好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。※かつては名探偵コナンと逆転裁判、今はシティーハンターとADV全般の話題が主。

『尚も生きる。手を取りて』第46話「底知れない相手」

2019-12-11 | ゲームブック二次創作

当たり前のように問われ、反射的に答えようとし、踏みとどまった。
俺は手近な木の枝を拾い、土に文字を書いて示した。

「ガレーキープか。
ザラダン・マーの行く所、残されるのは死と荒廃のみだ。
いっそあの方舟が落ちてくれれば、ザラダンは、あの血に飢えた
軍勢ともども全滅するのだが。
いや、起こり得ない事を言っても仕方ないな。
あの空飛ぶ要塞を、誰かが壊さねばならんのだ。
あの方舟に乗り込む方法ならば知っている。
風が弱まると、ガレーキープはここから西に少し行った地点に着陸する。
そこに行けば乗り込む事が出来る。
君はガレーキープを滅ぼそうとしているんだろう?
奴が天から墜ちて、連中がいなくなってくれればどんなに嬉しい事か。
君の幸運を祈るよ」

見上げたもんだ。よくも、これほど自然に嘘を並べ立てるとは。
俺はおもむろに、例のドリー三姉妹から渡された指輪をつきつけた。
途端、エルフの表情が動いた。
与しやすそうだった態度は消え失せ、眼光は炯々としたそれに変わった。

「ほう……。彼女たちから『真実の指輪』を持たされたか。
ならば私も、礼を尽くさなければならんようだな」

声の調子も、一段低くなっている。
本番は、これからだった。


『尚も生きる。手を取りて』第45話「エルフ救出」

2019-12-07 | ゲームブック二次創作

スムーズに降りるなら今しかない。
俺は、オフィディオタウルスから飛び降りた。
辺りを探る間に、オフィディオタウルスは森の中へ走り去っていった。

俺は茂みに身を潜めながら、様子を窺った。
と、誰かの戦っている音が聞こえてきた。
歩を進めれば、開けた場所で人影が三人、もみ合っている。

二人は山賊。それなりに鍛えた体格をし、革の装備に、
腰のベルトには投げナイフが数本。
その二人が、長い白髪をしたエルフの男に襲いかかっていた。
エルフは、滑らかなローブをまとい、武器は――持っていない。
体術で捌いているが、劣性なのは見て取れた。
現に今、腹に攻撃を受け、身を折った。

俺は時機を計って、茂みから飛び出した。
伏兵の登場に、山賊たちが振り向く。
俺は、倒れたエルフを背後に置いて、山賊たちを爪で追い払った。
取りあえず、無力化できれば構わない。逃げるなら逃げればいい。

戦闘を終えて、俺はエルフに向き直った。
身を起こしたエルフは安堵した様子で、俺に話しかけた。

「ああ、ありがとう。私はホワイトリーフと言う。イーセル・メインの
村に住んでいる。助けてくれた礼に、この森について
教えてあげよう。何が聞きたい?」


『尚も生きる。手を取りて』第44話「乗馬の延長」

2019-12-04 | ゲームブック二次創作

俺は生き物のそばまで、そっと近寄った。
警戒心は低いかもしれない。幸運に恵まれた。

頭上の小枝で、小鳥がまだ鳴いていた。
俺は、いったん瞑目してから、枝の小鳥を捕らえ、握りしめた。
小鳥は俺の手の中でもがいた後、動かなくなった。

小鳥が鳴き止んだ事に、オフィディオタウルスはビクッと反応し、
そこで俺の存在を知ったようだった。
俺は、慎重に小鳥を差し出した。
オフィディオタウルスの長い舌が、小鳥を素早く奪い取った。
俺は、オフィディオタウルスの首を繰り返し撫でさすった。
頃合いを見て、身を翻し、その背中に騎乗した。

ここから先は、慣れた乗り物――馬と同じだ。
暴れるオフィディオタウルスをなだめ、従わせる。
もう一度だけ水を飲ませてやってから、首をつかみ、足で腹を蹴った。

オフィディオタウルスは、どんどん速度を上げていく。
俺は首にしがみつき、終始バランスを取り続けた。
鞍(くら)も鐙(あぶみ)も手綱もない、我ながら滅茶苦茶な乗馬だが、
それでも形になるもんだ。

だが、俺は猛獣使いじゃない。
いきなり藪に飛び込むわ、次から次へと小枝が当たるわ、
いくら何でもこれ以上乗り続けるのは無理だった。
そう思った矢先、オフィディオタウルスが急に止まった。


『尚も生きる。手を取りて』第43話「オフディオタウルス発見」

2019-11-30 | ゲームブック二次創作

今度こそ、本当に目を覚ました。
荒野の大木の下で寝ていたはずなのに、俺がいるのは、薄暗い森の中だった。
愛らしい小鳥の鳴き声が、頭上から聞こえてくる。
調べると、すぐ近くに小川が流れていた。
冷たい水で顔を洗ってから、旅に戻った。

歩きやすい道を選ぶため、川の流れに沿って、下流の方向へ移った。
それでも、滝の地点では切り立った斜面を下りたり、
あるいは密生している茂みをかき分けたりという苦労はあったが。

川は湖に行き当たった。
水面から微かに湯気と、独特な匂いが感じられる。
厳密には、湖というより、これは温泉というやつだ。
浸かれば傷を癒す効果がある。

向こう側の岸辺に、生き物が見えた。
温泉の水、というか、お湯?を美味そうに飲んでいる四足歩行。
長い足には蹄(ひづめ)があり、身体の表面は固そうな鱗に覆われている。
尾の先は、棘の付いたボールのようになっている。
頭は蛇に似ていて、そのじつ飲んでいる舌は随分と長い。
俺が見ている事には、まだ気づいていないようだ。

(あれは、何という生き物ですか?)
(説明は難しいが、とにかくアレがオフィディオタウルスだ。
 さて、ちょいと協力してもらいましょうかね……アレに)


『尚も生きる。手を取りて』第42話「打ち明けられる事実」

2019-11-27 | ゲームブック二次創作

「スカル藻だわ! 任務達成ね!」
「これも神の思し召しってやつだね! さあ、それをちょうだい。
 あなたにとって大事な話をしてあげるから」
「おめでとう、あなたは試験に合格よ」

三人を代表して、内の一人が語り始めた。
よくよく見れば、彼女たちのほんの少しずつの違いを感じ取れた。

「もう知ってると思うけれど。あなたはザラダン・マーが創った魔物。
ある意味では息子にあたる存在。ザラダンが私たちの息子であるように。
 だけど、ザラダンは滅ぼされなければならない。
彼は、この世界のバランスを乱そうとしているの。
 本来なら、これは私たちドリーの者の役目。
ただ、彼の力は私たちを既に超えている。
彼を倒せるのはあなたしかいない。
彼を倒せたその時、あなたの真実が明かされるわ。
 これ以上、私たちからは無理に話さない。自分で知る事が大切なの」

続く言葉を、二人目が引き取って話し出した。

「ザラダンに会うなら、よじれ樫の森にいる白髪のエルフ、
ダーガ・ウィールズタングを探して。
 ダーガなら『ガレーキープ』に入るための情報を知ってるわ。
ザラダンの住む、空飛ぶ方舟に。
 でもダーガの言葉は気をつけてね。彼と話す時には、
この『真実の指輪』を見せてからにするのよ」

またも大きな石の入った指輪を渡された。
何でこの世界の偉い奴らは、こういう曰くつきの道具を使いたがるのか。
最後、三人目が陽気に言った。

「ダーガの近くには、オフィディオタウルスが居るはずだよ。
あの生き物がダーガの所へ導いてくれるから。
 このスカル藻は、あなたの幸運を祈る術に使わせてもらうからね」


『尚も生きる。手を取りて』第41話「夢枕での再会」

2019-11-24 | ゲームブック二次創作

「ともあれ、用事は済んだ。あの三姉妹の所へ戻ろう」
(ナオが喋ったら、あの魔女たちも驚きますね)
「いや。今はまだこの件は隠しておく。俺は基本的には喋らない。
念のためだ」(心の声で話すのも出来るんだろ?)
(ええ、出来ますよ。用心したいのなら、わたしも協力します)

歩く内に陽が沈み、また月が上り始めた。
夜空に満月が映えている。
道の脇に大きな木を見つけたため、その根元を今晩の寝床に仕立てた。
それで眠りに落ちた先に、例の三姉妹の魔女がいた。
どうやら彼女たちは、ひとの夢枕にこうやって現れるのが趣味のようだ。

「それにしても見事に成長したわね、この魔物。
 皆でドリーの村で研究したいわ」
「それは彼の実力を確かめてからよ。もしもスカル藻の根を
持ってこられていたら、約束は守らないと」
「そうだよ、早く根をもらわないと!」

相変わらずお三方は、ユニゾンのように声を揃えて、
俺に呼びかけていた。
俺は、そこで目を覚ました。
吹く風が、頭上の木の枝をざわざわと鳴らしていた。

三姉妹が、どれも同じように期待に満ちた顔で、起きた俺を見つめていた。
俺が荷物袋から出した品に、三姉妹は快哉を上げた。


『尚も生きる。手を取りて』第40話「友を悼む」

2019-11-16 | ゲームブック二次創作

……カエル男たちのいる沼から充分に離れたと思われる辺りで、
足を止めた。
グロッグの荷物袋を改めると、入っていたのは木箱が一つ。
フタは、どうやっても開かなかった。
それから確かコレは、幸運の薬の入った瓶。
縁起物の一つだが、冒険者には役に立つ。

その後は、草原に座り込んで、長くぼうっとしていた。
空の色も、風の匂いも、何一つ変わっていない。
にもかかわらず、全てが違っているように感じる理由は、一つ。

(ナオ……大丈夫ですか?)
「ああ。俺なら、もう平気だ」
(え!?)
「どうした? すっとんきょうな反応して」
(それは驚きますよ。だってナオ、あなた喋れるんですか?)
「さっきから、な。っていうより、俺は元々こうだったんだろう。
 他の知識と同じように、声に出して喋る方法も、ずっと忘れてたんだ」
(そうなのですか。「俺」と言っているのも、同じ理由ですか?)
「多分。だが、本当は違うかもしれない。
 グロッグが『俺』って言ってたから、奴にあやかりたいっていう理由も、
あるかもな」

そうだ。奴には、返しきれないほどの物をもらった。
俺がもっと強かったら、こうして喋って助け合う事が出来たら、
結果は違っていただろう。

もう、何もかも遅い話だが。


『尚も生きる。手を取りて』第39話「分からない」

2019-11-13 | ゲームブック二次創作

我に返ったナオは、伏したグロッグの元へ駆け寄った。
グロッグの胴体は、大きく穴が開き、中身が吹き飛んでいた。
ナオが今までに噛みつき、斬ってきたどんな相手よりも、
惨たらしい損傷だった。
それなのに、グロッグは、笑っていた。
初めて会った時と同じように。

「へへ。これで、借りは返せた、かな……」
(グロッグ! グロッグ!)
「さ、行けよ。ついでに俺の荷物も、持ってって、くれよな」
(やだ! やだ! やだよ!)

何で、グロッグがこんな事になるんだ!
分からない、何も分からない、何がどうしてこうなったのか分からない。
地面を拳で叩き続けたい、大声で鳴き叫びたい、それに、それに――。

(ナオ!!)

キャリイが、ナオの背中を強く打った。
今までと違う、鈍く重い痛みが走った。

(逃げるなら、カエル男たちが混乱してる今しかありません!
さもないと、グロッグさんの助けが無駄になります!)
(…………!)

現実的な言葉をぶつけられ、ナオは文字通り打ちのめされた。
気力を絞って、立った。
グロッグの荷物袋を取ってから、走り出した。
二度と後ろを振り返るまいと、自分に言い聞かせながら。


『尚も生きる。手を取りて』第38話「戦いの中で」

2019-11-09 | ゲームブック二次創作

最早、抵抗は無意味だった。

ナオ一人だけが戦っていたなら、それで話は終わっていただろう。
状況を一変させたのは、グロッグだった。

グロッグはナオが戦っている間に、その場から離れ、
カエル男の増援の方へ、密かに回り込んでいた。
ナオを取り囲む輪の外を、音を立てずに動いている。

敵陣は、グロッグの動きを完全に見落としている。
グロッグが荷物袋を外して下に置き、身軽になった上で、カエル男の
リーダー格の背後へ忍び寄るのを、ナオは視界の隅に捉えていた。

が、グロッグのその迫る動きに、増援のカエル男の一人が気づき、
太く長い矛を振りかぶって投げつけた。
矛は狙い違わず、グロッグの身を後ろから、無残にも貫いた。

それが、グロッグの真の狙いとも知らずに。

矛の勢いは、グロッグを貫通しても止まらなかった。
突き抜けた矛は、カエル男のリーダー格を串刺しにした。
リーダー格の体は、開けた場所の中央、底なし沼の辺りにはまり込んだ。

カエル男たちは、ナオ達の事を完全に忘れ、
リーダー格を助けようと右往左往し始めた。
ナオもまた、カエル男たちの事を忘れていた。
息をするのも忘れたように、グロッグの倒れた方を見つめる事しか
出来なかった。


『尚も生きる。手を取りて』第37話「数の暴力」

2019-11-06 | ゲームブック二次創作

ナオ達は帰ろうとして、異変に気づいた。
元の道だったはずの所を、伸びた草が塞いでしまっている。
その代わりのように、左手に道が出来ていた。
仕方なく、その道を選んでいくと、開けた場所に出た。

次の分かれ道で、今度はどうしようかと考えた時。
背後で大きな鳴き声がした。

驚いて振り返ると、三つ叉の矛(ほこ)を手にしたカエル男が立っていた。
ナオと同じくらいの大きさで、膨らんだ体に大きすぎる頭が乗っている。
肌は岩のようにごつごつしていて、手には水掻きがあった。

カエル男は、ガラスのような目玉を瞬かせて、ナオを追いつめようと
迫ってきた。
矛の一撃目はフェイント。
それを見越し、ナオは敢えて正面切って攻撃態勢に入った。

「聖なる沼と聖なる庭を見る事の出来るのは我らだけだ!」

大声で叫ぶカエル男が、ぴょんぴょんと飛び跳ねて
襲いかかってくるのを、ナオは難なくいなす。
が、敵たちは狡猾だった。
ナオが一人目を相手取っている間に、何匹ものカエル男たちが
増援として近づいてきていた。
とてもあんな大勢には敵うはずがない。
最早、抵抗は無意味だった。