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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

実写版は実写版だけで完成させる責任を。

2022-07-05 | 物語全般
実写版『銀魂2』のDVDを見る。

(『1』の方が好みでした。)

他メディア作品からの実写映画化にあたって、設定変更というのは避けられない。
キャラが違ったり展開を端折ったりなどという事には、私は或る程度免疫がついている。
むしろ、【原作と変えた設定でどうやって作品を成立させるか】という点が、
翻案する側の腕の見せ所だと思う。
残念ながら、本作はその点において、失敗している。

土方が謎の機械に洗脳されて弱虫な性格に切り替わってしまったというが、
それなら何で帯刀は続けてるのか。武器が怖くないのか。
その後、勇気を出して抜刀しようとしたのが、何故か鞘が抜けない。
ああやっぱり摸造刀の類なんだ、そういうギャグで落とすんだと納得してたら、
いざ抜いたら通常の真剣だったのを見た時、我知らず再生を止めてしまっていた。
……何かがオカシイ。

取り急ぎ調べて確かめて、嫌な予感は的中。
そう、原作の設定なら、刀に宿った別人格なり、土方の無意識的自己暗示なりで、全てすんなり説明できるのに。
話を簡略化させようと設定いじっておきながら、辻褄が合わないまま放置する意図が、分からない。

気を取り直して、止めた続きから最後まで見て、出演陣の熱演には惹かれたものの、脚本の粗が気にかかって集中しきれなかった。
整合性の取れてない作品は、個人的にダメ、なんです。

それでは。また次回。

機械に、心はあるか。

2022-07-03 | 物語全般
『戦闘妖精・雪風』(by神林長平)、読了。

『マブラヴ オルタネイティヴ』をきっかけに知った。
1984年初出。

異星「フェアリイ」で、謎の敵「ジャム」に挑む戦士・深井零と、彼の戦闘機・雪風の物語。

正直に言えば、前半は読むのに苦労した。
めまぐるしい戦闘機の戦いは、まるで実況中継を速記したメモのよう。
軍関係の専門用語が体言止め、もしくは単語のみで流れていって。
申し訳ないが、門外漢には目が滑る。
ジャムの戦闘機ばっかり出てきて肝心のジャム出てこないし(←こう思ってる時点で実は作者の思う壺だったと後で知る)。

もっとも、専門用語の羅列になるのは、ジャンルとして仕方ないだろつ。
本格ミステリでも、専門用語を説明するかしないか、のような問題あるしね。

しかしながら、この作品の本質はそうした戦闘シーンではない、と私は思う。
むしろ、感情を持った「人間」と、データから計算する「機械」との対立、そして融和がメインだろう。

地球での居場所なく、人付き合いよりも愛機と飛ぶ事を求める深井零。
その深井零の技術を吸収し、独力で戦えるようになっていく雪風。
機械のように振る舞う人間と、人間の知識を超えて振る舞う機械。

ジャムの正体が明かされる下りは、実際ぞくぞくした。
「ずっと戦闘機しか出てこない」のも当然だ。
もし『マブラヴ』を知らずに読んでたらもっとインパクトあったかも。
(↑あり得ない前提ですが)

それでは。また次回。

古式ゆかしき吸血鬼の惨劇。

2022-06-17 | 物語全般
(※私には合わない作品でした)

映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のDVDを見る。

見た動機は不純。
ある漫画に出てくる名前の元ネタと知ったから。
レビューサイトを見たら、同じ目的の人が多くて苦笑した。
そんな中途半端な予備知識で見た。
と言いますか、ビデオパッケージで途中までネタバレされたし。

それで見た率直な感想。
人生で初めて見たスウェーデン映画は、怖くて気持ち悪かったです。

吸血鬼に関する伝承が忠実に丁寧に描かれていたのは好感触。
「招かれないと他人の家に入れない」ってネタまで拾う作品って多くないと思う。

ただ、「凄惨な殺人を耽美に描く」という作劇としての目的ありきで
物語が進むからか、そこに至るまでの道筋が、少々荒い。
エリが人を襲う姿は、半ば獣。
血液を調達するための殺人も、やや雑。
まるで隠れ住めてない、あんな生活してたら早晩バレる確実に。

エリと出会う少年・オスカーの受ける“いじめ”も、残酷極まりない。
連中、オスカーを氷の池に突き落とそうとするわ、溺殺狙うわ。
だから対処法が「殺す」しかない。
暴力に暴力で返す解決は、真理かもしれないが、虚しい。

ラストシーンも絶望しか感じられない。救いがない。
平和な映画を見たい。

それでは。また次回。

ドラゴンで描く差別の時代。

2022-06-10 | 物語全般
(※私には合わない作品でした)

『ドラゴンがいっぱい!』(byジョー・ウォルトン)、読了。

可愛らしいピンクのドラゴンの表紙絵にほだされた私が、間違っていた。
ヴィクトリア朝の恋愛小説を下敷きにしているという旨の前書きを見た瞬間、失敗したと悟った。
私としては、旧時代の恋愛小説そのものだっだ。即ち鬼門。

申し訳ないのだが、私には、人間を用いると危険思想になりかねない要素をドラゴンに置き換えている作品に感じてならなかった。
登場人物が、人間くさいを通り越して完全に人間に感じるのだ。
翼やうろこ、そして特殊能力や嗜好を持った「人間」にしか見えない。

この作品のドラゴンの特徴は、大きく2点。
一つは、ズバリ同族喰らい。
喰らうと身体が大きく強くなるそうだ。
そしてもう一つが、女性性とそれにまつわる差別が全て、生理現象に基づいている点。
発情するとピンク、結婚ないし出産すると赤。例外はない。
レ○プされてもピンクになり、普通は元に戻らない。酷い。

ストーリーラインも私には退屈だった。
洞窟探検のエピソードが救いだった。
メインキャラは皆、良縁を得てハッピーエンド。
結婚ありきの時代は、大変だったなぁ……。

それでは。また次回。

おおらかな時代のミュージカル。

2022-06-05 | 物語全般
映画『私を野球に連れてって』のDVDを見る。

恥ずかしながら初見である。
と言いますか、見た事あるって人どれだけいるんだろうか。
初めて題を聞いた時は、
『私をスキーに連れてって』が頭に浮かんで仕方がなかったっけ。

ミュージカルの才能にも長けた野球選手の親友コンビによる、
ペナントの優勝と、恋の行方を巡る物語。

この映画もまた、1949年という制作年を踏まえる必要があるだろう。

道には馬車が走ってて。
女性陣はバッスルのドレス。
男性陣は帽子&ネクタイが標準装備。
端的に言って、見目麗しく目の保養。

ストーリーも楽しかった。
男性二人、女性二人の、にぎやかな四角関係を巡って、どのキャラも動く動く。
ミュージカルだから皆さん歌うし踊るし、笑える場面多々。
いい気分転換になりました。

それでは。また次回。

ヒトはいつから人間(ひと)なのか?

2022-05-22 | 物語全般
『人間以前』(byフィリップ・K・ディック)、読了。

全12話収録の短編集。

本命は『人間以前』。
『まだ人間じゃない』という旧訳が、昔から頭を離れなかった。
原題は『Pre-Persons』だから新訳の方が正確だけれど、ちょっと物寂しい。
人の生命が保障される年齢が、法律で決まっているディストピアの物語。
解説を読むに、中絶の是非への問題提起として書かれた作品のようだ。

以下、他の短編への感想列挙。

いつの間にか時間軸を移動している事に人は気づけない、「恐ろしいと感じる事自体できない」恐怖を読者は感じる『地図にない町』。

上位世界へ去ってしまった恋人を取り戻した結果、全人類が同一人物として遍在するようになってしまう『この卑しい地上に』。

ディックにしては非常に素直に分かりやすく読みやすいショートショート『不法侵入者』。

親が子を育てるべきではないという、“正論”が広まり始める『新世代』。

『ナニー』と『フォスター、おまえはもう死んでるぞ』は、物欲を煽る消費社会を扱っており、個人的に好み。
特に『ナニー』は、日本語の「乳母」でなく、敢えて分かる人には分かるタイトルを選んでるのが好き。

それでは。また次回。

狼男の小さくて大きな冒険。

2022-05-14 | 物語全般
映画『ティーンウルフ』のDVDを見る。

1985年作。
タイトルだけは長年知っていた。
マイケルJフォックス氏が、BTTFの次に出演した映画だと。
日本語吹替も三ツ矢雄二氏が担当している。

ところでこの映画、ジャンルからして分からない。
色んな要素のごった煮なのだ。

主人公のスコットは、バスケや恋愛に悩む普通の高校生。
そんな彼はある日、心身の変化に襲われる。
牙と爪が長く伸び、全身は毛むくじゃらという異様な姿。
実は彼は、狼男の一族であると判明し、そして……。

別に何も起きない。
学者も政府も来ない。謎の組織とか出ない。世界の運命とか無い。
自身も狼男であるお父さんは「遺伝だから」と普通に対応。
友達は喜んで狼男グッズの商売に燃える。
スコット本人はバスケで活躍してはしゃぐ。

つまりこの映画、「狼男」である必然性はない。
あくまで、「元々の自分」と「異なる自分」との二重身(ダブル)状態から
自分の本心に向き合う、という展開における手段なのだ。

最終的にスコットは、独りよがりになっていた「異なる自分」を封じ、
「元々の自分」とチームメイトを信じて決勝に臨む。
終盤のバスケのシーンはなかなか長く、見応えがある。
いやまさか、オカルトホラーものが始まったと思ったら、
『SL○M DUNK』になる映画とは思わなかった。驚いた。

それでは。また次回。

読書とは人生の追体験である。

2022-05-13 | 物語全般
『The Book』(by乙一)、読了。

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第4部の外伝。
因みに、2007年初版の書き下ろし。

いつか文庫落ちしたら読もうと思ってた私をお許し下さい。
この設定なら、このハードカバーの装丁しかないと痛感している。
全380ページという判型も変えられないし、このタイトルにも意味がある。
本当は乙一氏、表紙を無地一色にしたかったんじゃないかな。

物語の視点は、三点。
ある理由から特殊な状況で生きる女性。
謎の少年・琢馬と少女・千帆。
康一たち本編のメインキャラ。

まず、原作要素の多さに驚く。
複雑なスタンドバトルの駆け引きにも圧倒される。
あと、イタリア料理店の下りは貴重な癒やし。

“忘れる”事の出来ない少年の語る、
「読書における追体験とは、過去への時間移動である」(大意)という論は、本好きなら誰しも共感できるだろう。
ただ、作中に没入するには、前提として相当の筆力が必要だ。
情景描写、心理描写に自信がなければ書けないところを、けれど乙一氏は完遂している。

その時その時の一瞬を全力で、懸命に生きて散るキャラ達は、まさに原作通り。
読了してからプロローグを見返すと、全く違う感慨が湧いてくる。
そして、もれなく本を手に載せて振りかざす遊びをしたくなる事請け合いである(私はやりました)。

それでは。また次回。

撮影技術の嚆矢を見る。

2022-05-10 | 物語全般
映画『市民ケーン』のDVDを見る。

恥ずかしながら初見である。
映画について語るなら見なきゃダメという世評に、思い切って借りてみた。

富豪のケーン氏が最後に遺した謎の言葉「バラのつぼみ」の真意を探ろうと、関係者たちにインタビューを重ねていくのが基本の展開。

字幕の字体からして古く、いっそ読みにくい。
「労働」「権利」「離婚」……確かに昔はこれらに略字使ってたね。

この作品を評価するには、1941年という制作年を踏まえる必要があるのだろう。
当時としては画期的な撮影方法など、調べると勉強になる。

・新聞記事の見出しを連ねる事で、話題が世界を席巻しているのを表す。
・同じシチュエーションを繰り返して、長い月日が経っていくのを表す。
などの演出も、当時としては珍しかったのではないか。
もっと言うなら、主人公が亡くなってから、関係者たちによる証言という形で回想していく……という「時系列シャッフル」の元祖でもあるだろう。

今となっては、どれもありふれた手法。
それでも名作と評されるのは、今も通じる普遍的なストーリーだからだろう。
子供時代、より良い生活のためと諭されながら、両親に事実上売られたためか、ケーンは金や物でしか人とつながる事が出来なかった。
命令して従わせる事は出来ても、本当の意味で思いやりを持てなかった。
「バラのつぼみ」って結局、愛って意味でいいんですかね?

それでは。また次回。

児童向け・本格SF時間移動。

2022-04-12 | 物語全般
『かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』のDVDを見る。

時間移動を扱ってる作品なら何でも見る。

ゾロリ&イシシ&ノシシが立ち寄ったドーナツの町。
ドーナツの整理券を朝一で手に入れるため、
発明家でもあるゾロリは強力な目覚ましマシンを作る。
が、そのマシンは、なぜかタイムマシン能力を持ち、
ゾロリ達は同じ町のずっと昔の時間へ飛び立った。
因みに、そのマシンは名づけて「ぞろり庵(あん)」。
……この名前見ただけで大収穫ですわ。

目を惹いたのは、「××年」という表記を使わずに、時代の動きを描く手腕。
ドーナツ屋が再開発する前は学園都市だった、という景観の変化で攻めるのは上手い。

で、過去の世界でゾロリは、理想の女性ゾロリーヌと、その想い人であるロン先輩さんと出会い、彼らはヤヤコシイ三角関係に陥りかける。
大雑把な言い方をすれば、山寺宏一氏がマーティとドク(とジョージ)を全部一人で演ってるみたいな状態である。

あと個人的に興味深かったのが、過去世界に着くのを境に、ゾロリのコスチュームが消失する下り。
過去の時点で既にコスチューム(の原型)が出来ていたため、未来の存在が消えたわけだ。
ただ、そうなると、この作品での時間移動では、複数の同一人物は決して存在できない事になる。
過去と未来のうち、未来の自分が消える。
けっこう危険では?

それでは。また次回。