき としあき)氏(京都大学名誉教授)によれば、「先のピケティの着目は前者で
あり、私は後者が格差社会の象徴である」と言明されていますが、確かにそのように思います。
つまり、高所得者が多いと、資源使い過ぎをもたらしたり、人間社会のモラルからも好ましくない、人の嫉妬を煽るなどの弊害がりますが、低所得者、貧困者が多いと、人の生きて行く権利が
脅かされる、反逆的になり犯罪者が増加する、消費が少ないのでマクロ経済から好ましくない、
そして、低所得者の人数は多いので消費への貢献を左右する・・ これらから、貧困率が高いことが
格差社会として、やはり問題が大きいと考えられるのです。
政府の血の通った政策が切に望まれます。
先ごろ、川崎市で“簡易宿泊所”2棟が全焼し5人が焼死する事件がありましたが、報道によると
この地域には他にも多くの同様宿泊所があり、30年もの長い期間、生活保護だけで過ごしている人たちが
いるとのことで、今なお、このような状態が全国にはたくさんあるのだろうと改めて思い知らされたの
でした。