りおんの本棚 Shoji Rion

庄司利音の作品集 詩とイラストと朗読ライブ

詩 「金魚鉢落ちた」

2017-05-19 12:50:58 | 



金魚鉢 

落ちた

赤い金魚も一緒に



トラ猫

逃げた

午後3時




アリンコ 見てた

たった一匹

それ見てた



赤い金魚 

床の上で跳ねてる

赤い金魚 

口をパクパク 

目玉をグルグル




アリンコ 

床の上

ゆっくり 歩いて行く

歩いて過ぎていく



赤い金魚 

言った

「落ちて初めてお前に会った」



アリンコ

言った


「また、いつか、別のどこかで ごきげんよう」


赤い金魚 

言った


「またいつか別のどこかで ごきげんよう」




金魚鉢 

落ちた

赤い金魚も一緒に


トラ猫

逃げた

午後3時







詩 「 夏 」

2017-05-13 12:47:18 | 





なぜ、今が、夏なのだろう


高窓から差し込む西陽の刃先は

私の左腕を 肘より深く切り落としていった・・・


私から分離したその腕が

風呂の残り湯に

豆腐のように沈んでいく


きらきらと

ゆらゆらと

生ぬるく

感覚が

消えていく



なぜ、今が、夏なのだろう



たくし上げたスカートのひだの奥で

秋を過ぎた女は 午睡したまま

夢の中で 空騒ぎを繰り返している



人肌を過ぎて冷めはじめたバスタブの水面に

不確実な感情が

一筋の髪のように浮かんでいる




カエルの卵は 億の目玉で この夏を見た!



知ろうともしなかった

夏の儚さ


なぜ、今が、夏なのだろう


諦めと執着が 排水溝へひきずられ

それでもやはり、

今は夏なのだ

今は夏

その言葉を反復しながら

あの夏が

渦を巻いて 消えていく



水垢の付いた光景は

擦りガラスにオレンジ色の影を残し

ピエロの涙のように笑っている



欠けたタイルがひんやりと光って

その眩しさに

時計の針は たじろいでいる



さぁ、バスタブに栓をして

蛇口から新しい水を出そう



流れ落ちる本当の時間


今は夏・・・


どの夏も

あの夏も

過ぎ去ってなお、今は夏・・・


今は夏・・・


今は夏・・・



詩 「 ぼくたち 」

2017-05-05 15:39:05 | 
ぼくたち



ぼくの街に ぼくは いる

今日一日をまじめに生きた 大勢の ぼく

遠くの視界にブラインドを下ろし ぼくと同じ明日へ行くぼくたち

ぼくの後ろに

ぼくの声が隠れている

ぼくの街に

ぼくの道が隠れている

捜せない・・・ぼく

諦めていく・・・ぼく

けれど捨て切れない・・・

ぼくとぼくたち

ぼくの街に ぼくはいる

大勢のぼくと ぼくはいる

ぼくのなかの ぼくだけのぼく

大勢のぼくの

独りきりのぼくたち

ぼくの街に

ぼくは いる