『ふりかえった O・SHI・RI』
『シティーハンター』最大の転機(ターニングポイント)。
実際、TVアニメ版第2期では、このエピソードが最終回となる。
アメリカから、マリィーという風が吹き込む事で、獠と香の緩やかな時間が終わる。
(念のため注記するが「マリィー」である。注意)
今回の事件では、「冴羽獠」というキャラクターの前提が、端的に言って瓦解する。
「経歴が明かされない」という消極的伏線が回収され、「経歴を一切持っていない」という、ある種明確な過去が暴かれる。
結果、ファン必読だろう挿話、「3.26」イベントが生まれる。
ところで、私は「シティーハンターは『憑き物落とし』の物語である」と繰り返し述べている。
主人公たる獠は、今までずっと依頼人たちを救ってきた。
今回もマリィーの抱える問題を解決している。
しかし今回、本当の意味でマリィーを救ったのは、むしろ香である。
香は「弱い普通の人間」だからこそ出来る事に全力で挑み、困難から脱却した。
ここぞという場面での、海坊主や冴子らの活躍も見逃せない。
キャラ全員が協力し合った事で、大団円に届いたのだ。
かくて、『シティーハンター』の構造はここから逆転する。
成長した香によって、獠自身の“憑き物”が落とされる段階に入る。
彼は、(あくまで比喩的表現だが)「大人の男」を一旦やめる。
香と並ぶ「少年」として、生まれ直し、生き直す事となる。
フェーズ4「エロス」終了。フェーズ5へ。
(※エロス。情熱的恋愛。いわゆる恋愛感情)
それでは。また次回。