庄司利音の本棚

庄司利音の作品集
Shoji Rion 詩と物語とイラストと、そして朗読

詩  「音楽会」

2016-07-23 15:33:31 | 
「音楽会」




土星の輪っかが ため息ついて

星座の鐘の音階が 散り散り 地球の海に舞い落ちて

紫苑色のベールの下に コントラバスの眠りは沈み

ひっそり漂う 夢の舟

ケルプの帯にくるまった 海の鼓動が集まって

うずら模様の波の羽根、

青いインクは ほどけたセーターの毛糸のように

するする流れて 夜空の天球に弦を引く


遠く遠く きらきら光る五線紙に

星は ミツバチ色にざわめいて

つたえたかった言葉をさがし

誰かのために 心を溶かし

会えない人の 記憶を奏でる


漕ぎ手を無くした舟の舳先は

星と波の輪唱に そっと 耳を傾けて

ことん、ことんと 脈打ちながら

ためらい、ためらい 揺れるまま

そのうち 海の肌には 涼しい風が吹きはじめ

色紙の鎖の帯で着飾った 思い出たちの行列が

しゃんしゃん両手を打つあとを

ひと波、ひと波、かがり縫い

たどって行けることでしょう・・・


琥珀色のゼリーが だんだん冷めていくように

今宵の音楽会も もうじき 終わり


連雀の紅い拍手が群れをなし

花火を咲かせて飛び立ちました


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