月は東に

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『花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』@三の丸尚蔵館・7/26(追記あり)

2006-08-23 22:53:15 | That’s Entertainment
浮かれポンチ(死語)な前記事のもひとつ前の記事の続きです。上野の国立博物館でプライスコレクションを堪能したあと、皇居東御苑内三の丸尚蔵館『花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』を観に、大手町へ移動。
この記事にも書きましたが、上野から流れてきてる方が多かったです。大手門前で信号待ちをしていた7、8人(私含む)全員が、透明のビニール袋に入ったプライスコレクションの図録を持ってました。
大手門を入ってすぐの発券所で、入場券代わりの小さなプラスチックのプレートを貰います。出る時に必ず返さないと出られません(という説明はここではなかったけど、尚蔵館の方が教えてくれました/この件後述)
この時、数台の車と騎馬隊の列に遭遇。私の前を歩いていたおばちゃんが早速発券所の係員の方に質問したのを又聞きすると、とある国の外交使節団なのだそうです。詳しくは教えてもらえないようです(あたりまえか
展示室は1室のみ(20畳くらい?)。ガラガラということはないけど混んでもいなかったので、ガラスにへばり付き状態で3廻りしてしまいました
あ、ちなみに入場無料です。東京近郊に住んでたら絶対全期観たわ


『花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』
私が観たのは第4期。展示作品はこの一覧をご参照ください。
ちょうど若冲の『旭日鳳凰図』と酒井抱一の『花鳥十二ヶ月図』も展示でラッキー。
ただし、こちらは全作品厳重にガラスケースの中

『花鳥十二ヶ月図』 
プライスコレクションの図録と見比べて堪能。
プライスコレクションバージョンはコチラコチラ
尚蔵館バージョンの写真はコチラ、ってこれ外国製の切手です(汗)
尚蔵館の方はなかなかいい写真がなくって~ ここには1枚しかないですしね。かなり観辛いですがご勘弁を。
絵的には尚蔵館の方があっさり落ち着いて良い作品のはずなのに、プライスver.に軍配。
プライスver.をガラスなし&見事なライティングで観た後の鑑賞なので、しょうがないかなと思いつつ、改めて“光の妙”の効果に感心。
プライスver.が後に書かれたもののようで、図案化が進み生物の書き込みも増えていて華やかなんですが、自然光に近い柔らかい光の下では穏やかな印象を受けました。

『旭日鳳凰図』
こんな説明書きが絵の横にありました。  
  若冲の描く鳳凰ほど印象的な鳳凰はいない。
  優美なポーズ、なまめかしくも気品ある表情、
  羽の精密な表現と色彩構成、
  これらの全てに神経が行き届き、
  生命感あふれる架空の瑞鳥が一声を放つ。
もう言うことないっす。名文です ペルシャ絨毯か極彩色の仏教画か西陣織か……あ、祇園祭の山鉾の緞帳にいいかも(笑)
こんな艶やかな鳳凰に並の背景じゃあきまへん、と若冲が思ったかどうか知りませんが、白い波までくるくると飾り付け。
とにかくゴージャス
7点展示の若冲作品トップバッターがこれで、どーんとヤラれましたよ。
展示室入って、すぐ右手に抱一。中央の低い位置に他の小さいサイズの作品。左手奥に若冲。
この並びだと右の抱一に行く前に左の若冲が目に飛び込んできて、ふらふらと見えない何かに導かれて(笑)先に奥に展示の若冲から見てしまいました

以下、伊藤若冲『動植綵絵』30幅の内第4期分6幅。(展示順)

『老松白鳳図』
若冲の描く鳥類の羽毛は絶品。その中でも輝く白。
べたっとした感じはなく、淡く光を放つパールホワイト。
首から背にかけての羽毛には丸い模様が入って、真珠をちりばめたように見えます。
後ろでゆらめいてる尾の羽先にはハートマーク。この形は18世紀頃ヨーロッパで確立したそうですが、日本古来の文様にあったっけ?(北斎の鳳凰の尾にもこれに近い形のものは描かれてますが) あったにしても“ハート”ではないやね。“ハート”ってキリスト教の聖職者の意味だそうなので……。
赤の中にワンポイントの緑の配色がニクイです。
(でも実際緑のハートマークは2つ/この写真では上部が切れて見えてません
『旭日鳳凰図』の鳳凰と比べると、こちらはちょっと初々しくかわいらしい

『向日葵雄鶏図』
この絵は鶏よりもヒマワリとアサガオの方に目が行きました。
普通はすっくと咲きそびえるヒマワリも、若冲にかかると、くるりあさっての方向にと曲がります。
ヒマワリは17世紀半ばに中国(当時は清)から伝来したそうなので実物を見てると思うけど、若冲らしいですね。
アサガオの強烈な巻きにヒマワリも釣られ巻き?(笑)
葉っぱに開いた穴の向こうに遊び心満載です。
まだ葉脈が残ってたり、つるがクロスしてたり、アサガオが見えたり。
白に青い縞の入ったアサガオが夏の浴衣みたいで素敵 
ヒマワリ模様の帯が合いそうです

『大鶏雌雄図』
『動植綵絵』の中では珍しい絵です。
背景は1本の線で描かれた土坡のみ。
潔い、じゃないな……緊張感ていうんでしょうか。
雄鶏と雌鶏のすれ違いざまの視線の交錯。お互いの目と目の間にぴーんと1本線が張っているような感じです。
この絵、雌鶏が主役に見えますね。
色彩溢れる雄鶏と違い、赤いと黒の雌鶏。
黒い羽の重なりがシルクやベルベットのように綺麗で、上質なブラックドレスみたい 今にもタンゴかフラメンコのステップ踏み出しそう
タイトル別名を命名、『タンゴノワール』ってどうだろ

『群鶏図』
鶏の集団を見るとどーしても「こーこっこっこっこっ」って口真似して餌やりたくなるわ 実家が農家で、昔は数百羽の鶏飼ってたのよ(もちろん白いフツーの鶏だけどね)
描きも描いたり13羽。わさわさわさわさ、せわしない様子が伝わってきます。今にも首がくいくい動き出しそう。
若冲は子供っぽいというか、よく言えば少年の心を持ったひとですね。
数えたり探したりっていう気持ちにさせる仕掛けの多いこと。
脚がみょーなとこから出てたり、この首はどっから生えてんのとか思ったり、羽は1羽1羽全て違うからファッションショーみたいだし。
左端の鶏の爪が“巻き爪”になってるなんて、楽しすぎる

『池辺群虫図』
こういうの大好き
何がいるか探すのがすっごい楽しい。童心に返るわーーー
カエル、オタマジャクシ、ヤモリ、トカゲ、ミミズ、カマドウマ、キリギリス、ナメクジ、トンボ、バッタ、セミ、カブトムシ、ヘビ、カタツムリ、ムカデ、カマキリ、アゲハチョウ、モンシロチョウ、クモ、スズムシ、アリ、ハチ、毛虫類いっぱい(笑)……自力ではこれくらいしか探せません 他にもいるのはわかるけど名前がわからん 
そんなひとのためにちゃんと調べてくれる方がいるんですね。
こちらに全53種類の生き物の名前が載ってます。
虫や爬虫類が嫌いな方は見ない方がいいね。
カワイイ表情してるけど、鱗とか脚とかめちゃくちゃリアル
子供がとにかく好きなものを並べた感じです。
カエルは同じ方向を向いて並んでいるし(カエルは実際にそうやって座ってるのよ)、ループ上のつるはジェットコースターみたいだし、アリがミミズ運んでるし……手の向くまま気の向くまま、自由に描いた感じが気持ちいいですね。
傑作は絵の一番上でつるからぶら下がってるキリギリス。この大きさじゃわからないけど笑ってるのよ、にっこりと イソップ童話の挿絵かよ

『貝甲図』
『池辺群虫図』と同様に“色々描いてみよ”って感じなんですが、貝の配置には気配りがあるような気がします。
貝類は見慣れてないので何が描かれてるかほとんど不明。
全146種類、やっぱりこちらに載ってます。
これ、場所はどこなんでしょうね。海底に見えないこともないけど、潮の引いた浜辺という感じもするし……。サンゴやカイメンがいることを考えると、やっぱり海底?
くるくると巻いてる波の端に現実味がなくって、不思議感たっぷり。
主役がいないというか、全部が主題というか、貝の位置をこれ以外どうにも動かせないパターンデザインのようです。


プライスさんには申し訳ないけど、若冲度としてはこちらの方が濃密でしたね。若冲の作品の種類にもよるんでしょうけど、濃いもんね『動植綵絵』。第4期は『旭日鳳凰図』もセットだし

尚蔵館で買った図録は、今回の企画の全作品が載っているものではなく、『動植綵絵』の修理について説明があるものを買いました。
『動植綵絵』は、平成11~16年にかけて修理したそうです。
その時に判明した、絹地の裏側から色を塗って表側から見た時に陰影を与える技法“裏彩色(うらざいしき)”について詳細な説明が載っています。これについては、展示室内でも写真を用いての説明コーナーが設けられてました。

今回は第4期の1期分のみしか観れず、『動植綵絵』は30幅中6幅のみの鑑賞。
でも来年、30幅一度に観れます。
118年ぶりに実家の相国寺に里帰り。
30幅どころか、もともとセットの『釈迦三尊像』3幅(これは相国寺にある)と共に展示。
めちゃめちゃ楽しみ~~~~~~~ 激混みだろうなあ
 『若冲・動植綵絵展』2007年5月12日~6月3日 @相国寺承天閣美術館  

『動植綵絵』略歴 
かつて、若冲が自身と家族の永代供養のために10年がかりで描き上げ、相国寺に寄進した『動植綵絵』30幅と『釈迦三尊像』3幅。長年相国寺にあって観音懺法の場を荘厳してきたが、廃仏毀釈の嵐の中、衰亡した同寺を維持するために『動植綵絵』を1889年(明治22年)に皇室に寄贈。下賜金10,000円を得て苦難の時代を乗り切ることができた。
現在は宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵。-『BRUTUS』8/15号より抜粋-



★余話1
展示室内には菊葉文化協会の方が学芸員として3人ほどいらっしゃいました。
『旭日鳳凰図』を観てると、すぐ横に座ってた方から声をかけられまして…
「国立行かれたんですね」(図録持ってたので)「どうでしたか」「こちらはいかがですか」等など、おじさんしゃべるしゃべる(笑/退屈なのか)
私も「あちらも中々盛況でしたよ」「『旭日鳳凰図』も観れて嬉しいです」「抱一の『花鳥十二ヶ月図』の違うタイプのがありましたよ」等と返答。プライスコレクションの図録の『花鳥十二ヶ月図』を見ながら感想を話したりと、結構楽しかったです。
でも
私   「国立は観に行かれたんですか」
おじさん「いや、あれはちょっと……ほら、本物じゃないってのもあるそうでしょう?」
ありゃー、そうきたか
私   「そういう話も聞きますねえ。でもこちらはそういう心配がないから……」
と適当なことを言って鑑賞に戻りましたが、同じ若冲を扱う者として、プライスコレクションに対する複雑な思いがあるようです(もうちょっと突っ込んだ話をしたんですが、ここには書けません/汗)


★余話2
鑑賞後、出入り口の売店で図録を買って、その場にいた学芸員さん2人とまたまた談笑(室内のおじさんとは別の男性と女性)
プライスコレクションを観たあと、こちらの展示を観に来た方の中で「こっちが偽物なんじゃないのか」と言ってしまった方がいたそうで(そりゃねーだろ)お二人とも激怒りでした
プライスコレクション、功罪あるなあ


★余話3
冒頭で書いた“入場券代わりのプレート”について。
尚蔵館を出ようとすると、余話2の男性学芸員の方が「札はお持ちですか?」
………帰りに必ず発券所で返却しないと皇居から出れないそうです。
出入り口付近に小さい棚があって、私が帰る少し前に、そこで荷物整理をして帰られた方が数点忘れ物をして、その中に“入場券代わりのプレート”も………。学芸員の方が気づいた時には持ち主はいなくて、仕方なく出入り口で保管。
そんなことがあって、声をかけてくれたようです。
発券所で「失くしました」って言っても「探してください」って言われるそうです。
ホンマかいな
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