伝説の歌番組・夜のヒットスタジオを語る

伝説の音楽番組「夜のヒットスタジオ」の22年間の足跡を通じて、日本の歌謡界が最も輝いていた時代を振り返ります。

夜ヒット・名シーン~サザンオールスターズ「Bye Bye My Love」(85年7月3日放送)

2007-08-23 | 夜のヒットスタジオ/名シーン
約半年ぶりの夜ヒット「名シーン」シリーズ、今回はサザンオールスターズ「Bye Bye My Love」(1985年7月3日放送)を取り上げます。 この歌は1980年代のサザンの楽曲の中でも2番目の好セールスを記録した彼らの代表作。シンセサイザーの音を強調した軽快な曲調とは裏腹に、この年世界的大ヒットとなった「We Are The World」への返答、というしっかりとした作品コンセプト、メッセージ性もあるところがさすがサザン、といったところでしょうか。

彼らのコンサートはその盛り上がり方、ファンとの一体感の強さという意味で他のアーティストよりも更に抜きんでた迫力がありますが、この「夜ヒット」においてもそのコンサートの再現、というといいすぎかもしれませんが、それこそ1978年7月の「衝撃のジョキングパンツ姿」での初登場以来、「気分しだいで責めないで」の頃には、桑田がクレーンに乗って歌を熱唱したり、いきなり上半身裸になって激しい身振り手振りをし出したり、「ミス・プランニューデイ」の時には、まるで当時の沢田研二ばりのような濃いメイクをして出てきたり、といろいろと番組の盛り上げに一役買ってくれた存在でした。

この「Bye Bye My Love」のシーンもそんな彼らだからこそ生まれた場面であるといえると思います。このときも最初の歌いだしはいつもどおり普通に歌を演奏していたのですが、後半に差し掛かる辺りで、後ろのひな壇に鎮座していた歌手・バンドがみな立ち上がり、リズムをとりながら手拍子をしだし、そして、途中でそのときの出演歌手の一組であるチェッカーズのメンバーやなぜかこの日ゲストとして呼ばれていた「東京ディズニーランド」の名物マスコット「ミッキーマウス」らが「乱入」し、他の出演者たちも一斉にひな壇を下りて盛り上がりがヒートアップしてゆくというシーンでした。 この場面を某有名動画投稿サイトで初めて見たとき、私は少し身震いがしました。何といっても、ボーカルの桑田佳祐やチェッカーズのメンバーを筆頭に、スタッフ・出演者が一丸となって盛り上がっていたこと、そしてその盛り上がりに往々にしてこういう場面で流れている妙に白けた空気というものではなく、まるで「祭」をみなで楽しんでいるような、それほどまでにそのスタジオにいた人々が一緒にこの瞬間を自然体で楽しんていた、という空気がとてつもなく感動的でした。

こういった「歌手・出演者が一緒になり番組を盛り上げ、そしてそれを楽しむ」という場面もまた、夜ヒットの醍醐味の一つでもありました。古くは西城秀樹の「ヤングマン」に始まり、とんねるずの「嵐のマッチョマン」やHOUND DOG・THE ALFEEのジョイントによる「SWEAT&TEARS+ff」などその回の最後がノリのいい歌となる場合によくこういった場面が発生していたような気がします。幅広いジャンルから出演者を募っていることもあり、他の番組で同様の場面が発生したとき以上に、その盛り上がり方は凄みを帯び、また視聴者から見てもその雰囲気は一際華やかであり、賑やかでもありました。司会の芳村真理は夜ヒットを「まるでお祭を毎週やっているみたいだった」と後に回顧していますが、こういった場面に遭遇する度に、その言葉がいつも思い出されます。

最近は録画の音楽番組が主流である上、歌手が全員ひな壇にすわって他のアーティストの歌を聞くという形ではなく、それぞれのアーティスト毎に歌・トークシーンを撮り、それを寄せ集めて一つの番組として放送するというケースが殆ど(但し、「ミュージックステーション」は例外)であるゆえ、こういった場面が突如登場するという機会も殆どなくなってしまいました。また、生放送スタイルを貫き通す「Mステ」でさえも、数年前まではそれこそサザンや泉谷しげるなどが登場する回にあっては、同様のシーンが幾度が生じていたのですが、ここ最近は、やはり「録画・ぶつ切り編集」というほかの競合番組の編集・演出方針が波及してしまったのか、そう言った盛り上がりを見せることも少なくなりつつあり、こういった部分も「音楽番組に元気がない」「見ていて退屈だ」といった批判が主張されている一つの理由となっている感は否めないと思います。また、アーティストそれぞれも「アーティストとしてのイメージ」を重視していることもあってか、「自分の楽曲を演奏すればそれで番組内での役割はおわり」という風潮が強まっているのも、そういった「ぶつ切り」のような編集を行わなければならなくなった背景としてあるのかもしれません。

この「Bye Bye My Love」での一種異様ともいえる盛り上がりを見せたシーンは、「音楽番組が元気のあった時代」を象徴する場面、或いは、今の音楽番組の製作者に「音楽番組とはもっとこうあるべき」という一つの示唆を与えている場面であるといっても過言ではないでしょう。音楽番組の現況を考慮してこのシーンを見ると、実に感慨深いものがあると思います。

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