伝説の歌番組・夜のヒットスタジオを語る

伝説の音楽番組「夜のヒットスタジオ」の22年間の足跡を通じて、日本の歌謡界が最も輝いていた時代を振り返ります。

夜のヒットスタジオ・歌手別出演履歴<33> チェッカーズ

2007-10-23 | 夜のヒットスタジオ/歌手別出演履歴

<チェッカーズ>
◆初出演:1984年2月20日(第795回)「涙のリクエスト」
◆最終出演:1990年8月22日(第1126回)「One more glass of Red wine」「涙のリクエスト~ギザギザハートの子守唄」
◆出演回数:69回

01 84/02/20 0795 涙のリクエスト(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1984/01/21 HC:2位
02 84/04/02 0801 涙のリクエスト
03 84/05/28 0809 涙のリクエスト~ギザギザハートの子守唄(詞:康珍化 曲:芹沢廣明 R:1983/09/21 HC:8位哀しくてジェラシー(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1984/05/01 HC:1位)
04 84/06/18 0812 哀しくてジェラシー
05 84/07/23 0817 哀しくてジェラシー
06 84/08/27 0822 星屑のステージ(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1984/08/23 HC:1位
07 84/09/17 0825 星屑のステージ
08 84/10/22 0830 星屑のステージ
09 84/11/12 0833 ジュリアに傷心(ハートブレイク)(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1984/11/21 HC:1位
10 84/12/10 0837 ジュリアに傷心(ハートブレイク)
11 85/01/21 0842 ジュリアに傷心(ハートブレイク)
12 85/03/18 0850 あの娘とスキャンダル(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1985/03/21 HC:1位)
13 85/04/03 0852 あの娘とスキャンダル
14 85/05/01 0856 あの娘とスキャンダル
15 85/05/29 0860 ウィークエンド・アバンチュール(Album「絶対チェッカーズ!!」より 詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:84/07/21)(※初めてシングルA面曲以外の楽曲を披露)
16 85/06/19 0863 俺たちのロカビリーナイト(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1985/07/05 HC:1位
17 85/07/03 0865 俺たちのロカビリーナイト
18 85/08/28 0873 俺たちのロカビリーナイト
19 85/10/02 0878 Summer Rain(Album「毎日!!チェッカーズ」より 詞:藤井郁弥 曲:藤井尚之 R:1985/08/21)
20 85/10/16 0880 (※野球中継挿入による臨時編成のため歌唱なし)
21 85/11/06 0883 神様ヘルプ!(詞:康珍化 曲:芹沢廣明 R:1985/11/01 HC:1位
22 85/11/27 0886 神様ヘルプ!
23 85/12/25 0890 神様ヘルプ!
24 86/01/22 0893 HEART OF RAINBOW(12inch Single 詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1985/09/21 HC:1位
25 86/02/19 0897 OH! POPSTAR(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1986/02/21 HC:2位
26 86/03/19 0901 OH! POPSTAR
27 86/04/02 0903 OH! POPSTAR(マンスリー)
28 86/04/09 0904 NEXT GENERATIONAlbum「親愛なるジョージ・スプリングヒル・ハンド様」より 詞・曲:Michel Kenner 訳詞:秋元康 R:1985/12/21)(マンスリー)
29 86/04/16 0905 Two Kids Blues(Album「FLOWER」より 詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1986/03/30)(マンスリー)
30 86/04/23 0906 ROCK AROUND THE CLOCK(詞・曲:Jimmy Knight/Max Freedman)MY ANGEL(Album「絶対チェッカーズ!!」より 詞:高杢禎彦 曲:武内享 R:1984/07/21)クレイジー・パラダイスへようこそ(Album「毎日!!チェッカーズ」より 詞:売野雅勇 曲:藤井尚之 R:1985/08/21)(マンスリー)
31 86/04/30 0907 時のK-City(Album「FLOWER」より 詞:藤井郁弥 曲:武内享 R:1986/03/30)(マンスリー)
32 86/05/21 0910 Song for U.S.A(詞:売野雅勇 曲:芹沢廣明 R:1986/06/05 HC:1位
33 86/06/11 0913 Song for U.S.A
34 86/07/16 0918 Song for U.S.A
35 86/08/20 0923 Song for U.S.A
36 86/09/17 0927 NEXT GENERATION
37 86/10/15 0931 NANA(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1986/10/15 HC:2位
38 86/11/19 0936 NANA
39 86/12/24 0941 NANA 
40 87/01/07 0943 NANA
41 87/02/04 0947 I Love You,SAYONARA(詞:藤井郁弥 曲:大土井裕二 R:1987/03/05 HC:2位
42 87/03/04 0951 I Love You,SAYONARA
43 87/04/01 0955 I Love You,SAYONARA
44 87/05/06 0960 BLUES OF IF(Album「GO」より 詞:藤井郁弥 曲:藤井尚之 R:1987/05/02)
45 87/06/10 0965 WANDERER(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1987/07/08 HC:1位
46 87/08/05 0973 WANDERER
47 87/09/09 0978 NEXT GENERATION
48 87/11/04 0986 Blue Rain詞:藤井郁弥 曲:藤井尚之 R:1987/11/06 HC:2位)(マンスリー)
49 87/11/11 0987 ちょっとGive Me a break!(Single「7つの海の地球儀」B面 詞:秋元康 曲:Special Tsuruku R:1987/11/06)7つの海の地球儀(12inch Single 詞:秋元康 曲:Special Tsuruku R:1987/11/06 HC:4位)(マンスリー、「Cute Beat Club Band」名義での出演)
50 87/11/18 0988 QUATRE SAISONS(Album「GO」より 詞:藤井郁弥 曲:藤井尚之 R:1987/05/02)(マンスリー)
51 87/11/25 0989 I Love You,SAYONARA~WANDERER~NANA(マンスリー)
52 87/12/23 0993 Blue Rain
53 88/03/16 1005 ONE NIGHT GIGOLO(詞:藤井郁弥 曲:武内享 R:1988/03/21 HC:3位
54 88/05/11 1013 ONE NIGHT GIGOLO
55 88/06/22 1019 Jim&Janeの伝説(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1988/06/29 HC:4位
56 88/08/10 1026 Jim&Janeの伝説
57 88/10/19 1036 素直にI'm Sorry(詞:藤井郁弥 曲:藤井尚之 R:1988/10/21 HC:2位
58 88/11/23 1041 素直にI'm Sorry/恋の季節<with南野陽子>(詞:岩谷時子 曲:いずみたく)
59 89/03/15 1056 Room(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1989/03/21 HC:3位
60 89/04/05 1059 Room
61 89/04/26 1062 Room
62 89/06/28 1071 Cherie(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1989/07/05 HC:5位
63 89/07/12 1073 Cherie
64 89/08/16 1078 Cherie
65 89/11/22 1090  Friend and Dream(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1989/12/06 HC:2位
66 90/04/18 1108 運命(SADAME)詞:藤井郁弥 曲:藤井尚之 R:1990/03/21 HC:2位
67 90/06/13 1116 夜明けのブレス(詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1990/06/21 HC:2位
68 90/07/04 1119 夜明けのブレス
69 90/08/22 1126 One more glass of Red wine(Album「OOPS!」より 詞:藤井郁弥 曲:鶴久政治 R:1990/08/08)/涙のリクエスト~ギザギザハートの子守唄

藤井尚之(ソロ)
・89/02/01 1050 クローム・メタリック(詞:藤井尚之/松本隆 曲:土屋昌巳 R:1988/12/27 HC:15位)

【補足】
①86/04/23放送で披露した「ROCK AROUND THE CLOCK」はチェッカーズのオリジナルではなくアメリカのロカビリー歌手、ビル・ヘイリーと彼のコメッツ(Bill Haley&His Comets)が1952年に発表した作品。
②87/11/06放送、「Cute Beat Club Band」名義で出演した回で披露した「7つの海の地球儀」「ちょっとGive Me a break!」の作詞者「Special Tsuruku」は鶴久政治が同バンド名義での活動の際に使用していた変名である。
③88/11/23放送で披露した「恋の季節」は1968年のピンキーとキラーズのヒット曲。放送20周年記念の企画の一環としてこの曲を披露。

チェッカーズの夜のヒットスタジオ初登場は丁度「涙のリクエスト」がヒットチャートを急上昇中だった1984年の2月のこと。ここから最初の数年は同時期にデビューした吉川晃司と並び、「非ジャニーズ系」の男性アイドルの急先鋒のような位置づけで出演していました。

このバンドほど、当初世に出てきたときと、解散するときとのイメージが異なるバンドはいないと思います。
当初は「アイドル」としての位置づけで売り出され、「涙のリクエスト」「哀しくてジェラシー」「星屑のステージ」「ジュリアに傷心」と立て続けに好セールスを記録、彼らのファッションや髪型なども当時のティーンエイジたちの間で流行し、半ば「社会現象」ともいえるほどの人気を短期間で獲得していきました。

しかし、彼らはその次元で安穏と立ちどまることを避け、あえて、アイドルとしてのイメージからの脱皮を早い時期から図りました。1986年秋に発売された「NANA」からはそれまで事実上の「師匠格」であった売野雅勇・芹沢廣明の元を離れ、本格的にメンバーが詞・曲を担当するようになり、それまでのポップなイメージをガラリと変えた意欲作を次々と発表、またアルバム収録曲の中にもシングル曲と互角ともいえる良質の楽曲が数多く制作され、世間の目も「アイドル」としてよりも「ロックミュージシャン」として彼らを見る向きが一般的になっていきました。

夜ヒットでは、マンスリーに2度起用されたこともあり、アルバム収録曲も相当な数披露しており、シングル曲のとき以上に番組史に残る印象的なシーンを残しています。例えば・・・・
①「Summer Rain」「時のK-City」では鶴久政治がメインボーカルを担当した。
チェッカーズのヴォーカルといえば、一般には「藤井フミヤ」ですが、アルバムに関してはバックコーラス・キーボート担当の鶴久政治が担当している曲も数曲あります。夜ヒットで披露した歌でいえば「Summer Rain」と「時のK-City」がそれに該当します。テレビで鶴久がボーカルとして登場した機会というのはかなり少ないだけにこのときの夜ヒットの場面はかなり貴重であるといえるでしょう。
「時のK-City」のときは確か、出身地である久留米から親・兄弟が数人駆けつけて、「立派に一人前のアーティストへと成長した姿を存分に魅せる」といったような趣向で歌を披露しており、ポップでにぎやかなステージング・演出が多かったチェッカーズにしては異色の、静寂感漂う演出が印象的でした。
②2回目の「NEXT GENERATION」での番組史上に残る珍場面。
これは後年幾度も総集編などでも紹介されていたので、リアルタイムで見ていない人でも知っている方が多いと思いますが、1986年9月の「NEXT GENERATION」でリードボーカルの藤井フミヤが、曲の途中で皮ジャンを脱ごうとしたところ、片方の腕が抜けなくなってしまい、仕方なく、脱げない状態で歌唱を続ける羽目になってしまったというシーンがありました。そのときはメンバー全員とも笑いを浮かべていましたが、内心は間奏でハーモニカを演奏せねばならない部分があったため、かなりハラハラした気持ちで演奏していたそうです。

ただ、毎月必ず番組に出演をしていたのは1987年までで、1988年以降は、新曲と新曲の間のスパンについては、アルバムでの出演はあまりしなくなり、出演自体を回避することが多くなり、年間の出演回数も番組末期にはかなり減少していました。
番組のステータス性が下がりつつあったことも一因でしょうが、この頃からメンバー間で活動の方向性につき軋轢を生じていたという話も後年語られており、それが出演機会が減った最大の理由なのかもしれません(この頃になると他の歌番組でも出演頻度はかなりペースダウンしていたみたいです)。確かに最終回、彼らも顔を出していましたが、その中になぜか藤井フミヤの顔がなく、何か変な感じはしたのですが、既にこの頃にはメンバー間の溝は修復できないところまで深刻化していたのかもしれません。

チェッカーズはその後、92年のNHK紅白歌合戦への出場を以て完全に解散。ドラム担当であった徳永善也も数年前に夭折し、またそのときにメンバー間の不協和音が世に明るみに出てしまい、現実問題として再結成の可能性はほぼゼロに等しいというのが現状。やはり80年代半ばの日本の音楽シーンを語る上ではまず外すことのできない存在であるだけに、後年のイザコザは、彼らが9年近くの活動で残した確かな偉業・功績をも全て否定してしまったように映ってしまい、残念でなりません。


夜ヒット・名シーン~久保田利伸「It's BAD」(87年10月14日放送)

2007-10-07 | 夜のヒットスタジオ/名シーン
今回の「夜ヒット・名シーン」シリーズは、久保田利伸の「It's BAD」を取り上げます。

このシーンは1987年10月14日放送での一コマです。

この曲は元々は、まだ正式なプロのアーティストとしてはデビューしていなかった1985年秋に、当時のトップアイドル・田原俊彦のシングル曲として久保田が作曲を手がけた曲であり、一般に「It's BAD」といえば、「田原俊彦がラップに挑戦した曲」として認知度が高い楽曲です。

夜ヒットのシーンとしては、久保田単独でのシーンよりも、むしろ87年末の「スーパーデラックス」での田原と久保田とのジョイントのシーンのほうが印象に強い方が多いのかもしれません。ただ、私管理人個人としては、田原とのジョイントでの場面よりも、初のマンスリー時の単独での熱演ぶりの方がかなり衝撃的でもあり、斬新でもありで、印象が強いです。

まず、このシーン自体の感想を述べる上で、彼がなぜ番組マンスリーに抜擢されたのか、という点にも触れておく必要があるかもしれません。

この1987年10月期における彼の夜ヒットマンスリーゲストへの抜擢は、当時の音楽・放送関係者の大半からは「ヒットスタジオは大きな賭けに出た」と理解されていたようです。

それまでの夜ヒットのマンスリーゲストの人選は、大抵は番組に多大な貢献をしてきた常連組のアーティスト(五木ひろし・布施明・西城秀樹・郷ひろみ等)が中心で、新人や番組に出演している頻度が少ないアーティストにはまず、順番が回ってくるということは有り得ないことでした。
他方、この当時の久保田の歌手としての位置づけは、プロアーティストとして正式にデビューしてからまだ1年足らず、夜ヒットへの出演実績もマンスリー起用の時点では1987年8月の「TIMEシャワーに射たれて」での初出演の1回のみ、といういわば「新人同然」のような格付けであり、それまでのマンスリーゲスト起用の原則からすれば、「論外」となるはずでした。

しかし、この頃、丁度プロデューサーが、長年番組を牽引してきた疋田拓から若手・中堅クラスの渡邉光男に交替。構成担当も「ドンドンクジラ」こと塚田茂が監修という位置づけとなり製作の一線から離れ、これも若手だった木崎徹に交替、といった具合に、番組中枢スタッフの新旧交替の流れが加速。木崎・渡邉らを中心とする若手スタッフの間では「夜ヒット」の番組イメージを変えたいという思いが強くあったらしく、その中で、それまで常連組の牙城となっていた「マンスリー」の人選の方針も「必ずしもこれまでのキャリア、番組への寄与度を重視せず、むしろ音楽的才能や話題性を重視すべき」という考えに改められ、その方針に沿う形で、新人に近い位置づけであった久保田がマンスリーに抜擢された、という事情が、その「意外性を以て迎えられた」ということの背景に存在します。

久保田はこの1987年と翌1988年の2回、同じく10月期にマンスリーを担当し、それぞれに時にはパワフルに、時にはシックに、変幻自在の質の高いパフォーマンスを展開し、それぞれに印象に強い場面を展開し、確実にこのマンスリーへの連続での抜擢が彼の音楽界での格を向上させる契機といっても過言ではありませんが、とりわけ最初の「大抜擢」と評された1987年のマンスリーゲストのときのパフォーマンスは、相当のプレッシャーを押し殺しての熱演の数々だけあって、その細部にはかなりの「緊迫感」が感じ取れます。

この「It's BAD」のときもやはり全般を通してみると、大胆なパフォーマンスの細部にはやはり、随所に彼の並々ならぬ緊張感が感じ取れます。
ただ、田原俊彦版とは異なりラップの部分を宮沢賢治の「雨ニモマケズ」をアレンジした詞で披露しています。そこは、やはり、どれだけ緊張していても、「音楽」というものを「楽しむもの」として理解することを忘れない、彼らしい「遊び心」がしっかりと盛り込まれています。

とにかく、1回見て感じた感想は「凄い」という言葉以外に説明がまずいらないだろうというぐらいの迫力がありました。「遊び心」と「緊張感」が巧みに交差しあった独特の雰囲気、そして、スタジオ狭しと歩きながら、熱演・熱唱をする久保田の軽快さ。そして随所から当てられるスポットライトの嵐。久保田の姿・歌声、そしてスタジオの演出を全体を通じて、さながら「異次元」に入り込んだかのような不思議な感覚を見ている側は感じ、一通り見終わると、若干の虚脱感を感じ、そしてすぐにもう一度この場面を見返したいという気持ちがわいてきます。まさにこの久保田のソロでの「It's BAD」は「名シーンとはかくあるべき」といえる絶妙なシーンであると思います。

「ラップ」に抵抗感を感じる人も結構多い(実際に私もそうですが…)と思いますが、彼のこの夜ヒットマンスリーで披露した「It's BAD」に関しては、ラップ嫌いな人でも「別腹」の感覚ですんなりと入り込めるんじゃないでしょうか。

今度、CSでもこのときの場面が再放送されるようなので、まだ見たことがない人は是非、この再放送を通じて、久保田の変化自在な歌の世界、「異次元」の世界に触れてみてください。とにかく、圧倒されること間違いなしだと思います。
(※動画リンクは下記番組ロゴ画像に貼ってあります。)