伝説の歌番組・夜のヒットスタジオを語る

伝説の音楽番組「夜のヒットスタジオ」の22年間の足跡を通じて、日本の歌謡界が最も輝いていた時代を振り返ります。

夜ヒット・名シーン/EPO with 鈴木雅之「Down Townラプソディー」

2008-06-13 | 夜のヒットスタジオ/名シーン
久々の夜ヒット・名シーン、今回はEPO with鈴木雅之による「Down Townラプソディー」(87年3月25日放送)を紹介します。

この曲はEPOの13枚目のシングルとして87年3月10日にリリースされた作品で、作詞・作曲もEPO自身が担当。同曲リリースの約1ヵ月後に発売されたアルバム「Go Go EPO」(87年4月21日リリース)にも収録されています。この曲の収録に当たって鈴木雅之も「Mr.SoulMan」という名義で参加。その縁でこの時のヒットスタジオにも2人揃っての登場ということになったようです。

上記アルバムの大半の収録曲の演奏を担当した実力派バンド、センチメンタル・シティ・ロマンスがこのヒットスタジオの出演時にもバッグで演奏を担当。その実力派が奏でる音色の上に乗せた2人の大人の実力派シンガーの歌の駆け引きは、一度見たら目に焼きついて離れない、それほどに見る側に臨場感を与える名シーンでありました。

センターに立ち、軽妙なコーラスを聞かせるEPOの背後から、歌手達が座っている詰所のすぐとなりにコートを羽織った鈴木雅之のソウルフルなコーラスがかぶさり、そのふたりのハーモニーが時間が経つにつれ、より迫力の度を増してゆき、ラストに向けて続くスキャットの部分の2人の掛け合いの部分には「実力のぶつけ合い」といった雰囲気すら感じ取ることができ、半ば鬼気迫るものがありました。しかし、その「実力のぶつけ合い」は決してこの曲が持っている都会的な雰囲気を壊すわけではなく、むしろその世界観によりリアルさを持たせていた、という点で高貴さの漂うものでもありました。

初期のジョイント企画は別名「対決」コーナーと称され、歌手同士のいわば実力のぶつけ合いというところに力点が置かれていたようですが、このシーンはこのジョイント企画の狙いが見事にマッチした隠れた名場面であったといえるかもしれません。

ここまで2人の高いボーカリストとしての実力がより際立って映ったのは、一つにはこのときのステージングの演出のシンプルさという点もあるのかもしれません。

このときに用意されたセットといえば、階段の上に置かれたビル街のシルエットを模ったセット(このセットはよくヒットスタジオでは多くの場面で転用されていたので当時この番組を見ていた方で記憶にある人は多いはずです)と、EPO・鈴木の立ち位置のサイドに、公園等でよく見られる形状の大きな照明がそれぞれ一つずつ置かれているだけ。しかもスタジオの背景色は紺色とも紫色ともとれるような暗い感じの配色。途中で大きなセット転換が行われるといった派手な演出も用意されませんでした。

あえて、この曲の持つ都会的なムードを派手派手しい演出やセットで壊すことは避け、最大限ボーカル二人の持つ高い実力を活かしてそのムードを表現しようという判断が当時の演出陣の間でも働いたのでしょうが、その判断はこの場面に関しては見事にプラスに作用していたのではないかと思います。

そしてもう一つは、やはりバンド陣も含めてこの曲のステージングに関わった演者すべてが、いい意味で「子供に媚びていない」というところもこのシーンの魅力につながっているという気もします。

テレビという媒体、特にこういう流行の歌を取り扱う歌番組ということになると、どうしても大人に対するメッセージをこめた曲を紹介するときでも最大の「お客」ともいえる「子供」に対して何らかの迎合を演出面においてとる必要が生じる場合も多いわけですが、この時のシーンにはそういった悪い表現をすれば「視聴率迎合主義」ともいえる要素が全くなかった、という印象を私は受けました。それゆえに楽曲のリアリティーさが、見ている視聴者側には「等身大」のイメージで感じ取ることができ、心に響く要素があったともいえるのかもしれません。

テレビやライブ・コンサートを通じて歌というものを聞くに当たって、やはりその時の環境であるとか演出というのはその世界をより具現化する、そしてアーティスト側から最高のパフォーマンスを引き出す上においても最も重要な要素となってくるという風に私などは常々感じています。その想いをこのシーンを見たときに再確認した次第です。

某動画サイトにはまだこの映像が上がっているようです。このシーンを知らない方にも是非一度、EPO・鈴木雅之、両人の高いボーカル技術とリアリティー漂う歌の世界を存分に堪能して頂きたいと同時に「大人の歌番組」としてのヒットスタジオの魅力にも是非触れて頂きたいと思います(※動画リンクは下の番組ロゴ画像に貼ってあります)。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿