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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

教育問題あるあるを斬ってるお話。

2023-09-15 | 物語全般

『虚構市立不条理中学校』(by清水義範)、読了。

「タイトルだけで選んでみた」シリーズ。(←久々の表現)
1990年初出。

図書館で借りて、するすると気持ちよく読み終えた。
そんな風に気楽に読み下せる文章でありながら、中身は実のところ極めてセンシティブ。
コレ、このタイトルでなかったら、少なくとも出版当時なら十中八九、問題が起きてる。
「実在する(ウチの)学校の出来事を書いてるんじゃないか」と突っつく人が出てくる。
そう思ってしまうくらい、出てくるネタが普遍的なのだ。

主人公たる作家が何の気なしに書いた、教育ネタのエッセイをきっかけに、主人公の息子が通う中学校の教師たちが牙をむき、主人公へそれぞれ一家言を打ち立てる。
国語教師は現代文の設問について、英語教師は文法重視主義についてといった調子で。
体育教師は、いわゆる「集団行動」が好きすぎて、かなりヤバイ。ヤバイとしかココでは言わんでおく。

最後、主人公の家族が人質に取られてて大ピンチだったりするのだが、どう解決するかもココでは伏せる。不覚にも笑ってしまった。

図書館で見かけた他の作品を見るに、言葉遊びのドタバタ劇が得意な作家さんとお見受けする。
後日お世話になるかもしれない。覚書。

それでは。また次回。


炎という名の怪物。

2023-08-20 | 物語全般
映画『バックドラフト』のDVDを見る。

火災において、密閉された室内の酸素を使い尽くしてから爆発する現象。
この「バックドラフト現象」という言葉が歴史に刻まれた記念すべきだろう作品。
例によって「午前10時の映画祭」から思い出して見てみた。

本作の主軸は、共に消防士である兄弟の確執。
彼らの父も消防士だったが、弟が幼い時、その目の前で亡くなってしまう。
その後、兄は順当に消防士になったが、弟は職を転々とし、悩みながら消防士の職に就く。
彼らの町では、原因不明の連続放火殺人事件が起こっており、そこには地元政治家の陰謀が絡んでいた。

改めてあらすじを書いてみると、なかなか重い展開に感じる。
が、実際の印象は、軽い。どちらかと言うと悪い意味で。
本作公開当時の消防活動って、こんなテンションだったんだろうかという疑問が付いて回った。
総じて、お気楽なんである。人死んでるのに。

冒頭からして、お父さんが小さい息子をノリノリに消防車に乗せて現場行くし。
連続放火事件を追う事になった主人公(弟)は、出向なのか転職なのかイマイチ分かりにくいし。
調査中に恋人と、出動待機中の消防車の上でセッ○スしよるし。
クライマックスも、どこかオカシイ。
メインキャラ達、本来の消火活動を横に置いて議論展開。
2時間サスペンスドラマの終盤の崖みたい。
だから、やっぱり言わんこっちゃない惨劇が起こる。で、また人が死ぬ。
正直、あんましカッコ良くなかった。

もっとも、私としては、本作の真の主役は彼らではない。
炎そのものである。
作中で言われるように、まさに生き物のように蠢きながら、そこの酸素を使い終わったとばかりに別の場所へ、すぅっと移っていく。
あの描写は一見以上の価値があるだろう。

それでは。また次回。

人が超常に打ち勝つ時。

2023-08-13 | 物語全般
『神々のワード・プロセッサ』(byスティーヴン・キング)、読了。

サンケイ文庫版。全6話収録の短編集。

狙っていた作品は二つ。
一つは表題の『神々のワード・プロセッサ』。
文字で打った通りに現実が改変されていく。
主人公の視点では完全無欠のハッピーエンド。

もう一つは『ジョウント』。
『虎よ、虎よ!』(byクスター)で扱われている特殊能力「ジョウント(瞬間移動とほぼ同義)」から発展した話。
この作品世界では、空間を渡る時、決して意識を持っていてはならない。

他に印象に残った作品を以下に。

『しなやかな銃弾のバラード』
フォーニットという人外にまつわる幻想が、共有される事で現実を冒していく。
幻想には電気が天敵だそうで、あちこちをアルミホイルで覆って塞ぐ様は、現代の疑似科学にも通じる。

『猿とシンバル』
あの独特なフォルムのおもちゃが呪われている話。
見ていると鳴らしたくなり、鳴らすと誰かが必ず死ぬ。
主人公は呪い攻撃に耐え抜いて、最後のオチで、見事に落とした。
恐ろしくも、読後はスカッとした気持ちになれる。

それでは。また次回。

時間に追われて映画を追う。

2023-08-12 | 物語全般
★『トゥー・クール・トゥ・キル』
副題に「殺せない殺し屋」とある。
映画館での予告編で、私の好きな『ザ・マジックアワー』のリメイクと知って気になっていた。
元の映画は、最初から最後まで笑えた楽しい作品だった思い出がある。
本作は、「売れない俳優が殺し屋の芝居をする」というモチーフ以外、ほぼ別物だった。
結果的に未遂だとは言え、俳優が人を殺す描写が入ったのは、私としては残念。
平和な話で一貫してほしかった。

★『リバー、流れないでよ』
SNSで話題になっていると聞いて見に行った。
ある冬の京都の貴船で起こった怪異。
きっちり2分間ずつ時間が繰り返される、いわゆるループ現象に、旅館にいる人たち全員が巻き込まれた。
繰り返されるのが極めて短い時間である一方、全員の記憶が蓄積される事を強みに、彼らはあれこれ動き、考え、そしてループから抜け出す。
「世界線」が時間軸の意味で使われている。シュタゲの影響は大きい。

……と、この2作品を併記した事情。
どちらも私の地元では、短期間しか上映されなかったからだ。
『トゥー~』は何と1週間のみ。『リバー~』も約2週間。
見たいと興味を持った時には既に公開、見終わって振り返る頃には終了。
遅かれ早かれ、ソフト化されたり配信されたりするんだろうが、忙しない。
鑑賞料金もどんどん高くなって、割引の日を利用しないといけなくなってきてるし、見に行ける頻度は下がってきそうだ。

それでは。また次回。

朽ちゆく肉体に宿る心。

2023-08-04 | 物語全般
(合わない本でした)

『あなたのための物語』(by長谷敏司)、読了。

2009年初出。
あるスマホゲームでタイトルを知ってから興味を持って、図書館で借りた。

舞台は2084年。
環境破壊の進む一方、脳神経学への研究、ひいてはヒトの意識と連動した機械も普及しつつある社会。

主人公である科学者・サマンサは、ヒトの意識を投影したソフトウェア「wanna be (ワナビー)」(なりたい)を開発し、「彼」に独自の小説を完成させる実験を重ねる。
が、そんな折、サマンサは不治の病に冒されている事が判明する。

感想としては。色んな意味で、読み進める事に時間がかかった本だった。
まず、和訳されたようなぎこちなさを感じる文体に私には感じて。
冒頭に登場人物一覧が欲しかった。
次に、専門用語のラッシュがきつい。
結局「wanna be」とは「何」なのか、私は今も理解してない。

そして最大のネックだったのが、ストーリーの鬱屈ぶり。
医学の進んだ未来でも、遺伝による免疫不全というサマンサの病を治す術は無い。
しかも、いわゆる闘病ものに出てくる病と違い、彼女のそれは主に大腸の炎症。
下血、下痢、脱糞という、まさしく尊厳破壊と言わんばかりの病状が緻密詳細に描かれている。
食事前後には、私は絶対に読めない。
私がSFに求めるのは、ひとえにワクワクするセンスオブワンダーだから、辛かった。

人の自我は、肉体あってこそ成立する。
肉体は刻々と朽ちていき、人は必ず死ぬ。
という作品のテーマは受け止めるが、私には合わない本だった。

それでは。また次回。

人と人のつながりは、時を超えて。

2023-07-25 | 物語全般
『アイネクライネナハトムジーク』(by伊坂幸太郎)、読了。

全6話の連作短編集。
斉藤和義氏の作品とのコラボをきっかけに作られたそうで。

どのエピソードも基本的に、人々の「出会い」について描かれる。
世の触れ込みでは「恋愛小説」とも言われているが、むしろそういったイベント抜きでの関係の方が、読んでいて印象に残った。
「5年ごとに必ず会える間柄」とは何か?とか。

そんな個々のエピソード達を単独で切り出しても、それぞれ充分に面白い。
その上で、全て読み終えてから俯瞰すると、実は、時系列シャッフルされた一続きの物語だった事や、さりげなく置かれていた伏線が美しく収斂している事を知った。
個々でも良作、揃えば傑作という、連作短編集の理想を見た。
全登場人物があれやこれやと絡まりまくって、とても一読しただけでは把握できない。
ネットで相関図を見て、初めて気がついた人間関係も少なくなかった。

以下、余談。
後日、知人との付き合いで、地元の図書館で映画版を見た。
自分の中で、ある程度、時系列と登場人物を整理する役に立った。
終盤、オリジナル展開で、いかにもな恋愛映画になってるのは正直なところ残念だった。

それでは。また次回。

大火という名の地獄。

2023-07-21 | 物語全般
映画『タワーリング・インフェルノ』のDVDを見る。

午前10時の映画祭で知って借りた。
「高層ビルでの災害」を扱った作品の傑作と言われる。

正直な感想としては、長かった。
2時間40分超え。
それに、最初の1時間ほどは、状況説明に費やされる。
消防車が登場した頃から、話が動き始める。

本作から学べる最大の点の一つは、いわゆる正常バイアスの恐ろしさ。
登場人物の大半は、まさかこんな立派なビルが全焼するわけないと思い込んでいる。
手抜き工事を知ったされた設計士が訴えても届かない。
もっとも、その設計士の忠告も、「もしかしたら」「かもしれない」という、抽象的表現で止まってしまっている。
駆けつけた消防士の隊長が、具体的な指示を飛ばすが、(作劇として当然)間に合わず、惨劇が発生する。

高層エレベーターは途中の火中で開いて客は火だるま。
展望エレベーターは停電で使えない。
重力を利用して降下したら、エレベーターの箱自体が吹っ飛ぶ。
階段で下に行こうとすればガス爆発で道が無くなる。
だから階段で上に行こうとすればコンクリで扉が塞がって通れない。
屋上に着陸しようとしたヘリコプターも爆発炎上。
ビル間にワイヤーを渡し、移動用の吊りかごを用意してもパニック発生。

そんな惨劇の中、死ぬ人は死に、生きる人は生きる。
頑張ってる人だから助かるわけでもない。下衆だから死ぬわけでもない。

そして、本作のクライマックスは、2時間20分を過ぎてから。
最終的にどうやってビルを鎮火させたかは、ここでは伏せておこう。

それでは。また次回。

「SF」がサイエンスファンタジーだった時代。

2023-07-12 | 物語全般
『刺青の男』(byロバート・A・ハインライン)、読了。

全18話の短編集。1951年初出。

以前、DVDで見た時、正直よく分からなかったので補完として読んでみた。
どうもDVDで紹介されたのは、『草原』と『長雨』と『今夜限り世界が』の3エピソードの模様。

そして皮肉にも、私がこの度の本で気に入ったエピソードはどれも、DVDに入ってない物だった。
というわけで列挙。
この辺りは、今の時代にも通じる普遍の内容。

『日付のない夜と朝』:離人症めいた精神崩壊の症状がリアルに描かれる。
『狐と森』:平和な過去の世界へタイムスリップして逃亡しようとする夫婦を、意外な形で捕らえる追跡者。
『マリオネット株式会社』:コピーロボット(『パーマン』)みたいな話。ラストに登場した男は果たして生身か機械か。
『町』:かつて地球によって滅ぼされた星。その星にある町の機構そのものが、遠大な復讐を果たす。
『ロケット』:飛ばないロケットを買ったお父さんは、子供たちに美しい嘘をつく。

そんな中で、個人的に一番推したいのは『亡命者たち』。
作中での火星(今の時代なら未探索の遠い星にあたる)は、怪奇作家たちが隠れ住む幻想勢の黄金郷だったという話。
電灯が暗闇を打ち消した事により妖怪はいなくなった……という話に近い物を感じる。

それでは。また次回。

中東動乱の特異点。

2023-07-05 | 物語全般
映画『アラビアのロレンス(完全版)』を劇場へ見に行った。

このところの自分は、2時間半以上の映画は集中力が続かなくなってきていた。
それが最近は、3時間超でも耐えられるようになってきた。
だが、本作はその更に上を行く長尺。まさかの約4時間。
途中で寝るという説も聞くため、ビデオソフトで予習した。
2枚組になってる映画ソフトも初めて見た。
結論としては、途中休憩を二度三度、数分ずつ挟みながらも見終えた。
それで劇場へ行く決心がついた。

見た理由の一つは、絵のような砂漠の映像美に惹かれたから。
これはスクリーンで一度見ておこうと思うほどに。
もう一つは、主人公のT.E.ロレンスが実在の人物であり、中東の歴史を動かしたとも言われるなど予備知識を入れてから臨んだから。
というのは、この人、その時その場に常に流され、なまじ運にも恵まれた結果、どうにも一貫性のない人生に、私には感じてしまったから。

アラブ人の前でも、イギリス人の前でも、理想を掲げていたものの、どこまで行ってもどっちつかず。
イギリスでアラブの装束を着続ける一方、アラブで貴重な水を使ってヒゲを剃り続ける。
もう限界だと悩んでアラブを去ったと思ったら、結局舞い戻って惨殺に狂喜する。
最終的には抜け殻のようになり、バイクで暴走事故を起こしてしまう。
こういうのを、「事実は小説より奇なり」と呼ぶんだろうか。

ところで本作について調べたら、注意深く見ると同性愛ネタが散見されると分かるそうで。
確かにあのムチ打ち拷問の場面、今一つピンと来てなかったけど……そういう事なんかあ……。

それでは。また次回。

好きな人の好きな物を好きになれるとは限らない。

2023-06-20 | 物語全般
知人から貰った本の感想を記録。ここ1ヶ月強で必死に読んだ。

1.『首都感染』(by高嶋哲夫)
鳥インフルエンザから派生した新型インフルエンザが、中国を基点に発生。
しかも、潜伏の後、瞬く間に全身出血にまで至る強毒。
それが北京で開催されたワールドカップを経て、全世界へ拡散されていく。
ただし、その先は良展開。
名医や政治家の連携により、日本は東京都内のみに感染を封じ込める事に成功。
量産可能なワクチンや、重症患者にも有効な特効薬が流通する。

2.『第三の時効』(by横山秀夫)
全6話収録の連作短編集。「F県警強行犯シリーズ」第1巻。
「笑わない」朽木の率いる1班。冷酷な楠見の率いる2班。叩き上げの村瀬の率いる3班。
以上、三つの派閥争いを交えて、事件捜査と解決が描かれる。
「アリバイ」「時効」「密室」といった定番モチーフを、現代の警察小説に落とし込んでいるのは確かに流石と言える。
巻末の解説で、『半落ち』のネタバレを知ってしまった。

3.『インデックス』(by誉田哲也)
全8話収録の連作短編集。
『ストロベリーナイト』から始まったシリーズの途中。
私の印象に残ったのは、『彼女のいたカフェ』と『落としの玲子』。
『ストロベリーナイト』や『ブルーマーダー』のネタバレ食らってしまった。

4.『闇に浮かぶ牛』(by P・J・トレイシー)
シリーズの2巻目。
単純に説明すると、「雛見沢の終末作戦中に偶然侵入してしまった第三者がガソリンバーベキュー作戦かまして惨劇を回避する話」。(おおむね合ってると思う)
いわゆるジェンダー論が頻出。おっぱいの話とかペニスの話とか真剣に語られている。
銃撃の描写も激しく、疲れた。

5.『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』(by宮部みゆき)
全4話収録の連作短編集。シリーズの2巻目。
前の話の出来事がそのまま次の話へつながっていくため、登場人物の数をはじめ、内容は次第に複雑になっていく。
個人的に印象に残ったのは、第3話の『あんじゅう』。
廃墟と化していた家屋の闇に棲む、名も無き物のお話。

本当は他に、もう5冊あったが、ここで限界。自分の好きな本を読みたい。

それでは。また次回。