りおんの本棚 Shoji Rion

庄司利音の作品集 詩とイラストと朗読ライブ

詩 「アクリルの街」

2017-02-28 11:46:38 | 
アクリルの街



すすきは、
生温くなってきた風に 急き立てられるまでもなく
そろそろ自分の居場所がないことを、それは それで わかっていたが
それでも まだ しばらくは、
砂利コロだらけの この線路の脇に 居なければならないのは
どうしようにも、どうにもならない有り様だった

不透明な液が混ざって 濁った朝が プツプツと泡ぶくを立て始めると
ズラズラとくっ付いた始発電車が
永遠の半分辺りまで 連結を繰り返して
起き抜けのぐずりはじめた街を
一巻き、ニ巻き、
気だるそうに縛り始める

今日は どこの誰を どこのどこまで 運ぶのだろう…
すすきには 関係がない

いずれにしても、どうせ、またカラッポになる
カラッポなって 繰り返して またカラッポになる

すすきは 咳き込むように 微笑んだ

昨日の今頃もそうであったが、
今日も同じように、
すすきは、
かったるそうに ため息をつく

るーや、るーや

るーやるーや

前のめりに立ったまま、
どうにも、どうしようもなく

るーや、るーや
かったるそうに

そうして すすきは
自分の痩せこけた穂を、風によりかけて
無駄死にするであろう自分の分身を蒔きはじめた

あっちへ お行き・・・
こっちも お行き・・・

るーや、るーや
かったるそうな斜めの街に

かったるそうな斜めの街に
るーや、るーや

黙りこくった綿を蒔く
黙りこくった綿を蒔く

落下地点は…
るーや、るーやら
アクリルの街






















詩 「 呼吸の丘 」

2017-02-16 15:32:01 | 
         呼吸の丘



千切れた水色の花びらの余命を吹き込んで
西風は いちじくの香りを運び
仰向けに横たわる ふたつの なだらかな丘に降り落ちた・・・

私の残りかすが埋めれたこの丘に
固い記憶は黙り通した

削げ落ちた頬の隙間から うすく目をあけて見下ろせば
ふたつの丘は 南と北をいざなって、たおやかな息に戯れている


砂金のような輝きはなく

ビードロのような夢もなく

赤肉にニクルム線を巻き付けて

瞳の裏側を落雷のように張りつめて

時々、見えない遠くを見ようとした・・・


私の残りかすは 私の一部

千切れた水色の花びらの余命を吹き込んで
西風はいちじくの香りを運び
仰向けに横たわる ふたつのなだらかな丘に降り落ちた・・・

私が埋めた私の一部を
慰めず叱らずに ただ そっと両腕に抱きしめよう

私の一部が 私の胎内にとどまるように
レースのように淡く織られた呼吸にも 魂が安息の糸をかがれるように



さらさらとした涙が 扉をあけた鼓膜の道にすすられていく

聞こえなかった涙の音を 今は聞くことができるのならば
青白い夕暮れも いつかは美しかったと思えるように

また 途方もない時間(とき)が流れるのなら
私の一部は
私のままに・・・

詩 「ウサギ誕生」

2017-02-10 15:21:35 | 
  ウサギ誕生



こんど生まれ変わるなら
なるべく 短い寿命の生きものがいい

人間を遠くに眺め
無抵抗に、
たった一日、生きるために生き抜いて
隅にまるまるウサギのように
なんの力も無いものに
生まれてみようと
思っている

詩 「ほんわとね」

2017-02-05 13:37:15 | 
ほんわとね


口からね
ほんわとね
やさしい 泡が出るんだよ
うすもも色の ほっぺのような
まぁるい 泡が出るんだよ

とげとげは いけないよ
刺さると とっても痛いもの

ほらね
君のだって おんなじだよ
ぼくの泡と おんなじだよ
ずうっと昔は おんなじ色をしていたんだ
まぁるいまぁるい 泡だったんだよ
思い出してみてごらん

口からね
ほんわとね
やさしい泡が出るんだよ
うすもも色の ほっぺのような
まぁるい泡が出るんだよ

ぼくが消えても ぼくの泡は消えないよ
ぼくの泡が 君の心にとどまるように
よぉく お願いしといたから

ぼくが消えたら そしたらね
君の口から
ほんわとね
やさしい泡が出るんだよ
ちゃんと約束したからね