庄司利音の本棚

庄司利音の作品集
Shoji Rion 詩と物語とイラストと、そして朗読

詩「ぼくは殺し屋」

2017-01-15 14:10:50 | 
詩「 ぼくは殺し屋」


出来損ないの紙飛行機のように・・・

ぼくの視線は綿のシーツを低空飛行で削ぎとって

今日も 黄色くなった壁の隅に落下する


斜めに曲がったピノキオの首

白い手首は少女のようで

そうして、ぼくの脚は動かない

ばかばかしいほど 動かない


誰かの声は いつもぼくの頭の上を通過して

遠くのほうまで行くようだけれど

ぼくの居場所は 変わらない

片身ほども 変わらない


網戸の向こうにカマキリがいる



ほうら・・

ぼくは両手の指でトンネルをつくる

時空を溶かすタイムトンネル

ぼくは片目をつむってほくそ笑む

カマキリに狙いを定め

あの三角の頭をつぶすんだ!

いびつなトンネルの真ん中に 首をかしげたカマキリがいる

さてと・・

ぼくは ゆっくり トンネルを閉じていく

ぼくは、ぼくを 握りながら

ぼくは、ぼくを 締め付ける

カマキリだけが、ぎしぎし、ぎしぎし、粉々になる

カマキリだけが

ぼくのトンネルから死んでゆく


ぼくはカマキリ殺しの凶悪犯だ!

ぼくはカマキリ殺しの凶悪犯だ!

これが証拠の傷痕だ!

この手の平の青い汗は

カマキリが もがいたあとの傷跡だ!



ひろげた片手は ひらひら 落ちる・・・

骨も肉も軽やかに

ぼくの片手は ひらひら 落ちる

長方形の白い海に横たわる

ぼくのすべての

一部 として



カマキリは もういない

あいつは 殺されたことも知らぬまま

網戸の向こうの夏空へ

露草色の十字架となって

三百六十度の自由を、飛び立った・・・




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