先日、亡くなられた「歌謡曲黄金時代の大功労者」、作詞家の阿久悠さんを追悼する意味で、夜ヒットで歌われた阿久作品のを分かる範囲でリストアップしてみました。
<1969年>
11月5日:その時私に何が起こったの?/和田アキ子-1969年11月10日(第54回)
<1970年>
1月25日:白い蝶のサンバ/森山加代子-1970年3月16日(第72回)
8月1日:真夏のあらし/西郷輝彦-1970年8月3日(第92回)
10月(日付不明):棄てるものがあるうちはいい/北原ミレイ-1971年5月3日(第131回)
<1971年>
2月25日:また逢う日まで/尾崎紀世彦-1971年5月31日(第135回)
3月1日;約束/フォーリーブス-1971年4月19日(第129回)
4月25日:昨日・今日・明日/井上順之-1971年5月31日(第135回)
4月25日:さだめのように川は流れる/杏真理子-1971年10月4日(第153回)
6月5日:天使になれない/和田アキ子-1971年7月5日(第140回)
7月25日:とても不幸な朝がきた/黛ジュン-1971年6月28日(第139回)
7月25日:さよならをもう一度/尾崎紀世彦-1971年8月9日(第145回)
10月25日:今日で終って/ちあきなおみ-1971年10月18日(第155回)
11月5日:夜明けの夢/和田アキ子-1971年10月25日(第156回)
11月25日:愛する人はひとり/尾崎紀世彦-1971年11月15日(第159回)
<1972年>
1月25日:京都から博多まで/藤圭子-1972年1月31日(第170回)
1月25日:幸福への招待/堺正章-1972年5月22日(第186回)
1月25日:本牧メルヘン/鹿内孝-1972年2月14日(第172回)
2月10日:恋した女/ちあきなおみ-1972年2月21日(第173回)
3月25日:あの鐘を鳴らすのはあなた/和田アキ子-1972年3月13日(第176回)
3月25日:ふたりは若かった/尾崎紀世彦-1972年3月13日(第176回)
3月25日:この愛に生きて/内山田洋とクールファイブ-1972年3月27日(第178回)
6月5日:どうにもとまらない/山本リンダ-1972年6月19日(第190回)
6月25日:夏の夜のサンバ/和田アキ子-1972年6月19日(第190回)
7月1日:ブルージンの子守唄/萩原健一-1972年8月7日(第197回)
7月1日:せんせい/森昌子-1972年8月14日(第198回)
7月25日:恋唄/内山田洋とクールファイブ-1972年7月24日(第195回)
9月5日:狂わせたいの/山本リンダ-1972年9月18日(第203回)
10月5日:同級生/森昌子-1972年11月20日(第212回)
10月20日:昭和放浪記/水前寺清子-1972年10月16日(第207回)
10月25日:放浪(さすらい)船/森進一-1972年10月30日(第209回)
10月25日:あなたに賭ける/尾崎紀世彦-1972年11月13日(第211回)
11月25日:じんじんさせて/山本リンダ-1972年11月20日(第212回)
11月25日:冬物語/フォー・クローバーズ-1973年1月29日(第222回)
<1973年>
1月15日:若草の髪かざり/チェリッシュ-1973年2月12日(第224回)
2月5日:中学三年生/森昌子-1973年2月19日(第225回)
2月25日:狙いうち/山本リンダ-1973年2月19日(第225回)
2月25日:しのび逢い/尾崎紀世彦-1973年3月19日(第229回)
2月25日:天使も夢みる/桜田淳子-1973年5月28日(第239回)
5月25日:コーヒーショップで/あべ静江-1973年6月4日(第240回)
6月10日:渚にて/いしだあゆみ-1973年7月30日(第248回)
6月25日:街の灯り/堺正章-1973年9月17日(第255回)
9月10日:愛の氷河/いしだあゆみ-1973年9月10日(第254回)
10月5日:冬の旅/森進一-1973年10月1日(第257回)
10月21日:愛さずにいられない/野口五郎-1973年10月15日(第259回)
11月5日:花物語/桜田淳子-1973年11月26日(第265回)
12月10日:きりきり舞い/山本リンダ-1973年12月10日(第267回)
<1974年>
1月(日付不明):突然の愛/あべ静江-1974年1月7日(第270回)
2月5日:こころの叫び/野口五郎-1974年1月28日(第273回)
2月25日:三色すみれ/桜田淳子-1974年4月1日(第282回)
3月10日:円舞曲(わるつ)/ちあきなおみ-1974年2月25日(第277回)
3月10日:花のようにひそやかに/小柳ルミ子-1974年4月1日(第282回)
4月10日:真赤な鞄/山本リンダ-1974年4月29日(第286回)
4月15日:さらば友よ/森進一-1974年4月1日(第282回)
5月25日:黄色いリボン/桜田淳子-1974年7月8日(第296回)
7月10日:奇蹟の唄/山本リンダ-1974年8月5日(第300回)
8月25日:闇夜にドッキリ/山本リンダ-1974年9月30日(第308回)
8月25日:花占い/桜田淳子-1974年10月21日(第311回)
8月(日付不明):秋日和/あべ静江-1974年8月26日(第303回)
9月1日:かなしみ模様/ちあきなおみ-1974年9月30日(第308回)
9月15日:北航路/森進一-1974年9月2日(第304回)
12月5日:はじめての出来事/桜田淳子-1974年12月2日(第317回)
<1975年>
3月5日:ひとり歩き/桜田淳子-1975年2月24日(第329回)
4月25日:二重唱(デュエット)/岩崎宏美-1975年6月16日(第345回)
5月(日付不明):乳母車/菅原洋一-1975年6月30日(第347回)
6月5日:十七の夏/桜田淳子-1975年7月7日(第348回)
7月25日:ロマンス/岩崎宏美-1975年11月24日(第368回)
8月21日:時の過ぎゆくままに/沢田研二-1975年9月1日(第356回)
8月25日:天使のくちびる/桜田淳子-1975年9月1日(第356回)
10月25日:センチメンタル/岩崎宏美-1975年12月15日(第371回)
11月25日:ゆれてる私/桜田淳子-1975年11月17日(第367回)
12月1日:北の宿から/都はるみ-1975年12月8日(第370回)
<1976年>
1月10日:故郷/森進一-1976年1月19日(第376回)
1月21日:立ちどまるなふりむくな/沢田研二-1976年1月26日(第377回)
1月25日:ファンタジー/岩崎宏美-1976年3月22日(第385回)
2月1日:おもいで岬/新沼謙治-1976年3月15日(第384回)
2月21日:二日酔い/梓みちよ-1976年3月8日(第383回)
2月25日:君よ抱かれて熱くなれ/西城秀樹-1976年2月23日(第381回)
2月25日:泣かないわ/桜田淳子-1976年2月23日(第381回)
3月1日:おまえさん/木の実ナナ-1976年5月17日(第393回)
4月5日:みかん/大竹しのぶ-1976年4月5日(第387回)
4月25日:未来/岩崎宏美-1976年4月26日(第390回)
5月25日:夏にご用心/桜田淳子-1976年5月24日(第394回)
6月1日:嫁に来ないか/新沼謙治-1976年6月28日(第399回)
6月5日:ジャガー/西城秀樹-1976年6月14日(第397回)
6月5日:踊り子/フォーリーブス-1976年6月28日(第399回)
6月25日:夏八景/麻丘めぐみ-1976年7月26日(第403回)
7月21日:二十二歳まで/ダークダックス-1976年8月23日(第407回)
8月1日:霧のめぐり逢い/岩崎宏美-1976年8月16日(第406回)
8月21日:青春時代/森田公一とトップギャラン-1976年9月13日(第410回)
8月25日:ペッパー警部/ピンクレディー-1976年12月20日(第424回)
8月25日:ねえ!気がついてよ/桜田淳子-1976年9月6日(第409回)
9月5日:若き獅子たち/西城秀樹-1976年9月20日(第411回)
11月5日:ドリーム/岩崎宏美-1976年10月25日(第416回)
11月25日:SOS/ピンクレディー-1977年1月3日(第426回)
12月5日:もう一度だけふり向いて/桜田淳子-1976年12月13日(第423回)
12月20日:ラスト・シーン/西城秀樹-1976年12月20日(第424回)
<1977年>
1月1日:雨やどり/都はるみ-1977年2月28日(第434回)
1月1日:津軽海峡・冬景色/石川さゆり-1977年3月14日(第436回)
1月25日:想い出の樹の下で/岩崎宏美-1977年2月7日(第431回)
2月1日:さよならを言う気もない/沢田研二-1977年1月10日(第427回)
2月1日:ヘッドライト/新沼謙治-1977年1月24日(第429回)
2月25日:あなたのすべて/桜田淳子-1977年2月14日(第432回)
3月10日:カルメン'77/ピンクレディー-1977年3月28日(第438回)
3月15日:ブーメランストリート/西城秀樹-1977年3月14日(第436回)
4月25日:悲恋白書/岩崎宏美-1977年5月2日(第443回)
5月10日:能登半島/石川さゆり-1977年8月8日(第457回)
5月21日:勝手にしやがれ/沢田研二-1977年5月23日(第446回)
5月25日:気まぐれヴィーナス/桜田淳子-1977年5月9日(第444回)
6月5日:セクシーロックンローラー/西城秀樹-1977年6月13日(第449回)
6月10日:渚のシンドバッド/ピンクレディー-1977年6月27日(第451回)
6月25日:気絶するほど悩ましい/Char-1977年7月25日(第455回)
7月5日:熱帯魚/岩崎宏美-1977年7月18日(第454回)
8月21日:過ぎてしまえば/森田公一とトップギャラン-1977年8月29日(第460回)
9月1日:暖流/石川さゆり-1977年9月12日(第462回)
9月5日:思秋期/岩崎宏美-1977年9月12日(第462回)
9月5日:もう戻れない/桜田淳子-1977年8月22日(第459回)
9月5日:ウォンテッド(指名手配)/ピンクレディー-1977年9月5日(第461回)
9月5日:憎みきれないろくでなし/沢田研二-1977年9月5日(第461回)
9月5日:ボタンを外せ/西城秀樹-1977年9月26日(第464回)
10月5日:東京物語/森進一-1977年10月31日(第469回)
11月25日:逆光線/Char-1977年12月5日(第474回)
12月5日:UFO/ピンクレディー-1977年12月12日(第475回)
<1978年>
1月1日:ブーツをぬいで朝食を/西城秀樹-1977年12月26日(第477回)
1月25日:二十才前(はたちまえ)-1978年1月16日(第480回)
2月1日:サムライ/沢田研二-1978年1月30日(第482回)
2月5日:甘ったれ/森進一-1978年1月30日(第482回)
3月25日:闘牛士/Char-1978年4月10日(第492回)
3月25日:サウスポー/ピンクレディー-1978年3月13日(第488回)
3月25日:狼なんか怖くない/石野真子-1978年3月27日(第490回)
4月1日:砂になりたい/石川さゆり-1978年5月8日(第496回)
5月5日:あざやかな場面/岩崎宏美-1978年5月1日(第495回)
5月21日:ダーリング/沢田研二-1978年5月22日(第498回)
5月25日:林檎抄/森進一-1978年5月29日(第499回)
5月25日:炎/西城秀樹-1978年6月5日(第500回)
6月21日:林檎殺人事件/郷ひろみ・樹木希林-1978年6月12日(第501回)
6月25日:モンスター/ピンクレディー-1978年6月19日(第502回)
6月25日:わたしの首領(ドン)/石野真子-1978年7月10日(第505回)
7月1日:火の国へ/石川さゆり-1978年6月26日(第503回)
7月25日:シンデレラ・ハネムーン/岩崎宏美-1978年7月17日(第506回)
8月5日:たそがれ・マイラブ/大橋純子-1978年9月4日(第513回)
8月25日:ブルースカイブルー/西城秀樹-1978年8月28日(第512回)
9月5日:透明人間/ピンクレディー-1978年8月28日(第512回)
9月5日:彼岸花/森昌子-1978年9月18日(第515回)
9月10日:LOVE(抱きしめたい)/沢田研二-1978年9月4日(第513回)
10月5日:失恋記念日/石野真子-1978年10月16日(第519回)
12月5日:カメレオン・アーミー/ピンクレディー-1978年12月11日(第527回)
12月25日:送春曲/野口五郎ー1978年12月18日(第528回)
<1979年>
2月1日:カサブランカ・ダンディ/沢田研二-1979年2月19日(第537回)
2月25日:サンタモニカの風/桜田淳子-1979年3月19日(第541回)
4月5日:プリティー・プリティー/石野真子-1979年4月9日(第544回)
4月21日:真夏の夜の夢/野口五郎-1979年4月2日(第543回)
5月21日:OH! ギャル/沢田研二-1979年5月21日(第550回)
5月25日:舟唄/八代亜紀-1979年6月11日(第553回)
5月25日:MISS KISS/桜田淳子-1979年6月25日(第555回)
6月21日:いつも心に太陽を/郷ひろみ-1979年6月11日(第553回)
7月5日:波乗りパイレーツ/ピンクレディー-1979年7月16日(第558回)
7月5日:ワンダー・ブギ/石野真子-1979年8月6日(第561回)
7月10日:女になって出直せよ/野口五郎-1979年7月2日(第556回)
7月25日:赤道直下/ジョニー大倉-1979年8月20日(第563回)
9月9日:マンデー・モナリザ・クラブ/ピンクレディー-1979年9月10日(第566回)
<1980年>
4月25日:雨の慕情/八代亜紀-1980年4月7日(第595回)
5月1日:涙きらり/森進一-1980年5月5日(第599回)
9月22日:酒場でDABADA/沢田研二-1980年9月22日(第619回)
9月25日:港町絶唱/八代亜紀-1980年9月22日(第619回)
10月25日:燃えつきて/大橋純子-1980年11月17日(第627回)
<1981年>
4月1日:もしもピアノが弾けたなら/西田敏行-1981年6月8日(第656回)
9月5日:めらんこりぃ白書/柏原よしえ-1981年9月21日(第671回)
<1982年>
1月10日:麗人/沢田研二-1982年1月11日(第687回)
3月14日:愛しつづけるボレロ/五木ひろし-1982年3月15日(第696回)
7月5日:契り/五木ひろし-1982年6月28日(第711回)
10月25日:居酒屋/五木ひろし・木の実ナナ-1983年3月14日(第747回)
<1983年>
1月25日:心乱して運命かえて/内藤やす子-1983年2月7日(第742回)
5月12日:素敵にシンデレラ・コンプレックス/郷ひろみ-1983年5月16日(第756回)
5月21日:純愛さがし/高田みづえ-1983年5月30日(第758回)
5月21日:湘南哀歌/山本譲二-1983年8月1日(第767回)
8月21日:日本海/八代亜紀-1983年8月29日(第771回)
9月1日:ほっといてくれ/郷ひろみ-1983年9月5日(第772回)
10月(日付不明)/銀座の雨の物語/小西博之・清水由貴子-1983年10月17日(第778回)
<1984年>
5月21日:未完の肖像/岩崎宏美-1984年5月21日(第808回)
5月23日:騎士道/田原俊彦-1984年5月14日(第807回)
8月5日:北の蛍/森進一-1984年9月3日(第823回)
<1985年>
7月21日:夏ざかりほの字組/Toshi&Naoko(田原俊彦・研ナオコ)-1985年7月17日(第867回)
12月1日:熱き心に/小林旭-1986年10月15日(第931回)
<1986年>
3月5日:Hardにやさしく/田原俊彦-1986年3月12日(第900回)
4月21日:わたしを棄てたらこわいよ/内藤やす子-1986年6月11日(第913回)
6月19日:ベルエポックによろしく-WHAT'S 55-/田原俊彦-1986年6月4日(第912回)
6月25日:もう一度ふたりで歌いたい/和田アキ子-1986年7月9日(第917回)
9月21日:あッ/田原俊彦-1986年9月17日(第927回)
10月22日:女神/沢田研二-1986年10月22日(第932回)
11月25日:旅空夜空/小林旭-1987年2月18日(第949回)
<1987年>
1月21日:KID/田原俊彦-1987年1月14日(第944回)
3月21日:きわどい季節-Summer gruffiti-/沢田研二-1987年6月3日(第964回)
4月1日:追憶/五木ひろし-1987年4月1日(第955回)
5月1日:A・r・i・e・s/柏原芳恵-1987年5月27日(第963回)
5月21日:夜叉のように/山本譲二-1987年11月18日(第988回)
8月25日:抱擁/和田アキ子-1987年10月7日(第982回)
10月5日:花も嵐も放浪記/五木ひろし-1987年10月7日(第982回)
10月26日:冬の孔雀/柏原芳恵-1987年10月14日(第983回)
<1988年>
3月21日:豊後水道/川中美幸-1988年4月6日(第1008回)
4月21日:かもめの歌/八代亜紀-1988年6月8日(第1017回)
7月15日:恋するような友情を/シブがき隊-1988年7月6日(第1021回)
8月22日:湊の五番町/五木ひろし-1988年8月24日(第1028回)
10月26日:Stranger-Only tonight-/沢田研二-1988年10月26日(第1037回)
12月1日:絆/五木ひろし-1988年12月14日(第1044回)
<1989年>
11月1日:学園天国/小泉今日子-1989年10月25日(第1086回)
<1990年>
2月10日:花-ブーケ-束/八代亜紀-1990年2月14日(第1101回)
これらはほんの一部で、実際はもっと多くの曲が夜ヒットでも披露されていた可能性が高いです。
特に特筆すべきは1976~1978年辺りの作品の多さで、その多くがヒットチャート上位に入る大ヒットとなっており、この時代の音楽賞レースを席巻した作品がズラリと並んでいます。また、夜ヒットという番組史においてもほぼ毎週、最低でも1~2曲は彼の作品が紹介されていたわけで、その点から見ても、いかに一時代を築いた作家であったかが一目瞭然だと思います。
1980年代に入ると、徐々に作詞家としての活動よりも「瀬戸内少年野球団」などに代表される小説家・エッセイストとしての活動に重きが置かれるようになっていき、作詞を手がける頻度もスローペースとなっていきましたが、秋元康や松本隆ら1980年代の歌謡界を代表する作詞家の活躍しやすい土壌を築いたのは紛れもなく、阿久さんや、彼のライバルと目されていたなかにし礼などといった先駆者たちの功績によるところが大きいと思います。阿久さんやなかにし礼、故・安井かずみさんらが台頭する以前の日本の歌謡曲の詞的世界はどちらかといえば、没個性的で定式ばったところがかなりあったように思いますが、彼らの台頭により、その世界観は劇的に拡大されたといえます。
それまでの「定式」をある程度崩壊させ、旧来型のよき伝統は堅守しつつも「時代が求めるニーズ」に敏感にアンテナを張り巡らせ、そして独特の感性によりそのニーズを自分なりに咀嚼(そしゃく)し、その上で個性的な詞的世界を創出して、ニーズに巧みに応えてゆく。今ではこういう捉え方は作詞家業においてはスタンダードすぎる考え方なのかもしれませんが、そのような新たな「規範意識」ともいうべきものを見事に浸透させた、という意味においても、阿久悠さんの名前とその偉業の数々は、今後も語り継がれて然るべきものといえると思います。
晩年、阿久さんは「歌謡曲における詞の力が弱まっている」と幾度となくインタビューに応じる際に、現代の音楽界に対する警鐘を鳴らしていました。それは、やはり「作詞家というポジションの向上に努めた」「作詞に対する意識の新たなスタンダードを築いた」という自負から出た重みのある言葉であると思います。現代の音楽界は詞の世界観が、そのやや乱暴な表現故に何度聞いても伝わりにくく、詞よりも音楽・サウンドという部分がかなり偏重されてしまっており(特に唄ありの音楽が主に「ダンスミュージック」という形で使われているのは個人的には「愚の骨頂」でしかないと感じます)、その点が日本の歌謡界を「くだらない」ものとしていることは否定できないでしょう。それはその時代時代のクリエーターが生まれ育ってきた環境によるところが大なわけで、それを劇的に改善する手立てを構築するというのはかなり難しいのも事実です。ただ、それだからといって、単に「あの人はすごかった、自分たちは追いつけない」といった単純な考えでその先駆者たちの偉業を純客観視するのではなく、先駆者たちの偉業の数々を主観的に捉え、そこから「詞と音の均衡をどうとるべきか」という部分を追求して、真に優れた作品を世に送り出してゆく。それぐらいの努力はすべきだろうと思います。明らかに現在人気のあるJ-POPのクリエーターたちはそういった本来為すべき「過去の偉業の研鑽」を怠惰しているようにしか思えない。それぐらいにレベルが低い作品が多すぎるような気がします。
そういった意味でも阿久さんのような抜群の存在感を以って毅然と真っ向から、今の音楽界に批判と提言をすることができる人物がいなくなってしまうのは大変残念なことであり、音楽界においてももっと彼が指摘をし、提案をし、改善をしていきたかったことも多かったであろうことを考慮すると、日本の音楽界にとり、彼の死去は、日本の歌謡界の大きな損失であると言わざるをえないでしょう。
今一度、「今」を駆け抜けるクリエーターに「音楽」「歌謡曲」というものの本来あるべき姿、どれを「守り」、どれを「壊す」のか、その程よい境界線がどこにあるのか、そういったものをこの阿久さんの死をきっかけとして追求してほしいところです。
<1969年>
11月5日:その時私に何が起こったの?/和田アキ子-1969年11月10日(第54回)
<1970年>
1月25日:白い蝶のサンバ/森山加代子-1970年3月16日(第72回)
8月1日:真夏のあらし/西郷輝彦-1970年8月3日(第92回)
10月(日付不明):棄てるものがあるうちはいい/北原ミレイ-1971年5月3日(第131回)
<1971年>
2月25日:また逢う日まで/尾崎紀世彦-1971年5月31日(第135回)
3月1日;約束/フォーリーブス-1971年4月19日(第129回)
4月25日:昨日・今日・明日/井上順之-1971年5月31日(第135回)
4月25日:さだめのように川は流れる/杏真理子-1971年10月4日(第153回)
6月5日:天使になれない/和田アキ子-1971年7月5日(第140回)
7月25日:とても不幸な朝がきた/黛ジュン-1971年6月28日(第139回)
7月25日:さよならをもう一度/尾崎紀世彦-1971年8月9日(第145回)
10月25日:今日で終って/ちあきなおみ-1971年10月18日(第155回)
11月5日:夜明けの夢/和田アキ子-1971年10月25日(第156回)
11月25日:愛する人はひとり/尾崎紀世彦-1971年11月15日(第159回)
<1972年>
1月25日:京都から博多まで/藤圭子-1972年1月31日(第170回)
1月25日:幸福への招待/堺正章-1972年5月22日(第186回)
1月25日:本牧メルヘン/鹿内孝-1972年2月14日(第172回)
2月10日:恋した女/ちあきなおみ-1972年2月21日(第173回)
3月25日:あの鐘を鳴らすのはあなた/和田アキ子-1972年3月13日(第176回)
3月25日:ふたりは若かった/尾崎紀世彦-1972年3月13日(第176回)
3月25日:この愛に生きて/内山田洋とクールファイブ-1972年3月27日(第178回)
6月5日:どうにもとまらない/山本リンダ-1972年6月19日(第190回)
6月25日:夏の夜のサンバ/和田アキ子-1972年6月19日(第190回)
7月1日:ブルージンの子守唄/萩原健一-1972年8月7日(第197回)
7月1日:せんせい/森昌子-1972年8月14日(第198回)
7月25日:恋唄/内山田洋とクールファイブ-1972年7月24日(第195回)
9月5日:狂わせたいの/山本リンダ-1972年9月18日(第203回)
10月5日:同級生/森昌子-1972年11月20日(第212回)
10月20日:昭和放浪記/水前寺清子-1972年10月16日(第207回)
10月25日:放浪(さすらい)船/森進一-1972年10月30日(第209回)
10月25日:あなたに賭ける/尾崎紀世彦-1972年11月13日(第211回)
11月25日:じんじんさせて/山本リンダ-1972年11月20日(第212回)
11月25日:冬物語/フォー・クローバーズ-1973年1月29日(第222回)
<1973年>
1月15日:若草の髪かざり/チェリッシュ-1973年2月12日(第224回)
2月5日:中学三年生/森昌子-1973年2月19日(第225回)
2月25日:狙いうち/山本リンダ-1973年2月19日(第225回)
2月25日:しのび逢い/尾崎紀世彦-1973年3月19日(第229回)
2月25日:天使も夢みる/桜田淳子-1973年5月28日(第239回)
5月25日:コーヒーショップで/あべ静江-1973年6月4日(第240回)
6月10日:渚にて/いしだあゆみ-1973年7月30日(第248回)
6月25日:街の灯り/堺正章-1973年9月17日(第255回)
9月10日:愛の氷河/いしだあゆみ-1973年9月10日(第254回)
10月5日:冬の旅/森進一-1973年10月1日(第257回)
10月21日:愛さずにいられない/野口五郎-1973年10月15日(第259回)
11月5日:花物語/桜田淳子-1973年11月26日(第265回)
12月10日:きりきり舞い/山本リンダ-1973年12月10日(第267回)
<1974年>
1月(日付不明):突然の愛/あべ静江-1974年1月7日(第270回)
2月5日:こころの叫び/野口五郎-1974年1月28日(第273回)
2月25日:三色すみれ/桜田淳子-1974年4月1日(第282回)
3月10日:円舞曲(わるつ)/ちあきなおみ-1974年2月25日(第277回)
3月10日:花のようにひそやかに/小柳ルミ子-1974年4月1日(第282回)
4月10日:真赤な鞄/山本リンダ-1974年4月29日(第286回)
4月15日:さらば友よ/森進一-1974年4月1日(第282回)
5月25日:黄色いリボン/桜田淳子-1974年7月8日(第296回)
7月10日:奇蹟の唄/山本リンダ-1974年8月5日(第300回)
8月25日:闇夜にドッキリ/山本リンダ-1974年9月30日(第308回)
8月25日:花占い/桜田淳子-1974年10月21日(第311回)
8月(日付不明):秋日和/あべ静江-1974年8月26日(第303回)
9月1日:かなしみ模様/ちあきなおみ-1974年9月30日(第308回)
9月15日:北航路/森進一-1974年9月2日(第304回)
12月5日:はじめての出来事/桜田淳子-1974年12月2日(第317回)
<1975年>
3月5日:ひとり歩き/桜田淳子-1975年2月24日(第329回)
4月25日:二重唱(デュエット)/岩崎宏美-1975年6月16日(第345回)
5月(日付不明):乳母車/菅原洋一-1975年6月30日(第347回)
6月5日:十七の夏/桜田淳子-1975年7月7日(第348回)
7月25日:ロマンス/岩崎宏美-1975年11月24日(第368回)
8月21日:時の過ぎゆくままに/沢田研二-1975年9月1日(第356回)
8月25日:天使のくちびる/桜田淳子-1975年9月1日(第356回)
10月25日:センチメンタル/岩崎宏美-1975年12月15日(第371回)
11月25日:ゆれてる私/桜田淳子-1975年11月17日(第367回)
12月1日:北の宿から/都はるみ-1975年12月8日(第370回)
<1976年>
1月10日:故郷/森進一-1976年1月19日(第376回)
1月21日:立ちどまるなふりむくな/沢田研二-1976年1月26日(第377回)
1月25日:ファンタジー/岩崎宏美-1976年3月22日(第385回)
2月1日:おもいで岬/新沼謙治-1976年3月15日(第384回)
2月21日:二日酔い/梓みちよ-1976年3月8日(第383回)
2月25日:君よ抱かれて熱くなれ/西城秀樹-1976年2月23日(第381回)
2月25日:泣かないわ/桜田淳子-1976年2月23日(第381回)
3月1日:おまえさん/木の実ナナ-1976年5月17日(第393回)
4月5日:みかん/大竹しのぶ-1976年4月5日(第387回)
4月25日:未来/岩崎宏美-1976年4月26日(第390回)
5月25日:夏にご用心/桜田淳子-1976年5月24日(第394回)
6月1日:嫁に来ないか/新沼謙治-1976年6月28日(第399回)
6月5日:ジャガー/西城秀樹-1976年6月14日(第397回)
6月5日:踊り子/フォーリーブス-1976年6月28日(第399回)
6月25日:夏八景/麻丘めぐみ-1976年7月26日(第403回)
7月21日:二十二歳まで/ダークダックス-1976年8月23日(第407回)
8月1日:霧のめぐり逢い/岩崎宏美-1976年8月16日(第406回)
8月21日:青春時代/森田公一とトップギャラン-1976年9月13日(第410回)
8月25日:ペッパー警部/ピンクレディー-1976年12月20日(第424回)
8月25日:ねえ!気がついてよ/桜田淳子-1976年9月6日(第409回)
9月5日:若き獅子たち/西城秀樹-1976年9月20日(第411回)
11月5日:ドリーム/岩崎宏美-1976年10月25日(第416回)
11月25日:SOS/ピンクレディー-1977年1月3日(第426回)
12月5日:もう一度だけふり向いて/桜田淳子-1976年12月13日(第423回)
12月20日:ラスト・シーン/西城秀樹-1976年12月20日(第424回)
<1977年>
1月1日:雨やどり/都はるみ-1977年2月28日(第434回)
1月1日:津軽海峡・冬景色/石川さゆり-1977年3月14日(第436回)
1月25日:想い出の樹の下で/岩崎宏美-1977年2月7日(第431回)
2月1日:さよならを言う気もない/沢田研二-1977年1月10日(第427回)
2月1日:ヘッドライト/新沼謙治-1977年1月24日(第429回)
2月25日:あなたのすべて/桜田淳子-1977年2月14日(第432回)
3月10日:カルメン'77/ピンクレディー-1977年3月28日(第438回)
3月15日:ブーメランストリート/西城秀樹-1977年3月14日(第436回)
4月25日:悲恋白書/岩崎宏美-1977年5月2日(第443回)
5月10日:能登半島/石川さゆり-1977年8月8日(第457回)
5月21日:勝手にしやがれ/沢田研二-1977年5月23日(第446回)
5月25日:気まぐれヴィーナス/桜田淳子-1977年5月9日(第444回)
6月5日:セクシーロックンローラー/西城秀樹-1977年6月13日(第449回)
6月10日:渚のシンドバッド/ピンクレディー-1977年6月27日(第451回)
6月25日:気絶するほど悩ましい/Char-1977年7月25日(第455回)
7月5日:熱帯魚/岩崎宏美-1977年7月18日(第454回)
8月21日:過ぎてしまえば/森田公一とトップギャラン-1977年8月29日(第460回)
9月1日:暖流/石川さゆり-1977年9月12日(第462回)
9月5日:思秋期/岩崎宏美-1977年9月12日(第462回)
9月5日:もう戻れない/桜田淳子-1977年8月22日(第459回)
9月5日:ウォンテッド(指名手配)/ピンクレディー-1977年9月5日(第461回)
9月5日:憎みきれないろくでなし/沢田研二-1977年9月5日(第461回)
9月5日:ボタンを外せ/西城秀樹-1977年9月26日(第464回)
10月5日:東京物語/森進一-1977年10月31日(第469回)
11月25日:逆光線/Char-1977年12月5日(第474回)
12月5日:UFO/ピンクレディー-1977年12月12日(第475回)
<1978年>
1月1日:ブーツをぬいで朝食を/西城秀樹-1977年12月26日(第477回)
1月25日:二十才前(はたちまえ)-1978年1月16日(第480回)
2月1日:サムライ/沢田研二-1978年1月30日(第482回)
2月5日:甘ったれ/森進一-1978年1月30日(第482回)
3月25日:闘牛士/Char-1978年4月10日(第492回)
3月25日:サウスポー/ピンクレディー-1978年3月13日(第488回)
3月25日:狼なんか怖くない/石野真子-1978年3月27日(第490回)
4月1日:砂になりたい/石川さゆり-1978年5月8日(第496回)
5月5日:あざやかな場面/岩崎宏美-1978年5月1日(第495回)
5月21日:ダーリング/沢田研二-1978年5月22日(第498回)
5月25日:林檎抄/森進一-1978年5月29日(第499回)
5月25日:炎/西城秀樹-1978年6月5日(第500回)
6月21日:林檎殺人事件/郷ひろみ・樹木希林-1978年6月12日(第501回)
6月25日:モンスター/ピンクレディー-1978年6月19日(第502回)
6月25日:わたしの首領(ドン)/石野真子-1978年7月10日(第505回)
7月1日:火の国へ/石川さゆり-1978年6月26日(第503回)
7月25日:シンデレラ・ハネムーン/岩崎宏美-1978年7月17日(第506回)
8月5日:たそがれ・マイラブ/大橋純子-1978年9月4日(第513回)
8月25日:ブルースカイブルー/西城秀樹-1978年8月28日(第512回)
9月5日:透明人間/ピンクレディー-1978年8月28日(第512回)
9月5日:彼岸花/森昌子-1978年9月18日(第515回)
9月10日:LOVE(抱きしめたい)/沢田研二-1978年9月4日(第513回)
10月5日:失恋記念日/石野真子-1978年10月16日(第519回)
12月5日:カメレオン・アーミー/ピンクレディー-1978年12月11日(第527回)
12月25日:送春曲/野口五郎ー1978年12月18日(第528回)
<1979年>
2月1日:カサブランカ・ダンディ/沢田研二-1979年2月19日(第537回)
2月25日:サンタモニカの風/桜田淳子-1979年3月19日(第541回)
4月5日:プリティー・プリティー/石野真子-1979年4月9日(第544回)
4月21日:真夏の夜の夢/野口五郎-1979年4月2日(第543回)
5月21日:OH! ギャル/沢田研二-1979年5月21日(第550回)
5月25日:舟唄/八代亜紀-1979年6月11日(第553回)
5月25日:MISS KISS/桜田淳子-1979年6月25日(第555回)
6月21日:いつも心に太陽を/郷ひろみ-1979年6月11日(第553回)
7月5日:波乗りパイレーツ/ピンクレディー-1979年7月16日(第558回)
7月5日:ワンダー・ブギ/石野真子-1979年8月6日(第561回)
7月10日:女になって出直せよ/野口五郎-1979年7月2日(第556回)
7月25日:赤道直下/ジョニー大倉-1979年8月20日(第563回)
9月9日:マンデー・モナリザ・クラブ/ピンクレディー-1979年9月10日(第566回)
<1980年>
4月25日:雨の慕情/八代亜紀-1980年4月7日(第595回)
5月1日:涙きらり/森進一-1980年5月5日(第599回)
9月22日:酒場でDABADA/沢田研二-1980年9月22日(第619回)
9月25日:港町絶唱/八代亜紀-1980年9月22日(第619回)
10月25日:燃えつきて/大橋純子-1980年11月17日(第627回)
<1981年>
4月1日:もしもピアノが弾けたなら/西田敏行-1981年6月8日(第656回)
9月5日:めらんこりぃ白書/柏原よしえ-1981年9月21日(第671回)
<1982年>
1月10日:麗人/沢田研二-1982年1月11日(第687回)
3月14日:愛しつづけるボレロ/五木ひろし-1982年3月15日(第696回)
7月5日:契り/五木ひろし-1982年6月28日(第711回)
10月25日:居酒屋/五木ひろし・木の実ナナ-1983年3月14日(第747回)
<1983年>
1月25日:心乱して運命かえて/内藤やす子-1983年2月7日(第742回)
5月12日:素敵にシンデレラ・コンプレックス/郷ひろみ-1983年5月16日(第756回)
5月21日:純愛さがし/高田みづえ-1983年5月30日(第758回)
5月21日:湘南哀歌/山本譲二-1983年8月1日(第767回)
8月21日:日本海/八代亜紀-1983年8月29日(第771回)
9月1日:ほっといてくれ/郷ひろみ-1983年9月5日(第772回)
10月(日付不明)/銀座の雨の物語/小西博之・清水由貴子-1983年10月17日(第778回)
<1984年>
5月21日:未完の肖像/岩崎宏美-1984年5月21日(第808回)
5月23日:騎士道/田原俊彦-1984年5月14日(第807回)
8月5日:北の蛍/森進一-1984年9月3日(第823回)
<1985年>
7月21日:夏ざかりほの字組/Toshi&Naoko(田原俊彦・研ナオコ)-1985年7月17日(第867回)
12月1日:熱き心に/小林旭-1986年10月15日(第931回)
<1986年>
3月5日:Hardにやさしく/田原俊彦-1986年3月12日(第900回)
4月21日:わたしを棄てたらこわいよ/内藤やす子-1986年6月11日(第913回)
6月19日:ベルエポックによろしく-WHAT'S 55-/田原俊彦-1986年6月4日(第912回)
6月25日:もう一度ふたりで歌いたい/和田アキ子-1986年7月9日(第917回)
9月21日:あッ/田原俊彦-1986年9月17日(第927回)
10月22日:女神/沢田研二-1986年10月22日(第932回)
11月25日:旅空夜空/小林旭-1987年2月18日(第949回)
<1987年>
1月21日:KID/田原俊彦-1987年1月14日(第944回)
3月21日:きわどい季節-Summer gruffiti-/沢田研二-1987年6月3日(第964回)
4月1日:追憶/五木ひろし-1987年4月1日(第955回)
5月1日:A・r・i・e・s/柏原芳恵-1987年5月27日(第963回)
5月21日:夜叉のように/山本譲二-1987年11月18日(第988回)
8月25日:抱擁/和田アキ子-1987年10月7日(第982回)
10月5日:花も嵐も放浪記/五木ひろし-1987年10月7日(第982回)
10月26日:冬の孔雀/柏原芳恵-1987年10月14日(第983回)
<1988年>
3月21日:豊後水道/川中美幸-1988年4月6日(第1008回)
4月21日:かもめの歌/八代亜紀-1988年6月8日(第1017回)
7月15日:恋するような友情を/シブがき隊-1988年7月6日(第1021回)
8月22日:湊の五番町/五木ひろし-1988年8月24日(第1028回)
10月26日:Stranger-Only tonight-/沢田研二-1988年10月26日(第1037回)
12月1日:絆/五木ひろし-1988年12月14日(第1044回)
<1989年>
11月1日:学園天国/小泉今日子-1989年10月25日(第1086回)
<1990年>
2月10日:花-ブーケ-束/八代亜紀-1990年2月14日(第1101回)
これらはほんの一部で、実際はもっと多くの曲が夜ヒットでも披露されていた可能性が高いです。
特に特筆すべきは1976~1978年辺りの作品の多さで、その多くがヒットチャート上位に入る大ヒットとなっており、この時代の音楽賞レースを席巻した作品がズラリと並んでいます。また、夜ヒットという番組史においてもほぼ毎週、最低でも1~2曲は彼の作品が紹介されていたわけで、その点から見ても、いかに一時代を築いた作家であったかが一目瞭然だと思います。
1980年代に入ると、徐々に作詞家としての活動よりも「瀬戸内少年野球団」などに代表される小説家・エッセイストとしての活動に重きが置かれるようになっていき、作詞を手がける頻度もスローペースとなっていきましたが、秋元康や松本隆ら1980年代の歌謡界を代表する作詞家の活躍しやすい土壌を築いたのは紛れもなく、阿久さんや、彼のライバルと目されていたなかにし礼などといった先駆者たちの功績によるところが大きいと思います。阿久さんやなかにし礼、故・安井かずみさんらが台頭する以前の日本の歌謡曲の詞的世界はどちらかといえば、没個性的で定式ばったところがかなりあったように思いますが、彼らの台頭により、その世界観は劇的に拡大されたといえます。
それまでの「定式」をある程度崩壊させ、旧来型のよき伝統は堅守しつつも「時代が求めるニーズ」に敏感にアンテナを張り巡らせ、そして独特の感性によりそのニーズを自分なりに咀嚼(そしゃく)し、その上で個性的な詞的世界を創出して、ニーズに巧みに応えてゆく。今ではこういう捉え方は作詞家業においてはスタンダードすぎる考え方なのかもしれませんが、そのような新たな「規範意識」ともいうべきものを見事に浸透させた、という意味においても、阿久悠さんの名前とその偉業の数々は、今後も語り継がれて然るべきものといえると思います。
晩年、阿久さんは「歌謡曲における詞の力が弱まっている」と幾度となくインタビューに応じる際に、現代の音楽界に対する警鐘を鳴らしていました。それは、やはり「作詞家というポジションの向上に努めた」「作詞に対する意識の新たなスタンダードを築いた」という自負から出た重みのある言葉であると思います。現代の音楽界は詞の世界観が、そのやや乱暴な表現故に何度聞いても伝わりにくく、詞よりも音楽・サウンドという部分がかなり偏重されてしまっており(特に唄ありの音楽が主に「ダンスミュージック」という形で使われているのは個人的には「愚の骨頂」でしかないと感じます)、その点が日本の歌謡界を「くだらない」ものとしていることは否定できないでしょう。それはその時代時代のクリエーターが生まれ育ってきた環境によるところが大なわけで、それを劇的に改善する手立てを構築するというのはかなり難しいのも事実です。ただ、それだからといって、単に「あの人はすごかった、自分たちは追いつけない」といった単純な考えでその先駆者たちの偉業を純客観視するのではなく、先駆者たちの偉業の数々を主観的に捉え、そこから「詞と音の均衡をどうとるべきか」という部分を追求して、真に優れた作品を世に送り出してゆく。それぐらいの努力はすべきだろうと思います。明らかに現在人気のあるJ-POPのクリエーターたちはそういった本来為すべき「過去の偉業の研鑽」を怠惰しているようにしか思えない。それぐらいにレベルが低い作品が多すぎるような気がします。
そういった意味でも阿久さんのような抜群の存在感を以って毅然と真っ向から、今の音楽界に批判と提言をすることができる人物がいなくなってしまうのは大変残念なことであり、音楽界においてももっと彼が指摘をし、提案をし、改善をしていきたかったことも多かったであろうことを考慮すると、日本の音楽界にとり、彼の死去は、日本の歌謡界の大きな損失であると言わざるをえないでしょう。
今一度、「今」を駆け抜けるクリエーターに「音楽」「歌謡曲」というものの本来あるべき姿、どれを「守り」、どれを「壊す」のか、その程よい境界線がどこにあるのか、そういったものをこの阿久さんの死をきっかけとして追求してほしいところです。