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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

忍法・妊娠。(男性が)

2023-12-28 | 物語全般
『くノ一紅騎兵』(by山田風太郎)、読了。

全8話収録の短編集。
本命は表題作。
男性が妊娠出産する秘術、その名も「背孕み」というトンデモナイ単語をネットで見かけて調べるため読んだ。
つまるところ、女性が幻術で男性に見せかけてたってオチでいいのかな。

まあとにかく、山田作品において、「荒唐無稽」は褒め言葉。
ちまちま細かいことを考えたらいけない。
『嗚呼益荒男』とか別に、×器(×根)ネタでなくても良かろうもんに。

自分としては、『お庭番地球を回る』が印象に残った。
どこまで史実で、どこから虚構か煙に巻かれる。
アメリカ人が目にした日本人の描写はどれも興味深い。
鳶の軽業までも「ニンジア」の秘術扱いされたり。

ただ、使命を人知れず終わらせ、世間から消える忍者の儚さには惹かれてしまう。
ある意味、歴史の勉強にもなる。
実際、収録作品は、ほぼ時代順に並んでいる。
(関ヶ原の時代→田沼意次の時代→井伊直弼の時代)

『魔界転生』辺り、いずれ押さえた方がいいかなあ、と覚書。

それでは。また次回。

宇宙の虫との戦争映画。

2023-12-06 | 物語全般
映画『スターシップ・トゥルーパーズ』のDVDを見る。
TSUT○YAのポイント消化のために借りた作品だった。
ポータブルDVDプレイヤーの調子もよくないため、PCで鑑賞。

見る前に、ある程度の予備知識を仕入れていた。
とにかくグロいと。
全体的にエロいと。
ツッコミどころが結構あると。
原作ファンの評判は良くないと。
賛否両論の触れ幅が激しいと。etc。

故に、自分としては覚悟して見た結果、大いに楽しめた。

まるでバラエティ番組を、それも動画サイトで見ているような演出に驚いた。
上映当時はインターネット黎明期で、サイトはまだまだ活字中心だった時代なのに。
戦争映画を、一歩引いた冷静な目で描いている印象を受けた。

原作ファンが苦言を呈したのも理解できる。
例のパワードスーツが出てこない。ヘルメットにはゴーグルさえない。
武器も普通のマシンガンだけ。

残酷描写も確かに激しい。
人の殺され方は凄まじく、敵とされる「虫」のグロテスクぶりも尋常じゃない。
この辺、私は『マブラヴ』で鍛えられたかもしれない。
昔だったら無理だった。

しかしながら、キチンと原作要素を押さえてる部分も見受けられる。
戦争の代わりに、人種差別も男女差別も一切なくなっている。
前線に上がってくるベテラン達の名前にも嬉しくなった。

個人的に残念だったのは、主人公が平均的なコーカソイドだった事。
原作で最後に、実はアジア系である事が明らかになるのが好きだったから。
リコという名前や、ブエノスアイレス出身という設定は健在だったけれど、惜しいな。

それでは。また次回。

ミニクーパー、走る!映画にて。

2023-11-29 | 物語全般

映画『ミニミニ大作戦』のDVDを見る。

赤・白・青、三色それぞれのミニクーパー3台が並ぶジャケットを見て、半ば反射的に借りた。(=予備知識ゼロ)
つまり、今回見たのは1969年作。
2003年作のリメイク版については調べて知った。

因みに原題は『The Italian Job』。
この場合の「イタリア」は、ある種のヘタリアみたいな意味らしい。ぽんこつって事だ。

出所してきたイギリス人の詐欺師が仲間たちを率いて、イタリアの街で金塊を盗む。

まず、元々お祭りで混み合っている交通網の信号機に、ジャミングかけて渋滞を作るわけだが、その方法は当然ながら現在と大きく異なる。
敵地へ乗り込んで、コンピュータにかかってる磁気テープをまるまる取り替える必要があるため、窃盗団のデジタル担当も肉体労働しなければならない。

首尾よく金塊を得て、ミニクーパーで街中を逃げ回るのが、この映画の真骨頂。
路地だろうが階段だろうが水辺だろうが屋根の上だろうが、どこまでも小型車の小回り発揮で走りまくる。
要は、アニメのアレやコレやで見かけるようなネタがバンバン出てくる。
実際にやるとこんな感じなんだなと。
ただし、そんな活躍したミニ達は、無事に逃げおおせる際の仕上げとして、哀れな末路を迎えてしまうが。

そしてラストは、まさにクリフハンガーとしか言いようのない場面で切られる。
皆して成功成功と騒ぎ続けてるから、そーゆーオチ(のような物)が付くとは或る程度予想できたけれど。
果たしてあの後、主人公たちはピンチを切り抜けられたんだろうか。

それでは。また次回。


試しに見たクレヨンしんちゃんがメタ映画だった。

2023-11-22 | 物語全般

映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』のDVDを見る。

以前見た『花の天カス学園』が興味深かったため、他の好評な作品も押さえてみようと借りた。

見終えて正直に思った。
コレ、めちゃくちゃ難解じゃないですか?
見たきっかけは、「映画の世界に取り込まれてしまう話」という触れ込みに惹かれたからだが、こうまでメタ全開とは思わなかった。

『カスカベボーイズ』の奇妙な映画世界と、『クレしん』の世界と、という複層構造。
(『クレしん』を鑑賞してる私たちの世界を含めれば3層構造)

そもそも、この話では何が起こっていたのか。
未完の映画が、それを完結させるために人々を取り込んだというのは、あくまで仮説であり、真相は謎。
町の人々が長期間、神隠しにされていて事件になっていないのも謎。
作外人物だった記憶を消されてしまう描写は実に生々しく、虚実の境界が総じて曖昧。

そもそも、あの作中作の映画は何だったのか。
本格的な西部劇と思いきや、序盤からロボのようなオーパーツが登場し、発明家がアメコミヒーローのような変身アイテムを作る。
結末も、悪役が倒されるような具体的なそれではない。
物理的に隠されていた○○○という概念を解放して終わり。非常に抽象的。
初見は勢いで流されたが、もし元々がこんなストーリーなら、未完になるのも仕方ないと思う。

そしてゲストキャラのツバキである。
西部劇の世界観でこの名前。
だから作外、しんのすけ達と同じ被害者……と思わせて、実は彼女も作中人物。
よく見ると、なぜかずっと裸足。作中設定で人間だったのかさえ怪しい。
もっと言えば、前述した発明家も名前が「オケガワ」。
こういった細かい点を気にする私には、ちょっと合わない作品だった。残念。

それでは。また次回。


海の果てから迫る恐怖。

2023-11-21 | 物語全般

『夜の声』(By W・H・ホジスン)、読了。

全8話収録の短編集。
本命は表題の『夜の声』。
知ったきっかけは、映画『マタンゴ』の元ネタという話から。

総じて貫かれている方針は、「恐怖の根底は海にある」事。
海産物を畏れた(←ちょっと違うか)ラブクラフト作品の原点とも言える作品群。

どのエピソードも、気になった怪しい場所(主に船)を調べた顛末が基本。
(無から発生してるように見える)カビやネズミやその他の怪異に襲われる。
私としては、そもそも不穏な内部に入るなと思ってしまうが、それは私が冒険者じゃないからなんだろう。
ダイヤや真珠などの宝石類をGetする人もいるわけだし。
行方不明者を発見して救い出せた『グレイゲン号の発見』が私の癒やし。

最終話の『水槽の恐怖』だけは趣違って、ホラーで無くミステリ路線。
発表当時、ヘビの生態がまだ理解されてなかった事がよく分かる。

個人的に印象に残ったのは、むしろ巻末の解説。
作者のホジスンは10代の少年時代を過酷な船員として苦労し、それが海洋ホラーを書く動機の一つになった事。
あのフーディニを縄抜けで苦戦させたため、フーディニファンに恨まれて狙われ、警察に駆け込む羽目になった事。
ホームズシリーズがストランド誌で持てはやされていた事に対抗意識を持ったのが、あのカーナッキを生むきっかけになった事。etc。
そして第一次大戦に志願し戦死という終焉に、何ともやるせない気持ちになった。

それでは。また次回。


正常と異常の狭間に。

2023-11-13 | 物語全般

『将軍の目醒めた時』(by筒井康隆)、読了。

『ヤマザキ』を読もうと図書館で調べていて目に留まって借りた。
全10話収録の短編集。

再読した『最後の喫煙者』と、『ヤマザキ』の他、『万延元年のラグビー』が重複している。
『万延~』は、やはり歴史小説の形で始まっておいてメタメタギャグに飛ぶ話。結構グロ。
『空飛ぶ表具屋』も読んだ記憶がある。

本命は表題。
生まれた時代故の悲劇か、国の戦争事情に巻き込まれ、というか自ら飛び込んでいってしまった男が、精神の正常と異常の狭間を揺れる話。

個人的に惹かれたのは『家』。
大海原に建てられた巨大な旧来の日本家屋に住む家族たちの、事実上の集落一つ。
そんな不思議な環境で生きる少年の日々。
彼ら以外の外界で何が起きているのかは結局最後まで謎。

ただ、この本、『乗越駅の刑罰』を読むのが辛すぎた。

ズバリ、動物虐待をギャグで使ってる描写がある。
無賃乗車をした主人公の悪夢という話だから陰惨なのは当然なのかもしれないが、流石に勘弁と言いたい。

それでは。また次回。


続・スパイダーマン世界のダークヒーロー。

2023-11-12 | 物語全般

映画『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のDVDを見る。

『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』の口直しのつもりだった。
本作は、90分程度にコンパクトにまとめられてるから見やすかった。
それ以外、あんまり私が褒めたい点が無い。
全体的に、ご都合主義を感じてしまった。

まず話の前提がよく分からない。
あの殺人鬼って、主人公・エディの血を数滴飲んだくらいで新たなヴェノムになれたのか。
それに、何でいきなり、衝撃波の声を出せるような女の人が出てくるか。
恐らく、シンビオート達を手こずらせるというメタ的な理由が大きいのだろう。
明らかに廃れた教会なのに、鐘だけバリバリ健在なのもそうだろう。
ピンチを作る演出なのは分かるが、もうちょっと練ろうよ。

エディとヴェノムの掛け合いに愛嬌があるという、世の意見にも一理ある。
ただ、それも根本的なところで何かオカシイ。
どこまで行っても人喰いなんですよねヴェノムは。
それを我慢してる間でさえ、どこかの鶏小屋襲ってたりする。
エディとケンカして他人に取り憑いて回ってる時も、事実上その相手を殺してると言える。

まあ要するに、もともと私がヴェノムのグロ描写に付いて行けてないのが最大の問題点ではある。
カーネイジの色合いが、本当に気持ち悪くて。
ヴェノムはなぜか「赤はヤバイ」とか言ってたが、あれ、赤じゃなくて肉の色だよ。
逆にいっそ、もっと激しいゴアシーンに振り切ってくれたらそこで見るの止めたんだが、そういう直接の残酷描写はなぜか無く、中途半端な印象が残った。
カーネイジは、原作のアメコミで重要キャラだそうだが、そのファンの人たちはこの扱いでいいと思ってるんだろうか。

で、なぜか最後は、『ノー・ウェイ・ホーム』と話がつながってた。
また思い出す羽目になった。つらい。

それでは。また次回。


消費されゆく子どもたちの物語。

2023-11-08 | 物語全般

(私には合わない話でした)
『わたしを離さないで』(byカズオ・イシグロ)、読了。

ハードカバーを図書館で借りた。因みに2005年初出。
ある漫画とモチーフが似てるとか、ドラマが話題になったとか、ノーベル賞を取ったとか、そんな幾つもの話題が世に出る度、いつか読むかと心に留めて、やっと読めた。

読み始めて早々に混乱した。
「提供」「介護人」「保護官」「展示館」「交換会」「販売会」etc。
私たちの日常とは異なる意味で使われているだろう謎単語が、これでもかと襲ってきたためだ。
それら謎単語と匹敵する勢いで出てくる単語が「セックス」。
登場人物らは寄ると触るとセックス。一体この作品世界は何なのか。

それに、ただでさえ、或る「介護人」の回想録の形なのに、その中で更に想起が何度も出てくる。
つまり時系列がひんぱんに前後する。
未出の話題が章の終わりに突然湧いて、面食らいながら読み続けて、忘れかけた頃にその未出についての説明が出てくる、というパターンが繰り返される。

全体の半分を遥かに超えた、300ページ超まで読んで、やっと世界観が説明されたが。
その説明を受けて、逆に分からなくなった。
主人公たちは謎施設に監禁されてもいない、情報統制もされてない、なのに誰も体制に反抗しない。
外界が荒廃しきってるようでもない。
クローン技術だけ進んでて、他の文化も文明も倫理観も止まってる。

「提供」の真相もストレート。
自分としては寧ろ、あり得ないから除外してたくらい。
二度も三度も体から臓器抜かれて、普通にセックス(!)してるというのは流石にどうかと。

夢も希望も実も蓋も救いも無い、私には胸の悪くなる話でした。

それでは。また次回。


成長期ヒーローの、終焉。

2023-11-01 | 物語全般
(私には合わない作品でした)
映画『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』のDVDを見る。
 
私にとってのMCUシリーズは、『エンドゲーム』で完結したと思っている。
この度、『ノーウェイホーム』を見て、その気持ちが一層強まった。
 
過去作の『スパイダーマン』の登場人物たちが勢揃いするメタ展開は悪くないと思う。
ただ、その展開の前提が、色々オカシイ。
本来、機転の利く天才肌のキャラ達が本作に限って、話の都合で愚かにされてるように感じてならない。
 
ピーターはピーターで、自分の進学の悩みを、誰にも相談せず安直に魔法に頼る。
ストレンジもストレンジで、細かい条件をろくすっぽ確かめずに大魔術を発動させ、だから言わんこっちゃない失敗をやらかしまくる。
 
そして結局、本作のピーターも「大切な人の死」というモチーフから逃れられない。
ただでさえトニーさん失ってるのに、メイおばさんもいなくなるなんて。
というか、それより前にそもそもベンおじさん死んでるよね?
他のピーター達より一段、背負う物多すぎないか?
最終的には本当に、世間とのつながり自体が途切れてしまうし。
私には辛すぎた。
 
きっとこれからもMCU作品は映画でもドラマでも多方面へ展開していくだろう。
私はそれを遠巻きに見る立場になるだろう。
個人的には『デッドプール』の今後が楽しみだ。
 
それでは。また次回。

何でもあり、の話は難しい。書くのも。紹介するのも。

2023-09-22 | 物語全般

『最後の喫煙者』(by筒井康隆)、読了。

全9話収録の短編集。新潮文庫。
ずっと昔に読んだ覚えがあるのだが、当ブログではまだ取り上げてないと知ったから再読。

本命は『ヤマザキ』。
何だかパン食べたくなるようなタイトルだが、実のところは歴史小説……のような何か。
羽柴秀吉と明智光秀が対決した「山崎の戦い」を描いた物……のはずである。
そう、途中までは実に丁寧に、かつ分かりやすく史実通りの話が進むのだが、途中からいきなりメタメタのギャグが爆走する。
取りあえず読んでとしか言えない。

表題の『最後の喫煙者』は1987年に発表され、1995年に『世にも奇妙な物語』でドラマ化された。
作中では喫煙者が徹底的に差別行為を受ける一方、私たちの現実では着々と禁煙の場所が広がっている。
本当に「最後の喫煙者」が生まれる時代も来かねない気がする。

個人的にオススメしたいのが『急流』。
時間の流れが加速して、そのまま世界が終わる話。
どこかの作品のスタンド攻撃ではない。でも似てる。

ただ、この本、少なくとも一つ、とりわけ読む人を選ぶ作品がある事を注意しておく。
『問題外科』だけは、筒井作品初心者には読ませたくない。
筒井作品なら何でも来いという強者なら、止めはしない。
取りあえず、食事の前後や寝る前には、私は読めません。

それでは。また次回。