好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

良き物語は古びない。

2024-09-25 | 物語全般
『東海道戦争』(by筒井康隆)、読了。

全9話収録の短編集。
因みに中公文庫。出版は1978年。

中公文庫の裏表紙には、筒井氏の処女作品集とある。
そのじつ最初期の作品群であり、読んで、ある意味、全盛期の氏の作品を浴びる事となった。
既読作も幾らかあるが、今まで作品集などで見かけた、どれも尖った作品たちだ。

本命は表題。1965年初出。
何の理由も根拠もなく、突如として勃発した、東京と大阪の戦争。
オリンピックの盛り上がりをもう一度という軽薄なノリで始まるも、実際の戦闘は当然ながら酸鼻の極み。

後もう一つ強烈だったのが『堕地獄仏法』。
とある宗教に統率された日本。
物質面では極めて満たされた一方、言論の自由がまるで無い世界。

どちらも、実は今の時代こそ読んでみた方がいい作品かもしれない。
意義のある時間を持てました。

それでは。また次回。

高齢化社会版、バトル・ロワイアル。

2024-09-10 | 物語全般
『銀齢の果て』(by筒井康隆)、読了。

この本の世界では、高齢者問題に対してトンデモナイ形の対処がされている。
政府によって決められた地区における、70歳以上の人々による、1ヶ月にわたるコロシアイ。
1999年に小説、2000年に映画として世に出た『バトル・ロワイアル』が明らかに元ネタ。

因みに初出は平成17年。即ち2005年。
因みに因みに、筒井氏は1934年生まれ。
つまり、この本を書いた時点で、作者が実際に70歳に至っているのだ。
ハッキリ言って、この時代のこの作者以外が書いたら総スカン食らって発表できずに終わりそう。

今まで読むのを敬遠してたが、その予見は我ながら正しかった。
ある程度、筒井作品に慣れてないと、登場人物や場面転換の多さ、そして暴力描写に面くらってしまうだろう。

逆に、筒井作品の雰囲気に親しんでいる人なら、ひとまずフィクションと割りきって楽しめる。
文字通り命がけのやり取りは、どのキャラの場合も印象深い。

ラストは、やや予定調和ぎみ。
初期作品だったらもっともっと凄絶なスプラッタが展開されたかもしれない。
主人公の九一郎の台詞は、実は筒井氏の率直な言葉だったりするかもしれない。

それでは。また次回。

銚子電鉄宣伝小説。

2024-09-01 | 物語全般
『電車を止めるな!』(by寺井広樹)、読了。

映画『カメラを止めるな!』とタイトルが似てるのは意図的な物。
とにかく世に広める事がこの本の目的だから。

知ってる人は知っている、銚子電鉄は現在、濡れ煎餅などの飲食物で主たる運営をつないでいる。
それと共に、路線上で数々のイベントをこなしている。
この本を元にした映画版も公開されている。
そんな事情が予備知識。

以下ストーリー。
銚子電鉄は、廃線危機を越えるべく、現地の心霊現象を扱ったツアーを企画。
オカルト関係の有識者(?)を集め、動画サイトで生配信を試みる。
すると確かに起こった心霊現象。
降りられなくなった列車内で、人々はピンチに陥る。

こう紹介すると恐ろしげだか、実際の雰囲気は寧ろ軽い。
子供の霊の下りはやや気が沈むが、それも後には人情噺として胸に残る。

ただこの本、小説というより、映画版の脚本のような印象を受けた。
まず小見出しが非常に多い。場面転換の行空けも然り。ネットコメントも一言ずつ行替え。
普段読書しない人でも読みやすいというのは、長所になるかな?

それでは。また次回。

クトゥルフ神話を学ぶ一環として。

2024-08-25 | 物語全般
『アーカム計画』(byロバート・ブロック)、読了。

1979年作。
いわゆる「クトゥルフ神話」の集大成という触れ込みで知った。

全体で3話構成。
或る男性が、或る絵画をきっかけに謎に巻き込まれる。
その男性の妻が、謎の真相を求める。
その後、また別の男性が、結果的に世界の終末を引き起こす。

読むと、なるほど確かに、クトゥルフ大系からのモチーフが大量に出てくる。
その連携ぶりの魅力を理解できないのは、私の方の問題だ。

全体的なストーリーも、クトゥルフ大系に明るくない私には、辛かった。
タイトルにある「アーカム計画」により、世界中の有識者たちが総攻撃を仕掛けるのは興奮したが、それくらいで人間が勝てる相手じゃないからね分かってたけどね。

私には、巻末にあった解説文が救いで癒しだった。
ホラーを純粋に楽しんでた作者陣が微笑ましかったな。

それでは。また次回。

中国仙人ラブロマンス。

2024-08-11 | 物語全般
『僕僕先生』(by仁木英之)、読了。

タイトルだけで読んでみた。
「僕僕」って何だ?と引っ掛かった時点で、作者の思惑に嵌まっていたと、読んで知った。

時は古代、所は中国の唐。
財産など環境に恵まれ、のんびりぼんやり生きている青年・王弁は、山の庵に住む仙人に気に入られ、遠大な冒険の旅へ出る。

先に断るが、私は「歴史もの」が非常に苦手である。
前後する時系列、見分けのつかない多数の登場人物、求められる前提知識など、読んでて疲れる要素が多いというのが私の理由。
あと、大抵、戦乱などの残虐な描写が付いて回るのも追加で。

翻って本作は、文章は基本的に読みやすく、頭に入りやすかった。
昔よりは自分、中国の歴史や伝承について覚えてる事も増えたし、作中の解説も丁寧だったし。

ただ、状況を思い浮かべるのに苦労させられたのは残念。
どうも挿絵に引きずられて、王弁も僕僕ももっと幼い外見に感じてしまった。
特に僕僕は、本来は「妙齢の少女」なのだろうが、私には小学校高学年くらいの「子供」のイメージが強く、それと王弁が本気で恋愛(とその先を)しようとドキドキする流れに、ちょっと付いていけなかった。
もっとフラットなスタンスで読めば、また違った感想になるかもしれない。

それでは。また次回。

続々・殺戮の道化に祝杯を!

2024-07-25 | 物語全般
映画『デッドプール&ウルヴァリン』を劇場へ見に行く。

水曜が上映初日という、かなりの変則。
オフの日が丁度重なった幸運から、早起きして初回を狙った。
(因みに字幕版)

有り体に言えば本作は、『X-MEN』シリーズとMCUとの、壮大なコラボだ。
『X-MEN』世界(バース)全部を、MCUに見事つないだデップーは、比喩抜きで両世界を救ってみせた。
心から拍手を送り敬礼する。

私はドラマシリーズ押さえてないので、組織TVAについては把握しきれてないが、要するに全時空管理者って認識で合ってるだろうか。

ただ、個人的には寧ろ、本作のヴィラン達はマーベル世界を俯瞰する上位世界のメタ存在、ひいては制作側の一部の声のように感じた。
彼の言い分は、私にはこんな言葉に聞こえてくる。
「MCUへ引き抜くのはデッドプールだけでいい。他のキャラは要らない」
「今までの『X-MEN』シリーズは即刻ボツ。無かった事にする」
「新シリーズでは全て新キャラでリブートしよう」
「興行が成功するならMCUが壊れても構わない」
このような要求をはね除けて、デップーは本作を創ってみせた、なんて空想。

早い内に、今度は吹替版を見たい。
拾いきれてない小ネタ、探したいなぁ。

それでは。また次回。

詩人の綴るショートショート。

2024-07-10 | 物語全般
『ぺ』(by谷川俊太郎)、読了。
全23話収録の短編集。

詩や童話や翻訳で楽しませてもらってる谷川作品に小説があったと先日知った。
それもショートショートなら読みやすかろうと図書館で借りた。
玉砕した。

一言でいえば、実に「詩人らしい小説」である。
独特の言い回しが、良くも悪くも印象づけられる。
ややもすると、小説というより散文詩と見なした方が良い作品も少なくない。
そして全体的に、悲壮感が著しい。
未来が絶望に染まっている。
人類も地球も滅びかけ、または滅びた後だ

ところで、表題作はひらがなの『ぺ』か。それともカタカナの『ペ』か、どっちだろう。
当記事では、ひらがなを掲げたが……。

それでは。また次回。

仕舞い込んでた過去の記憶、の話。

2024-07-04 | 物語全般
『鍵』(by筒井康隆)、読了。

角川ホラー文庫の自選恐怖短編集との事。全16話収録。

再読の話がさすがに多い。
『佇む人』『無限効果』『池猫』『怪段』『くさり』『母子像』『二度死んだ少年の記録』は確実に覚えている。
もしかしたら、記事がブログに無いだけで、全部既読かもしれない。
けれど安定して面白いから助かる。
いっそ癒し。

本命は表題作。
主人公は、手にしたどこかの鍵をきっかけに、忘れていた記憶をひもといていく。
ただし、それは美しい思い出でなく。ためこんだ挙げ句に封印してしまった過去だ。
実際、私含め、主に子供時代に、あれやらこれやら、やらかした代物を仕舞い込んで忘れてしまった経験は大抵あるだろう。
食べずに残した給食を机の奥に隠して腐らせるとか、やっちまったもんだ。

私の場合だと、読んで怖すぎた本をどうにも出来ずに、何年も廊下の物陰に隠してた。
捨てるとか、まして売るとかいった発想も手段もなかったんですね。
歳とって処分できた時はホッとしたなぁ、なんて事も思い出したり。

それでは。また次回。

固定電話時代のサスペンス劇。

2024-06-23 | 物語全般
『袋小路』(by都筑道夫)、読了。

全12話収録の短編集。
気軽に読むなら短編集だ、と図書館で目に留まったのを反射的に借りる。

ところがどっこい、いざ読んだら逆に、状況のつかめない作品が続いて多いに混乱。

自己と他者、生と死、現実と虚構、そういった諸々の境界線が曖昧に溶けて消えていく話が非常に多かった。
『動物ビスケット』『顔の見える男』『指のしずく』など、バッドエンドを通り越して、私には顛末の意味さえ分からない。
これで終わり?

中でも『風の知らせ』の分からなさ加減は飛び抜けていた。

作者があとがきで賛否両論だった旨を述べているが、時代を経た今はますます分かりにくくなっている。
基本的に固定電話のみ、そして電話番号非表示が前提でないと、全くま成立しない話だから。
今時の特殊詐欺などを思うと、本作発表当時は何とおおらかだったんだろうと、感慨に耽った私である。

それでは。また次回。

リハビリ的・映画感想メモ。

2024-06-18 | 物語全般
やっぱり劇場で映画を見るのが好きだ。
今後のリハビリ兼ねて、少しだけ感想を書く。

★『告白 コンフェッション』
生田斗真氏なら演技力あるからいいかなと、予備知識ほぼゼロで鑑賞。
雪山描写が違和感だらけで、一切合切全部メタネタに落ちるのではと思った私。
物語の8割くらいが、激しいホラー的なフィジカルバトルに終始してた。
気まずい状況を誤魔化す会話劇、から過去の真相が少しずつ明かされる、なんてのを想像してたんだが。
後日ちょっと調べたら、原作漫画だとオチが大きく異なるようで、寧ろ私はそっちの方が好み。
ところでタイトルの単語、日本語でも英語でも別作品と重複してしまう。
将来、調べるのに苦労しそうだ。



★『ラーメン赤猫』
TVアニメの先行上映。2週間限定。
特典の色紙もらいました。
ジャンプルーキー枠から駆け上がった、ジャンププラスの傑作の一つ。
水曜日のカンパネラがOP担当。
猫さん達はベテラン勢、珠子さんのみ新人と、声優陣が役柄とかさなってる構図は興味深い。
文蔵さんが意外に渋くて、でも似合ってる。
珠子さんが涙を流して前職を語る場面には引き込まれて少し泣けた。

それでは。また次回。