Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2008年12月号 いつまでも続く水不足で浮上した疑問

2009年05月15日 | 人道支援
【写真】カクマ難民キャンプゾーン5で水を集める難民たち

カクマ難民キャンプでは、水は生死に関わる最も基本的な物資だ。だがその分配は不公平で、人々は水の問題に幾度となく直面している。水は長年にわたって人々の不満の種だった。UNHCRやNGOとの月例会合で、コミュニティリーダー達は、水の分配に関する様々な問題点を提起してきた。しかしそれに耳を傾け、それを適切に解決しようとする者はいなかった。KANEREはルーテル世界連盟(LWF)水担当部門と会談し、これらの問題について語り合った。

LWFはどのように事業が行われているか説明し、カクマキャンプ内の給水サービスの概観を示した。水は地下100メートルの帯水層から、ボーリングされた穴を通して吸い上げられている(キャンプ内にはボーリングの穴が11個所あるが、現在使用されているのは7個所だけだ)。 ポンプによって吸い上げられた水はまず巨大な貯水タンクに入れられ、そこからパイプを経由してキャンプ内のそれぞれの水汲み場の蛇口に運ばれる。11月には36956.4㎥の水が、登録されている難民49953人に分配された。これは毎日1760㎥の水が帯水層から汲み上げられていることを意味する。1人あたりに直すと毎日23.8リットルに相当する(公式人口統計による)。UNHCRが許容している標準的な水の消費量は、1人1日あたり20リットルだ。

このような統計にも関わらず、11月の最初の3週間、キャンプの広い地域で水不足が生じた。追い詰められた人々は、仕方なく現地部族の母親たちから水を購入した。しかしそれでも一日の水の量としては十分ではなく、喉が渇いたまま就寝するという危険を冒すことになった。コンゴ・コミュニティの水不足は、コンゴ系住民とソマリア系住民との間の争いを引き起こした。一方でゾーン5の成人教育、南アフリカ大学教育センターなどの施設は、有り余るほどの水を受け取っていた。そうした場所で余った水は、渇水に苦しむコミュニティに行き渡ることはなく、その場で無駄に使われただけだった。

LWF水担当部門は、この問題に関し以下のように説明した。水の分配計画は、UNHCRから提供された人口統計に基づいて立案されているが、この統計に含まれているのは、難民として正式に登録された者だけだ。しかし実際には、難民として登録されていない人々(たとえば難民の家族や知人)が多く暮らしているコミュニティも存在している。そのため、いくつかの給水用蛇口では混雑が発生している。スタッフの一人はこう語る。「(登録していない)親戚が大勢いるという理由でよく文句を言ってくるコミュニティがある。そのような時は、難民登録をするように言っている。そうすればその人数に応じて水を分配することができるのだから。彼らがキャンプ内に親戚を忍び込ませてしまうと、私達には人数の知りようがない。そういうわけで、全員20リットルずつ手に入れられるはずなのに、一部では15リットルだけ、ということになってしまう」

こうした水不足が原因で、他の給水用蛇口で水を得るために、家からかなりの距離を歩かなくてはならない難民が存在する。しかし、せっかくそこまで行っても、水を汲むことを許されず、自分の場所で水を汲めと言われることもあれば、水を汲みたいなら金を払えと言われることもある。LWF 水担当部門によれば、家と水汲み場の距離については、彼らも危惧しているとのことだ。2008年に行われたキャンプ内の水供給に関する調査では、給水所の87%は家から徒歩100メートル以内にあり、残り13%がこの基準を満たしていないことが分かった。LWF水担当部門の主張によれば、登録されていない難民がいくつかの水汲み場で過剰な混雑を生み出していて、それにより追いやられた人々は、比較的空いている水汲み場まで歩いて行かざるを得ず、こうした例外が生じている、ということだ。

多くの難民が、水の配給システムがきちんと稼働していないと言っている。給水時間になってもすぐに給水が始まらないのは、維持管理が適切に行われていないためだと、彼らは指摘している。最近、カクマ4でポンプが故障し2日間動かなかった。さらにメンテナンスを行い貯水槽を満たすのにもう1日かかった。結果として、カクマ4では丸々3日間にわたって水がない状態が続いた。仕方なく、水を分けてくれる可能性のある他の水汲み場まで数キロメートルもの距離を歩き、そこから大きな缶に入れた20リットルの水を家まで持って帰った人たちもいる。

LWF水担当部門は、こういう事態は由々しきことだと認めている。「カクマ4のポンプが故障したとき、我々は住民のために、たしかにほんのわずかの量ではあったが、水を輸送する手配をした。我々のチームは頑張って働いた。水汲み場の蛇口をできる限り早く直すために、夜まで働きもした」

水汲み場の混雑や争いを減らすために、現在使用できなくなっている蛇口を修理すべきだという苦情がある。しかLWF水担当部門は、蛇口を壊したのは他ならぬそのコミュニティの住民だと指摘している。水を送るパイプには、異なる場所にいくつかの蛇口が設けてある。すべての蛇口の水勢を等しくするためには、それぞれの蛇口の水圧を一定にしておく必要がある。ところが蛇口から吹き出る水の勢いをさらに強くしようと、わざと蛇口を壊す難民がいるのだ。その結果、その下流では、水が不足することになってしまう。

「これは利己的な行動が引き起こした問題だと思う。彼らは自分の缶を手っ取り早く満たしたいのだ。その時、下流にいる他の人間の不都合など気にしていない」 LWF水担当部門のスタッフはこう結論付けている。

最後にKANEREは、難民への水配給の方針について質問した。4つのコンパウンド(NGO, 国連世界食料計画, 国連難民高等弁務官事務所、警察)に住んでいるスタッフは無制限の水供給を受けている一方で、なぜ難民には水の割り当て制限が課せられているのか。水の一日当たり汲み上げ量の15%がコンパウンドで使われ、難民が使用するのは75%というのが現実だ(10%は途中で失われる)。一方、4つのコンパウンドの人口はわずか200人と推定され、それは全難民数に対し約0.4%でしかない。

「なぜこのような事になっているのか、私には分かりかねる」とLWF水担当部門のスタッフは答えた。「これが正しいことだとは思わない。この問題についてはすでにUNHCRに伝え、貯水槽の増設を推奨した。しかし、もし難民が全員無制限に水を使用したら、地下の帯水層が枯渇してしまうのは明らかだ。現状として一人当たり20リットルの水が得られているのであれば、我々としては、ひとまず良しとすべきだと感じている」

もし難民1人に対して20リットルで十分だと言うのなら、コンパウンドの中に住んでいる人間も20リットルで十分なのではないか。私達はLWF水道担当部門のスタッフにこの質問をぶつけてみた。「どうにも、その質問には答えかねる」というのが彼の答えだった。



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