2019年のブログです
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佐々木譲さんの『沈黙法廷』(2019・新潮文庫)を読みました。
力作です。
薄幸な家事代行業の女性に、客である老人殺しの疑いがかかります。
そこに、警視庁と埼玉県警の争い、さらには、それぞれの警察組織内での争いが加わり、はたまた、マスコミの無責任さも加わって、真犯人や事件の真相が見えにくくなります。
裁判が始まりますが、わたしは年寄りゆえに、途中で検察官の論理についていけなくなったりしました。
じーじの頭の悪さのせいもあるでしょうが、おそらくはそこである種のムードや演出が大手を振るう裁判員裁判の危険性もが感じられました。
「真実」というのは難しいものだと思います。
同じ出来事でも、ある人には暴力と感じられ、ある人には注意と感じられ、ある人には正論と感じられます。
つまり、人の数だけ「真実」はあるのかもしれず、できるのは、その最大公約数を共有化することだけなのかもしれません。
しかし、それはとても難しい作業で、ひょっとすると、裁判ではなく、心理療法などの深い作業でなければできないのかもしれない、とわたしなどを思ってしまいます。
ともあれ、薄幸の女性への疑いは晴れ、ささやかな幸せを得られるエンディングとなるようです。
今日も、いい小説を読めて、幸せだな、と思いました。 (2019. 12 記)