月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『六月大歌舞伎』@歌舞伎座・6/10夜の部

2006-06-22 03:11:38 | 歌舞伎Review
行ってきました。“初”歌舞伎座です。なんせ名古屋在住なので、歌舞伎は専ら地元か大阪か京都でした。それでも公演がある度に京都・大阪に出かけるわけにはいかないし(ストレートやミュージカルもあるので)名古屋では御園座で年2回、他劇場で1、2回あればいい方なので、意外と回数はこなしてません。
………いいなあ、歌舞伎座で毎月観れるひとは。演舞場もありゃ国立劇場もあるしねえ。
歌舞伎座3階A席平均4,000円として、昼夜で8,000円。一年毎月全部観るとして96,000円。
オットと東京往復年2回決行するだけで、これに近い金額の交通費が飛んでくのよね



今回は演目多数のためさらっと書いておきます。観たよ~、くらいな感じで(汗)



暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)三幕五場
<主な配役>
料理人丑松(暗闇の丑松):松本幸四郎/丑松女房お米(女郎おきよ):中村福助
料理人祐次:市川染五郎/料理人元締四郎兵衛:市川段四郎
四郎兵衛女房お今:片岡秀太郎 他

<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
料理人の丑松には、恋女房のお米がいますが、お米の母で強欲なお熊は二人の仲が許せず、お米を別の男の妾にと強要します。それを知った丑松は、お熊と、お熊が差し向けた浪人を殺害。兄貴分の四郎兵衛にお米を預けて旅に出ます。
一年後、丑松は女郎になったお米に再会。四郎兵衛に騙され売り飛ばされたと事情を聞いても信じられず、激怒します。お米が首を吊って死んだ後になって、やっと真実を理解した丑松は、四郎兵衛とその女房お今に報復するとまた何処かへ逃げ去って行きます。
人生の暗闇を歩き続ける男の運命を描いた、長谷川伸の傑作。抑制のきいた展開の中で、幸四郎の哀しくリアルな人間ドラマが繰り広げられます。


♪あ~あ暗いわー くーらーいひーみーつー お~ねがいー話してよ過去の真実全てー♪
な『暗闇の丑松』………って『レミゼ』知らない方にはなんのこっちゃだけど(笑)

とにかく話も暗けりゃ舞台も暗い!
特に序幕の最初の方は、誰が誰?で台詞も聞き取りにくくって、二幕目からちょっと明るくなって(それでもぱあっとは明るくない)ずいぶん観やすくなりました。一場二場はテンポもよくってくすくす笑える部分もありましたね(掛けてある着物に隠れるおくの@歌江さんとか、押入れに隠れる熊吉@高麗蔵さんとか)
三場では、首を吊って自害したお米の遺体が戸板に乗せられ運ばれてくるんだけど、揺れる蝋燭の灯火に(本物)ぼうっと浮かぶお米の顔がとても綺麗でした。
ていうか、なんで彼女が死ななあかんねん。
丑松って、一本気はいいけど、短慮・短気なだけかも……。
最初の殺しがあっさりしてて、丑松が殺しをした理由がさっぱりわからないし。お米の言葉より、兄貴分の四郎兵衛を信じてるし。
そんな丑松に惚れてるお米の思いもいまいち掴めなくって……一途と言えばそれまでだけど。
ただ、自害する前に最後に丑松を見る視線が非常に悲しい姿ながら、とても色っぽかったのが印象的でした。

大詰の三幕目はちょっと明るいかな。
丑松は2人追加で殺すんだけど(汗)
1人目は、四郎兵衛女房お今。秀太郎さんがすっげー憎ったらしい女を見事に演じてます。
女のやなとこ全部見せてます。そりゃ殺されるさ(笑/笑うとこじゃないけど)
2人目は、四郎兵衛自身。殺しの現場は銭湯の男湯で実際には演じられません。
銭湯の場面は湯船のある方ではなく“裏方”が、舞台になります。
そこで働く番頭の甚太郎@蝶十郎さんがよかったですね。
唄いながら楽しそうで、一仕事終わって一息つこうとするとまた客から呼ばれて、
ドリフのセット(失礼/色々仕掛けがありそうに見えちゃった)みたいな銭湯の舞台を右から左、そのまた逆に走り回って、気持ちがいいくらいの働きっぷりでした。
干してあった桶を手際よく運び、鮮やかに積んでいくのがお見事
拍手もんでした。実際拍手が起きたのよ
江戸時代の銭湯ってああいう感じだったんでしょうかね。非常に興味深く、楽しく観ることができた場面でした。

でもやっぱ暗いわー 
四郎兵衛殺害後の丑松が花道から去っていって終わりだもん。
普通ならお米の仇をとったってことでめでたしめでたしかもしれないけど、わーって拍手する気にはなれず、控えめな拍手をしてしまいました

こういう気分の客を盛り上げるための、次の『身替座禅』なのか(笑)



新古演劇十種の内身替座禅(みがわりざぜん)
<配役>
山陰右京:尾上菊五郎/太郎冠者:中村翫雀/侍女千枝:尾上松也/侍女小枝:中村梅枝
奥方玉の井:片岡仁左衛門

<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
妻は恐いけれど、浮気はしたい。大名山蔭右京は、愛しい花子のもとへ通う口実に、邸内の持仏堂に籠もって座禅をすると言い出します。一日だけならと許可した奥方の玉の井が様子を見に行くと、座禅をしているのはなんと太郎冠者。怒り心頭に発した玉の井は、太郎冠者に替わって座禅をし、右京の帰りを待ち受けます。
狂言の『花子』をもとにした、おなじみの人気舞踊劇。
歌舞伎座では初となる、菊五郎と仁左衛門の右京夫妻役が見ものです。


南座だったか松竹座だったか、勘三郎さん(当時勘九郎)の右京を観た記憶が……。
って筋書の上演記録に“平成12年12月@京都南座”とあったから、これだわ(記憶おぼろげで……このときも翫雀さんが太郎冠者やってるのよねえ。うーん覚えてない

でかいよー、こわいよー、フランケンシュタインみたいー、なおよそ仁左衛門さんには似合わない形容詞しか浮かばない奥方玉の井。
でも、激しい悋気の中には右京を愛するがゆえの一途な想いがあるんですよね。
顔は怖いんだけど、仕種や無邪気な台詞に可愛らしさも見えて、そのコントラストも笑いのタネとなって、楽しめました
菊五郎さんの右京は愛嬌たっぷり。色気もあって、ちょいと浮気をしたい旦那さん像がよく出ていたと思います。(5月の“矢ガモ”は観たかったーー)
花子(実際には出てきません)との逢瀬の様子を、ひとりで交互に演じるのは大変でしょうが、そこは人間国宝、さすがの演技でした
太郎冠者は2人の板ばさみで大変やね。最終的にはあっさり強い方(奥方)について「あっこのやろ」てな感じ(笑)でもあの奥方に逆らえるわけないもんね。
2人の侍女がとーっても綺麗で可愛らしくって、躍りも素敵
玉の井がビジュアル的にやばいので(失礼)2人の美しさが余計に映えて目の保養でした



二人夕霧(ににんゆうぎり)傾城買指南所 一幕
<主な配役>
藤屋伊左衛門:中村梅玉/吉田屋女房おきさ:中村東蔵
弟子いや風:中村翫雀/同 小れん:市川門之助/同 てんれつ:中村松江
三つ物屋四九兵衛/市川團蔵/後の夕霧:中村時蔵/先の夕霧:中村魁春 他

<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
傾城夕霧に入れあげて身上をつぶし、勘当された大店の若旦那・藤屋伊左衛門。夕霧に先立たれ、今は二代目の夕霧と「傾城買指南所」を構える夫婦です。のんきに弟子のいや風らに傾城買いを伝授していると、借金の取り立てが現れ、伊左衛門は身ぐるみ剥がされ紙衣姿に。そこへ吉田屋の女房おきさが来訪します。ともに先の夕霧を偲んでいると、忽然と、死んだはずの夕霧が現れるではありませんか。
夕霧伊左衛門の再会を描く『廓文章』の後日談。


こういうパロディものは初心者には難しいなあ。
『廓文章(吉田屋)』のあらすじは知ってるけど、演目自体は観たことが無いので、結構置いてけぼり。もちろん『二人夕霧』も初見(それもそのはず、御園座では昭和44年のみ/他劇場入れても10回やってないわ
時蔵さんの傾城姿が素敵ですねー。怜悧な(ご飯おこげにするけど)美人て感じ
芸事以外、基本的になんもしない傾城なのに、水を汲んだりご飯炊いたりするのはあり?
歌舞伎だからいいのか(笑)
魁春さんは時蔵さんとは全く趣の違う美人さん。いつも思うけど、丸くつぶらな瞳がとっても可愛らしいです。
大変申し訳ないことに、途中睡魔に襲われてしまいました(汗)
でも、ところどころ「え」とか「んなあほな」な展開で、最後は結局2人の夕霧を嫁さんにして、小判が飛び交って派手に実にばかばかしく終わって、歌舞伎らしい遊び心が満載なお芝居だと思いました。
元ネタを知ってるともっと楽しめたんでしょうけどね



★余話
席が1階17列34、35で前が通路でした。
前の座席を気にしなくていいし、足も伸ばせるし、トイレにも行きやすいし(笑)端の方ながらも舞台全体が眺められて、2等席にしてはとてもいい場所でしたね。
オットは体が固くて、長時間窮屈な席で座ってるのが苦痛なので丁度よかったわ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 耕史君a la carte ... | トップ | 『六月大歌舞伎』@歌舞伎座... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

歌舞伎Review」カテゴリの最新記事