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Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2009年3-4月号 民主主義と難民参加型意思決定

2009年08月16日 | 人権
「参加型意思決定」というUNHCRの政策がカクマ・キャンプで本当に実現しているのかどうか、難民は疑問に思っている。難民キャンプがもっと民主的社会になるよう、希望する。

カクマ難民キャンプでは、意思決定における難民の参加は極めて重要な要素だ。難民は、人道的統治と言いながら難民に合法的役割がないことに不満を言い、意思決定に参加する仕組みの欠如を訴えている。

難民のコミュニティーは限定的な形の民主主義を実行している。それぞれの社会の文化別グループで、代表となるコミュニティー・リーダーを選出する。これらのコミュニティーは別々に生活しているので、それぞれ独自のコミュニティー・ガイドラインを確立している。憲法を持っているコミュニティーまである。

カクマ・キャンプの現場は多国籍の人を受入れている。ソマリア人コミュニティーのように、自ら部族や氏族に分かれて、別々のコミュニティーを作っているところもある。しかし同じ国家の民族として、ソマリア人はカクマ1のゾーン5に集中している。

ゾーン1は多くの民族と国家のグループが集まって成り立っている。集まる要因は、社会的設備、UNHCRやNGOのコンパウンドへのアクセスの良さ、管理オフィスへの近さ、電力のような資源の利用のしやすさなどである。

コミュニティーごとにそれぞれの社会規範や文化的価値観を持っているが、それは公正で民主的な生活をするために自ら選択した規範や価値観だ。コミュニティー・リーダーはコミュニティーの形成に大きな役割を担っているが、コミュニティー内での権力の行使には限界も設けている。

〈難民のリーダーシップ、民主主義、そして参加〉

キャンプを形成する過程で、全ての難民コミュニティーにはコミュニティー総会で選ばれたリーダー団体がある。リーダーはコミュニティー内の他の行政組織の支援を受けてその立場を手に入れているので、コミュニティーの諸問題に発言権を持つ。コミュニティー内の議論や紛争を解決するための権力も持っている。例えば、リーダーはコミュニティーのメンバー間で水を効果的に分けるためのシステムを確立することができる。

「我々は午前6時から午後6時まで働いている」と、ソマリア人全体の会長ジャマル氏は言う。「私はコミュニティー・リーダーと共に各団体間の会合すべてに出席しなくてはならないし、紛争や危険を伴う問題が起きれば、関連の役所に報告して更なる対処をする必要もある」

基本的に、リーダーは自分たちのコミュニティーを治め、コミュニティーとUNHCRやNGOの間の橋渡しの役目を果たす。コミュニティーの監視役としての役割を担い、義務と責任は多岐にわたる。リーダーがコミュニティー・メンバーの代表として特に活発に動くのは、危険な事例や弱者に対するUNHCのプロテクション・オフィスの対処が遅れている時だ。多くのコミュニティー・リーダーは、これらの案件へのUNHCRの動きは、極端に遅いと訴えている。

〈コミュニティー・リーダーの観点〉

KANEREは何人かのコミュニティー・リーダーたちにインタビューしたが、彼らの観点からすると、民主主義やリーダー決定型意志決定の度合いは非常に低く、全く行われないこともあるという。

あるコミュニティー・リーダーによると、UNHCRが意思決定する際に、難民のコミュニティー・リーダーの民主的な参加は、「ない」の一語につきる。例えば、UNHCRが難民の記録や事例に決定を下す際、あるいは予算や資源配分を決定する際に、難民は参加しない。このコミュニティー・リーダーは、こうした決定は難民の生活に大きな影響を及ぼすと強調していたが、難民は今のところ決定を下すプロセスに参加することができないでいる。

折りにふれ、コミュニティー・リーダーたちは検討を求めてUNHCRに多くの問題を持ちかけている。個人の事例はもちろんだが、難民キャンプでの日々の暮らしで持ち上がる諸々の大問題も持ち出している。しかし、反応も意見集約メカニズムも非常に悪い。

「私には力が与えられていない。UNHCRの決定が一度くだってしまうと、私には追加も削除もできないが、コミュニティー内では執行委員会と決定権のある行政組織を通して我々に権力が与えられているので、誤った決定を改めることができる」とブルンジのコミュニティー・リーダー、オディロン氏は言う。コミュニティー管理者も時には誤ることがあり、そのせいで負の影響を受けてしま事実に言及しているが、この点で彼はコミュニティー・リーダーとして誤りを正す力を持っているという。

オディロン氏によれば、リーダーがUNHCRにアクセスできるのは一週間に一度だけで、再定住オフィスにアクセスできるのは月に一度だけだと言う。UNHCR支所の所長に会えるのも月に一度だけだ。「私は手助けする者として満足のいくように人々に仕え、人々は私のサービスに感謝してくれていると思うが、私にも限界はある。みんな問題が起きるとすぐ私の所に来るが、私は事務所に連れて行くことしかできない。私自身は事務所職員に会って話すことはできない」

難民のリーダーはUNHCRとコミュニティーの安定した関係に寄与しているが、両者の間をリーダーたちが取り持つというやり方は、非効率や怠慢を生む可能性がある。多くのリーダーは、UNHCRとコミュニティー行政の意志決定プロセスを比較し、UNHCRの活動はきわめて不活発で、難民認定や再定住プログラムに関して難民にフィードバックされていないと主張する。彼らは自分たちの仲介の効果を上げるためには、もっと公正で明快な手続きが必要だと強調している。

KANEREとのインタビューで、オロモ・コミュニティーのリーダー、フセイン氏は、UNHCRへのアクセスが週一度では不十分だと言った。UNHCRの事務所にはさまざまな問題を持っていかなければならない。「我々の力を充分に発揮し、より良いフィードバックを得るには時間もかかるのだから、もっと良い、もっと適切な仕組みが必要だ」と言う。

フセイン氏は続けて言う。「民主主義は実践されていない。唯一、実践されているのは、コミュニティーでの公共選挙だ。私は難民で、問題に立ち向かう力もないし影響力もないが、せめてリーダーの座にいる期間はコミュニティーに奉仕して役を降りたいと思っている。人生とはそういうものだ」

あるコミュニティー・リーダーは「カクマの難民を統治する政策にも法律にも難民は関わっておらず、そういう意思決定は片手落ちである。だから我々は正義と民主的統治を要求しているのだ」と、結論付けた。

〈コミュニティー・メンバーの観点〉

KANEREは別々のコミュニティー出身の難民に個別にインタビューし、このテーマに関する意見を集めた。UNHCRや他のNGOが彼らに提供するサービスに満足していない人たちがいる一方、この質問に関して「満足度は五分五分だ」と言う者もいた。数人のコミュニティー・メンバーによると、これがいつも問題になり、そのたびにUNHCRにはより良いサービスを求めているのだが、提案が受けいれられることは決してないという。

「ここに民主主義は見当たらない! ミックスミーみたいなサービスは受けたくない。なぜUNHCRは食糧配給所でミックスミーを配給するのだろうか? 我々のリーダーはUNHCRの決定を覆すことはできないが、常に苦闘している。こういうのは真の意味で民主的な方法ではない。意思決定にリーダーを含む難民は参加していない」とソマリア・コミュニティー出身のダハボは言う。

ルワンダ難民のニコールは、そもそも難民には決定する力が与えられていないので、リーダーであれ難民スタッフであれ難民は意思決定に参加できないのだと言う。「私はUNHCRが提供するサービスに満足しているわけではないが、食べ物はまだいくらか手に入る。リーダーはコミュニティーに意見を求めることもあるが、UNHCRとリーダーたちの関係は非常に弱い。当局はリーダーたちに影響を与えられるが、リーダーたちは物事を覆せない。そういう状態なのだから、民主主義は実践されていない」

難民の見方からすると、UNHCRが実践している唯一の民主的な政策は、コミュニティーのリーダーを選ぶ公的な選挙システムだ。選挙はキャンプ・マネージャーをはじめルーテル世界連盟コミュニティーサービス・ユニットと保安事務所に監視される。

全体として、コミュニティーのメンバーの報告では、難民リーダーはコミュニティーを民主的な方法で導き喜ばれている。しかし、リーダーの中には、コミュニティーに影響を与える問題に関し人道支援組織に対抗できるだけの力を持っていないと言う者もいる。

〈結論〉

難民のリーダーやコミュニティー・メンバーによると、カクマ難民キャンプにおける権力の分担と意思決定システムは、民主主義からは程遠い。キャンプは何年もの間、孤立してきた。それだけに、法に則った民主的規則と、より開かれた社会の実現は、今や多くのリーダーや難民の期待するところである。

KANEREが行ったインタビューで明らかになったのは、カクマ・キャンプにはUNHCRの活動方針として民主的な参加と権利を尊重すべしという項目があることを、リーダーたちが知らないことだ。あらゆるレベルの決定過程で難民が参加できるより効果的な方策が必要である。

実際は、難民参加型意思決定の実現には程遠い。理由としては特に、人道支援機関と難民との基本的な情報共有や透明性が欠けていること挙げられる。意思決定への難民参加を確実にするには、カクマ・キャンプでの人道統治を評価する独立した仕組みが必要だ。難民には難民の権利を知らせなければならない。また難民キャンプでの合法的な民主主義社会の可能性について、我々が疑問を投げかけていく必要もある。


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